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勇者パーティをお払い箱になった霊装騎士は、自由気ままにのんびり(?)生きる  作者: 銀翼のぞみ
二章

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53話 迷宮の異変、再び

「よし、始めよう、アリシア、シスター」

「了解です、ご主人様っ」

「頑張るわ、レムくん!」


 同日の昼下がり――


 侯爵家の裏庭で、レムが真剣な表情でアリシアとアンリに言うと、彼女たちも同じような表情でそれに応える。


「来い! 《霊剛鬼剣》ッ!」

「《ランクアップ・マジック》!」


 レムが《霊剛鬼剣》を召喚すると、すぐさまアリシアが固有スキル《ランクアップ・マジック》を発動する。


「《斬空骨剣》ッッ!」

「《ランクアップ・マジック》……ッ! 《ファイアーボール》!」


 続いて、レムが別の霊装武具、《斬空骨剣》を召喚すると、再びアリシアが《ランクアップ・マジック》を発動。

 強化された《斬空骨剣》をレムが振るったところで、アリシアが真空刃が飛び出すのに合わせて炎属性の下級魔法、《ファイアーボール》を発動する。


「ぐ……ッ、やっぱり硬直するか……シスター!」

「了解よ、レムくん! 《甲弾蟲》ッ!」


《斬空骨剣》による斬撃を放ったところで、レムの体が一瞬だけ硬直する。


 今、レムたちが行っているのは、強力な敵と相対した時に備えて、三人による高度な連携攻撃の練習である。


《霊剛鬼剣》も《斬空骨剣》も強力な霊装武具だ。

 間髪入れずに召喚・発動すれば体に負担がかかり、僅かな時間ではあるが硬直を起こしてしまう。


 そこで、アリシアの魔法攻撃を同時に繰り出す、それに加え、アンリの《甲弾蟲》で追撃。

 レムの硬直時間をサポートしようという作戦だ。


「レム様、失礼いたします」


 さらなるスキルをレムが発動しようとしたその時だった。

 後ろから屋敷のメイドが声をかけてきた。


「どうかしましたか?」

「修練中にお声がけしてしまい申し訳ありません。レム様にお客様がいらっしゃいまして……」

「ぼくに……? わかりました、すぐに向かいます」


 冒険者であるレムに客……大体の予想がついたレムは、アリシアたちとの練習を切り上げて、屋敷に応接の間へと向かう。



「レムさん! お忙しいのにすみません」

「ネネットさん……どうやら今回は本物のようですね」

「もちろんです! 念のために〝色々〟確認してもらってもいいですよ?」


 来客はギルドの受付嬢ネネットだった。

 貴族の屋敷にいるせいか、どこか所在なさげだ。


 それはさておき。


 カーチルの件もあり、一瞬疑うレムであったが、彼女の様子を見て、そうではないとわかるといつものあどけない表情に戻る。

 ネネットはそれに苦笑しながらも、元気な声でレムに応える。


 なんだか〝色々〟のイントネーションが強調されていた気がする上に、彼女の頬が少々ピンクに染まっている気がするが……レムはそれに気づかない。


「それよりもどうしました、ネネットさん? 侯爵様の屋敷にまで訪ねてくるということは……何か指名の依頼でしょうか?」

「その通りです、レムさん。実は、また迷宮の様子がおかしくて……モンスターの動きが活発化しているんです」

「モンスターが活発化……まさか、またゴブリンですか?」

「いえ、今回は特定の種族ではなく、モンスター全般が活発化、そして発生量も増えているようです。一層目にオークが現れたという報告もありました」

「一層目にオーク……ですか」


 ネネットの報告を聞き、レムが少しの間沈黙する。


 通常、オークが現れるのは二層目以降だ。

 それが一層目に現れたともなれば、初心者冒険者など、ひとたまりもないだろう。


「こちらが正式な依頼票となりますので、ご確認ください」

「依頼は……モンスターの駆逐と、発生原因の究明、原因がわかった場合は可能であればそれを排除、ですか」

「報酬もなかなかいいみたいですよ、ご主人様」

「ほんと、すごい金額ね……」


 ネネットの差し出した依頼票をレムが読んでいると、両隣からアリシアとアンリが顔を出す。

 二人の言う通り、前回のゴブリンキングの時ほどではないにしろ、それでもかなりの報酬額が明記されている。


「ついでに言うと、その依頼には私も同行することになっている」


 レムが依頼を受ける旨を伝えようとしたその時だった。

 少し離れた席から、同席していたヤエが割って入ってくる。


「え……? そうなのですか?」

「もちろんだ、レムちゃん。正式に騎士団にも依頼が入ってな。前回ほどの騒ぎではなさそうだから、私一人が同行する予定だ。不満か?」

「いえ、防御スキルを持つヤエさんが同行してくれるならありがたいです」


 ヤエが同行すると聞き、レムは少し安心する。


 レムが行くとなれば、アリシアとアンリもついてきてしまうだろう。

 スケルトンガードナなどに護衛をさせるつもりだが、やはり防御に関する上級スキルを持つヤエの同行は心強い。


 前回のゴブリンキングの件で、彼女の心が折れてしまっていないか、若干心配していたのだが……それも杞憂だったようだ。


「お受けいただけるようで、よかったです。それでは私はギルドに受託の報告をしてきますので、準備が出来次第、迷宮に向かっていただけたらと思います。……くれぐれも、無理はなさらないでくださいね……!」

「了解です。もちろん無理はしないのでご安心ください」


 ネネットの言葉に、レムはしっかりと頷きながら応える。

 侯爵にクエストに出かける旨を伝え、諸々準備を済ませると、その日のうちにレムたちは迷宮へと赴くのだった。


(ゴブリンキングに続き、新たな迷宮の異変――なんだか嫌な予感がするな……)


 レムの直感が、静かに、しかしはっきりと警鐘を鳴らす。


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