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勇者パーティをお払い箱になった霊装騎士は、自由気ままにのんびり(?)生きる  作者: 銀翼のぞみ
二章

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50話 四魔族ウァラク

 ゴーレムが動く。

 高機動型の名の通り、とんでもない速さでマイカに向かって突っ込んでくる。


対し、マイカは、スッ……と、ゴーレムに向かって手を掲げる。

そしてスキルの名を紡ぐ。


「喰らいなさい、《黒ノ魔槍(ブラック・ジャベリン)》……ッ!」


 ――瞬間、マイカの目の前の空間から一条の漆黒の閃きが迸った。

 漆黒の閃きは目にも留まらぬゴーレムの額へと襲いかかる。


 そして――ドパンッッ! と激しい衝突音を打ち鳴らす。


 ゴーレムの額……そこに刻まれた魔法文字(ルーン)が額の一部とともに消し飛んだ。

 ゴーレムの殆どは、体のどこかに魔法文字が刻まれている。


 それを一部でも失うと、活動を停止するのだ。

 その証拠に、今も目の前で激しい音とともにゴーレムが崩れ落ちていく。


「さすがねぇ、マイカ」

「高機動型ゴーレムも、マイカの〝闇魔法〟スキルの前には雑魚同然だね!」


 ゴーレムが崩れ落ちたのを確認したところで、レイナとクルエルが、マイカに称賛の言葉を送る。


 それに対し、マイカは得意げに――


「当たり前じゃない、闇魔法はパパから引き継いだ最強属性のスキルだもの、高機動型ゴーレムごときが見切れるはずがないわ」


 ――と応える。


 彼女の言う通り、《黒ノ魔槍》――闇魔法は最強の名を冠する属性スキルだ。


 かつて魔神の黄昏(ラグナロク)で魔神の魔の手から世界を救った、最強の大魔導士である父から、マイカはいくつかの闇魔法スキルを生まれ持ってして引き継いでいるのだ。


《黒ノ魔槍》はその破壊力もさることながら、発動速度も他の属性魔法よりも桁違いに速い。

 今回のゴーレムは高機動型であり、その機動力と反応速度は凄まじいものではあったが……《黒ノ魔槍》の前には、反応することすらできなかった。


「この調子なら四魔族も敵じゃないかもね!」

「そうねぇ、さっさと帰りたいわねぇ。レムのことも気になるしぃ……」

「そう、だね……」


 マイカの実力に、クルエルは機嫌良さそうに声を上げるが、直後のレイナの言葉に悲しそうな表情を見せる。


 クルエルもレイナも、レムが憎くてパーティを追放したわけではない。

 むしろその逆、好きだからこそ追い詰めて自分たちのものにしたかった。


 ……が、それは結局失敗に終わり、挙げ句の果てにその後の彼に何か良くないことが起きたのは、エリスの口ぶりから察することができる。


 二人もまた、マイカのようにレムのことが気がかりなのだ。

 自分たちの身勝手な思いつきが発端となったとなれば……当然である。


「……二人とも、先を急ぐわよ? 早く四魔族を倒して、帰ってエリス様の話を聞きましょう」


 意気銷沈した二人の様子を見て、このままではこの先の戦闘に差し支えると判断したマイカは、気丈に振る舞い、クルエルとレイナに声をかける。


 二人はそれに大きく頷くと、マイカに従い遺跡の奥へと進んでいく。



「これはぁ……」

「すごいプレッシャーだね……!」

「間違いなく、この先に四魔族の一体がいるわね……」


 その後もいくつかの戦闘をこなし、遺跡の奥へと辿り着いたマイカたち。


 三人の前に、巨大で重厚な扉に閉ざされたとある区画が現れた。


 扉越しでもわかる、ビリビリと肌を刺激するような圧迫感……どうやら既に四魔族のうちの一体が復活しているようだ。


「レイナ、クルエル、準備はいい?」

「えぇ、いつでもいけるわぁ」

「私もオッケーだよ☆」


 マイカの問いに、緊張した面持ちをしつつも、しっかりと応えるレイナとクルエル。

 緊張はしているが怯えた様子はない。


 それを確認したところで、マイカは――


「《黒ノ魔槍》……ッ!」


 ――と、闇魔法を発動。


 巨大な扉のど真ん中に、大穴を開けて、静かに……しかし素早く中へと足を踏みいれる。


『この波動……忌まわしい。神聖属性……お前、勇者……か?』


 中へ入ると、そんな言葉とともに一人の大男が現れた。


 毒々しい緑の髪、そして赤銅色の肌。

 そしてその身に纏う禍々しいまでのオーラ……。


 恐らくこの者こそが――


「お前、四魔族の一人ね?」


 マイカが鋭い視線で相手を睨みつけながら言う。


 それに対し相手は「そう……私……今は眠りについている……七大魔王〝マモン〟様に仕えし、四魔族が一人……〝ウァラク〟……」と応えた。


「ならば私たちに大人しく倒されなさい? 私の名はマイカ。お前の言った通り、この時代の勇者の一人よ」


 やはり、相手――ウァラクは四魔族の一柱だった。

 そして〝今は〟眠りについている七大魔王に仕えし……という言葉から察するに、このまま放っておけば、七大魔王を復活させるために活動を始めるつもりだろう。


『勇者……ならば、お前……殺す。勇者は……魔王様の……敵……!』


 先ほどまでとは違い、ウァラクが明らかな殺気を込めて言葉を放った。

 そしてマイカに向かって一気に踏み込んでくる。


「クルエル!」

「了解だよ、マイカ! 喰らえ、《グランドスパイク》!」


 マイカがクルエルの名を呼ぶと、彼女は待ってしましたとばかりにスキルを発動する。


 クルエルの獲物は巨大なバトルアックスだ。

 そして《グランドスパイク》はバトルアックスに土属性のマナを込めて放つ上級スキル。


 クルエルがバトルアックスを振るうと、地面が大きく隆起し、数十もの鋭いランスのようなものを形成し、マイカに向かって加速するウァラクに襲いかかる。


『無駄……《シールシールド》、発動……』


 しかしどうだろうか。

 上級スキルを目の前にしても、ウァラクは動揺しない。

 それどころか涼しい顔で、自身もスキルを発動する。


 ウァラクが迫り来る《グランドスパイク》に向かって手のひらを向ける。

 すると目の前に紫色の幾何学的な紋様が刻まれた陣が出現した。


 そして――


 パシュ……ッ……と間抜けな音が鳴る。


「嘘……! 私の《グランドスパイク》が消えちゃったよ!?」


 クルエルが目に見えて狼狽する。


 そう、彼女の言う通り、ウァラクが発動したスキルに触れた瞬間、《グランドスパイク》は跡形もなく消え失せてしまったのだ。


「クルエル! 動揺してないでもう一度スキルを発動しなさい!」

「わ、わかったよ、マイカ! 《グランドスパイク》――! …………そ、そんな! スキルが発動しないよ!?」

「…………ッ!」

「なんですってぇ!?」


 マイカに言われて再び《グランドスパイク》を発動しようとしたクルエル。

 しかし、スキル名を口にしてもそれが発動することはなかった。


 クルエルの言葉を聞き、今度はマイカとレイナが動揺する。


 マイカがウァラクに向かい「一体何をしたの!?」と鋭い声で言葉を飛ばす。


 すると、ウァラクは静かに……そして薄っすらと笑みを浮かべながら……。


『固有スキル《シールシールド》……上級までのスキルを無効化し、無効化したスキルを一定の期間……〝封印〟すること……できる』


 ……と言い放った。


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