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勇者パーティをお払い箱になった霊装騎士は、自由気ままにのんびり(?)生きる  作者: 銀翼のぞみ
二章

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49話 想いを馳せる女勇者

「そう、ご苦労様。あなたたちは外で待っていなさい」

「畏まりました、勇者様!」


 王都を出て半日、マイカたちは件の古代遺跡へと辿り着いた。

 マイカは外で見張りをしていた兵士に状況を聞くと、その場で待機するように指示を出し、クルエルとレイナを連れて遺跡の中に足を踏み入れる。


「ふぇ〜、さすが古代遺跡。まるで迷宮だね〜」


 辺りを見回しながら、クルエルが呟く。

 彼女の言った通り、遺跡の中は入り組み、さながら迷宮のような構造をしていた。


「レイナ、索敵魔法を発動させておきなさい。四魔族の復活に合わせてモンスターが現れる可能性もあるわ」

「了解よぉ、マイカぁ。けど警戒は怠らないでねぇ、私の索敵魔法はぁ……」

「わかってるわよ、ドラゴン族モンスターには反応しないのよね……」


 警戒のため、索敵魔法を発動するようにマイカがレイナに指示を出す……が、レイナの言葉を聞くと、苦虫を噛み潰したような表情になる。


 思い出すのは、レムがパーティを離脱してからしばらく経った日のことだ――


 マイカたちが魔族の討伐にとある深林に赴き、その帰り道にレッサードラゴンの群れに遭遇し、止むを得ず撤退する羽目になった記憶に新しい。


 レイナの言う通り、彼女の索敵魔法スキルは、ドラゴン族モンスターの持つドラゴンスキンに反応しない。

 今までであれば、レムがスケルトンラットと死友ノ宝玉を使い、目視での索敵をしながら任務に当たっていたから、例えドラゴン族モンスターの群れがいようとも囲まれることはなかった。


 そして、レムはアンデッドの召喚もできた。

 スケルトンガードナーなどを囮にして、各個撃破することも可能だった。


 レムがいないから敵に囲まれ窮地に陥り、レムがいなかったから撤退する羽目になった……。

 レムは足手まといなんかじゃなかった――その事実をマイカたちが自覚するのに、そう時間はかからなかったのだ。


「マイカ、またレムきゅんのこと考えてるの〜……?」

「べ、別にそんなこと! それより、クルエル。あなたもしっかり警戒しなさい!」

「うひ〜!? 了解だよ!」


 暗い表情をするマイカを心配したのか、彼女に声をかけるクルエル。

 自分の胸の内を見透かされたことに恥ずかしさを覚えたマイカは、頬を染めながらクルエルを一喝する。

 マイカを怒らせるとロクなことにはならないと、クルエルは悲鳴を上げながら先頭に立って警戒を始めるのだった。


(まったく……元はと言えば、あなたたちがレムを性奴隷にしてシェアしようなんて持ちかけなければこんなことには――いえ、それに乗った私がいけないのよね……)


 クルエルとレイナをチラリと見て、マイカは気づかれないように小さく溜息を吐く。


 そうなのだ。

 元はと言えば、戦力外を理由に、レムを性奴隷にしてしまおうと持ちかけてきたのはレイナとクルエルだった。


 三人とも愛らしく、優しいレムのことをずっと好いていた。

 そして彼が思春期を迎えたことでその気持ちは大きくなっていった。

 そんな中、クルエルとレイナが――という感じだったのだが……詳しくは別の機会に語るとしよう。


 ともかく、二人の企みに乗せられたとはいえ、レムを追い詰めたことには変わりはない。

 その時点でマイカも同罪なのだ。


 どうしてこうなっちゃったんだろう……。

 レムが出て行った日のことを思い出すと、今も胸が痛む。


「マイカ、モンスターの反応があるわぁ。やっぱり四魔族の復活に合わせて、遺跡が迷宮化しつつあるみたいよぉ」


 レイナの索敵魔法スキルに反応があったようだ。


 強大な魔族が出現すると同時期に、その周囲からモンスターがどこからともなく生まれ出る事例がある。


 普段は動物も棲みつかないような場所に、急にモンスター現れるようになった……。

 やはり、エリスが聖魔王ベルゼビュートから受けた神託の通り、四魔族の内の一体がこの迷宮で復活を遂げていると見て間違いないだろう。


「敵は……どうやら〝ゴーレム〟みたいだね〜、それも高機動型っぽいよ〜」


 曲がり角から、身を潜めつつ先を見ながらクルエルが告げる。


「へぇ、さすがは四魔族に呼応して現れたモンスターね……」


 クルエルの報告に、マイカは小さく笑いながら応える。


 ゴーレムにはいくつかの種類が存在するが、高機動型ともなればAランクに格付けされる強さを誇る。


 そんなモンスターが出現したというのに、笑う余裕があるとは……さすが今代の勇者の一人と言えるだろう。


「レイナ、他に敵の反応は?」

「効果範囲に反応はないわぁ」

「そう、なら早いところ片付けて先に進みましょう。もしかしたら、もう四魔族が復活しているかもしれないわ」


 レイナの答えを受け、マイカはゴーレムの元へと歩きだす。


 普段はいないはずのモンスターが出現した。

 それ即ち、四魔族の復活が間近である……或いは既に復活を遂げているということだ。

 力を取り戻す前に、何としても四魔族の元へと辿り着きたいところだ。


『ゴアァァァァァァァァァァァ――ッッ!』


 曲がり角から姿を見せたマイカ。

 彼女に向かって、ゴーレムが大気を震わせるほどの咆哮を上げる。


「うるさいわね、黙って私たちにやられなさい?」


 マイカはゴーレムを冷たい視線で見つめながら、戦闘態勢に入る。


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