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勇者パーティをお払い箱になった霊装騎士は、自由気ままにのんびり(?)生きる  作者: 銀翼のぞみ
一章

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21話 愛ノ絆

「《ファイアーボール》ッ!」


 アリシアがスキルを発動する。

 すると、彼女の手のひらに火球が現れた。炎属性の下級魔法スキル、《ファイアーボール》だ。


「……アリシア、何を?」


 レムが不思議そうな声を漏らす。なぜならば、スキルを発動したアリシアが《ファイアーボール》を放たないからだ。


「ふふっ、ここからがわたしの力の見せどころです! 《ランクアップ・マジック》発動……ッ!」


 レムの反応を見て、アリシアは小さく笑いながら、更なるスキルを発動する。

 その直後、アリシアの手のひらの火球が紅蓮に染まり――三倍ほどの大きさに膨れ上がった。


「喰らいなさいッ!」


 そう言って、膨れ上がった《ファイアーボール》を駆け寄ってくるゴブリンへ向かって放った。


 ドゴウ――ッ!


 凄まじい轟音とともに、ファイアーボールはゴブリンに衝突。

 小規模な爆発を起こし、ゴブリンを火だるまにする。


『グギャァァァァァッ!?』


 ゴブリンの悲鳴が迷宮内に木霊する。

 体を覆う火を消そうとジタバタと転がり回る。

 だが、火の勢いが強すぎた。ゴブリンはもがき苦しみながら、灰燼と化してゆくのだった……。


「どうですか、ご主人様。わたしの固有スキル《ランクアップ・マジック》の威力は?」

「すごい……いや、すごすぎだよ、アリシア。《ランクアップ・マジック》……効果は魔法スキルの威力を上げるってところかな?」


 呆気にとられるレムの表情を見て、アリシアは満足げな様子で感想を聞いてくる。

 レムは正直な感想を言いつつ、彼女の使ったスキル《ランクアップ・マジック》の効果を確認する。


「当たらずとも遠からずです。《ランクアップ・マジック》は対象の位階を上げる能力を持っています。下級魔法スキルに使えば同系統の中級魔法スキルと同等の効果を持たせることが出来る……といった具合です」

「なるほど、たしかにさっきの《ファイアーボール》は、中級魔法の《フレイムソード》と同じくらいの威力を持っていた。とんでもない能力だな……」


 レムがしみじみと言葉を漏らす。

《ランクアップ・マジック》……その力があれば、下級スキルまでしか持っていない者でも、中級スキルと同等の力を扱うことが出来るということだからだ。


 もし、その力を他者のスキルを対象にして発動可能なのであれば、アリシアは類を見ないほどのブースト戦力なるだろう――そんな事をレムが言うと……。


「ご主人様が相手なら発動可能ですよ?」


 アリシアがそんなことを言い出した。


「へ…………?」


 それを聞き、レムが間抜けな声を漏らす。


 当たり前だ。

 アリシアの言葉……それが本当であれば、レムの霊装騎士の力はとんでもない能力へと進化を遂げることが出来るのだから――


「今試しにやってみましょう! いきますよ? 固有スキル《愛ノ絆(ラブ・ボンド)》!」


 アリシアがレムの体に寄り添いながら、そんな言葉を紡ぐ。

 レムは「まだ固有スキルを持っているのか!?」と、驚いた顔をする。


 そんな彼とアリシアを、淡いピンク色のオーラのようなものが包み込んだ。

 オーラに包まれた瞬間、レムの体が温かさ、それとなんとも言えない安心感で満たされていく。


「よかった……」

「アリ……シア?」


 レムの隣でアリシアが声を漏らす。

 彼女の顔を見ると、美しいアメジストヴァイオレットの瞳に涙を浮かべていた。


 レムは一体どうしたのかと、心配そうに彼女の名を呼ぶ。

 すると、アリシアは頬を染めながらゆっくりと語り出した。


「ご主人様、わたしのもう一つの固有スキル《愛ノ絆》は、対象に自分の能力を付与出来るようにするスキルです。そして、その発動には条件があります」

「発動条件?」

「はい、《愛ノ絆》は〝心から愛し合い、初めてを捧げた者〟を対象にしなければ発動しないのです」

「えっとそれって……」

「ふふっ、ご主人様がわたしのことを愛してくれているということが改めてわかって、嬉しさのあまり泣いちゃいました……」


 アリシアが涙を拭いながら、幸せそうな表情でレムに言う。

 レムは気恥ずかしげに頭をかきながら、アリシアにハンカチを渡してやるのだった。


「さぁ、それではいきます! 《ランクアップ・マジック》……ッ!」


 涙が溢れるのが止まった頃、アリシアは早速行動に移る。

 レムの手にした《霊剛鬼剣》に手のひらをを向け、《ランクアップ・マジック》を発動する。


「これは……ッ!?」


 レムは目を見開いた。

《霊剛鬼剣》が自分の意思とは関係なく黒紫の輝きを放ったからだ。


 輝きは激しくなり、《霊剛鬼剣》を覆い尽くす。


 そして――


「これが……《ランクアップ・マジック》の――アリシアの力か」

「いいえ、ご主人様。これはわたしたちの〝愛の力です〟。」


 輝きが落ち着いたのと同時、レムは自分の手にした《霊剛鬼剣》を見て言葉を漏らし、アリシアがそれに応じる。


 レムの手にした《霊剛鬼剣》――その姿は大きく変わっていた。

 色は黒と紫を基調としていたものから、黒と毒々しい赤色に……。

 大きさは一回りほど大きくなっており、デザインは更に禍々しくなっている。


 だが、見た目の変化はさほど重要ではない。

 重要なのは、《霊剛鬼剣》の〝能力の変化〟だ。


《霊剛鬼剣》の能力は、Bランクアンデッドである、アンデッド・オーガの膂力を召喚者に授けるというものだ。


 しかし、今レムが《霊剛鬼剣》から感じる力はそれを遥かに上回っている。

 その証拠に……。


 轟――ッッ!


 レムが《霊剛鬼剣》を一振りすると、凄まじい音ともに衝撃波が前方へと走り抜けた。

 衝撃波が生じるほどの剣速……単純なパワーで表せば、恐らくAランクアンデッドに匹敵するほどの膂力が備わっているだろう。


「ふふっ、ご主人様がわたしのスキルで強くなる……なんだか嬉しいですっ」

「あぁ、ぼくもだよ、アリシア」


 ――この力があれば、マイカたちに追放されることもなかったのかな……?


 一日前のレムだったら、そんなことを考えたかもしれない。

 だが、今の彼はアリシアと愛し合うことで生まれた絆がある。

 そしてそれは、スキルの発動条件によって証明された確かなものだ。


 霊装騎士は過去を振り返らない。

 愛すべきアリシアの為、その力を振るうことを改めて決意する。


 二人は行く、幸せな未来へと繋がる迷宮という名の旅路を――

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