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勇者パーティをお払い箱になった霊装騎士は、自由気ままにのんびり(?)生きる  作者: 銀翼のぞみ
二章

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38話 初めての連携と目覚める自我

「おう、レムたちじゃねーか」

「今日も迷宮攻略であるか?」


 迷宮都市の中へと戻ってきたレムたち。

 アンリのスキルの実戦運用をする為に迷宮区へと足を運ぶと二人の男が声をかけてくる。


「お疲れ様です。ダニーさん、ハワードさん」

「アンリが戦闘スキルを入手したので、実戦訓練をしに来たのです」

「先日はありがとうございました」


 迷宮の見張り番をしているダニーとハワードに、レムが労いの言葉をかける。

 それに続きアリシアが今回の目的を説明し、アンリが先の迷宮攻略の礼を言う。


「ほう、アンリちゃんが戦闘スキルを……」

「どんなスキルなのであるか?」

「召喚系のフェイズシフトスキルです。なかなか使い勝手のいいものが手に入りました」

「な……!? フェイズシフトスキルだと!?」

「それは……羨ましいであるな……」


 レムの答えに、ダニーとハワードが驚愕を露わにする。

 それだけフェイズシフトスキルというのは希少なスキルなのだ。


「それでは少しの間、迷宮に潜ります」

「おう、レムなら大丈夫だと思うけど十分気をつけろよ?」


 ダニーに一言告げながら、レムは迷宮へと足を踏み入れる。

 その背中に、ダニーは一応の忠告をするのだった。



「さて、それじゃあ……《眷属召喚》!」


 迷宮に入ったところでレムがスキルを発動する。

 呼び出したのはもちろん《スケルトン》だ。

 数は先ほどと同じ三体、一度次元に帰還させているのでアリシアの《ランクアップ・マジック》は解除されてしまっている。


「アリシア、お願い」

「はいっ、ご主人様っ♡ 《ランクアップ・マジック》!」


 アリシアが《スケルトン》三体に《ランクアップ・マジック》を付与する。

 三体はあっという間に《ハイスケルトン》へと早変わりだ。


「もう一度、《眷属召喚》!」


 続けて、レムが新たにアンデッドを召喚する。

 次に呼び出したのは中級アンデッドである《スケルトンガードナー》だ。

 こちらにもアリシアによる《ランクアップ・マジック》を付与することで、《ハイスケルトンガードナー》へと進化させる。


『再びこの姿にしていただき、光栄ですマスター♪』

「……なんかお前、キャラ変わってないか?」

『アリシア様の仕草をマネてみました♪ いかがでしょうマスター?』

「も、もはや人間だな……」


《ハイスケルトンガードナー》の口調が以前よりも緩いものになっており、心なしか表情も明るい感じが……。

《ランクアップ・マジック》恐るべし、である。


「ま、まぁいい。それよりシスター、《ハイスケルトン》たちに《装剣蟲》を」

「了解よ、レムくん。来なさい《装剣蟲》!」


 人間のように振る舞う《ハイスケルトンガードナー》に若干引きつつも、レムがアンリに指示を出す。

 それに応えて《ハイスケルトン》たちに《装剣蟲》を与えるアンリ。


「よし、これで準備は整ったね。《ハイスケルトン》、お前たちには前衛を任せる。シスターは《甲弾蟲》で《ハイスケルトン》たちの援護を。ぼくとアリシアは基本待機だけど、万一のことがあったら戦線に参加する。《ハイスケルトンガードナー》は常にアリシアとシスターの護衛を忘れるな」


「了解よレムくん」

『『『了解!』』』

「分かりました、ご主人様♡」

『お任せください、マスター♪』


 アンリに《ハイスケルトン》、それにアリシアと《ハイスケルトンガードナー》がレムに応える。


 アリシアに関しては、自分の口調をマネする《ハイスケルトンガードナー》を見て、微笑んでいる。


 それは当然かもしれない。

 進化したアンデッドたちはレムのスキルとアリシアのスキルによって生まれたのだ。

 なんだか小さな子どもができたような感じを覚えているのだろう。


『グギャッ!』


 そんな中、一行の前に一体の異形が現れる。

 Eランクモンスターのゴブリンだ。


 どうやら一体だけのようだ。

 先日ゴブリンキングを倒すのと同時に、あらかた異常発達種は狩り尽くしたので、この個体は通常種と見て問題ないだろう。


『まずは私にお任せを』

《ハイスケルトン》のうちの一体がそう言って前に出る。

『グギャギャギャ!』


 その様子を見てゴブリンが笑い声を上げる。

《ハイスケルトン》は進化したことによって青白い肌の美女へと変貌している。

 ゴブリンはその姿に欲情し、昂ぶっているのだ。


 相変わらずゴブリンは馬鹿だ。

 貧相な体と粗末な短剣しか持たぬのに、上質な装備を整えた《ハイスケルトン》との力量差を測ることすら出来ぬのだから。


『グギャ!』


 ゴブリンが飛び出した。

《ハイスケルトン》に向かって短剣を逆手に持ち振り下ろしてくる。


『遅い』


《ハイスケルトン》は小さく呟くと、半身でゴブリンの攻撃を避ける。

 攻撃を躱されたゴブリンは『ギャ!?』と驚愕の声を上げる。

 そしてその背中に……ドスッ!


《ハイスケルトン》が《装剣蟲》を一気に突き刺した。

 進化したことによって得た膂力と、《装剣蟲》の切れ味の良さによって心臓まで貫通する。

 その証拠に、ゴブリンの口から鮮血が吐き出される。


『ふん……っ』


 鼻で一笑しながら《ハイスケルトン》が《装剣蟲》を引き抜く。

 ゴブリンはそのまま地面に崩れ落ちるのだった。


「よくやった《ハイスケルトン》、これなら状態も良いしギルドで高く買い取ってもらえるだろう」

『お褒めに預かり光栄ですマスター』


 レムに褒められ、《ハイスケルトン》が恭しく礼をする。


 敵に余計な傷を負わせることなく勝負を決めることが出来るのはある程度の技量を持っている証拠だ。

 ゴブリンの攻撃を難なく躱したのを見るに、なかなかの動体視力を持っているのだろう。


自分の意志で動けるようになっただけでなく、ここまでの状況判断力を持つに至るとは、さすがは《ランクアップ・マジック》である。


『マスター、次は私にお任せ下さい』

『いえ、次は私が――』


(あれ? もしかして、こいつらヤキモチ妬いてる……?)


《ハイスケルトン》がレムに褒められたのを見た瞬間、残りの二対が自分も自分もといって、競い始めた。

 まさか《ハイスケルトンガードナー》だけでなく《ハイスケルトン》たちまでそこまでの感情を持ったというのだろうか。


「わ、分かった、とりあえず奥へと進もう。お前たちにも期待してるから」

『お任せ下さい、マスター』

『必ずや期待に応えてみせます』


 レムに応じる《ハイスケルトン》たち。

 冷静な口調の割には鼻をフンスフンスと鳴らしている。

 そんな彼女のたちの様子に、レムは苦笑してしまうのだった。



「もう二層目……やっぱり迷宮が沈静化しているのでしょうか?」

「先日のクエストであれだけ敵を狩り尽くしたからね、迷宮もゴブリンキングを生み出したばかりだし、休眠期に入っているのかもしれない」


 アリシアの言葉にレムが応える。

 迷宮二層目に辿り着くまで、モンスターに遭遇することはなかった。

 レムの言った通り、迷宮は強力なモンスターを生み出した後、その活動が沈静化することがある。

 その期間のことを休眠期と冒険者たちは呼んでいる。

 だが、それでもモンスターを全く生み出さないわけではない。


 その証拠に……。


『ブヒッ……』

『ブヒヒッ……!』


 迷宮の奥から耳障りな声が聞こえてくる。


「オークが二体、ちょうど良いわ。みんなやるわよ!」

『了解です、アンリ様』

『マスターに私たちの有用性をお見せします』

『先手必勝です』


 アンリの掛け声に応え、《ハイスケルトン》たちが駆け出した。

 先頭の《ハイスケルトン》が刺突の構えでオークに接近する。


 オークの得物は棍棒だ。

 棍棒を振り上げ、刺突を弾いてくる。


『隙ありです』


 だがその瞬間、後方に控えた《ハイスケルトン》がさらに《装剣蟲》による刺突を見舞う。

 そして一気に胸を貫いてみせた。

 初めの攻撃は敵の隙を作り出すためのフェイクだったのだ。


 ちなみに、これらの連携はレムが指示したものではない。

《ハイスケルトン》が自ら考え、実践したのだ。


「行きなさい、《甲弾蟲》!」


 残りの一体に向かって、アンリが《甲弾蟲》を放つ。

 装甲を纏った蜘蛛が高速で飛び出し、オークの肩を穿った。


『ブギャァァァァァッ!?』


 あまりの激痛に、オークがたまらず悲鳴を上げる。


 そしてこの瞬間、勝負は決まった。

 三体の《ハイスケルトン》が一斉にオークへ《装剣蟲》を突き刺す。

 それぞれ眼、腹、左胸を貫いている。

 どれもが急所、確実にオークを仕留めてみせた。


「すごいよシスター、《ハイスケルトン》、初めての連携でここまで出来るなんて」

「ありがとう、レムくん。これも《ハイスケルトン》ちゃんたちのおかげね♪」

『いえ、アンリ様の援護があったおかげです』

『マスターに褒めてもらえた……嬉しい……』

『これからも精進いたします』


 レムに褒められ、アンリが嬉しそうな表情を浮かべると、《ハイスケルトン》たちも同じく表情を綻ばせる。

 アンデッドなのに頬を染めているのは一体どういう仕組みになっているのだろうか?


『む〜! 私もマスターに褒めてもらいたいです……』

「ふふっ、《ハイスケルトンガードナー》ちゃんったら、よしよしです♪」


 自分だけ何の活躍も出来なかった《ハイスケルトンガードナー》が、ぷくーと頬を膨らませていじける。

 そんな彼女の頭を、アリシアは撫でてやるのだった。


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