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勇者パーティをお払い箱になった霊装騎士は、自由気ままにのんびり(?)生きる  作者: 銀翼のぞみ
一章

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21/78

20話 二人でクエスト

「ありゃ? 昨日の少年っすね! 今日は一人じゃないんっすね?」

「こんにちは船頭さん、昨日はありがとうございました。彼女はぼくの……こ、恋人です……」

「……っ! ご主人様……!」


 迷宮区へと向かう為、ゴンドラ乗り場へとやって来たレムとアリシア。そんな二人に、一人の少女が声をかけてくる。

 特徴的な口調、気さくな雰囲気、そしてボーイッシュな出で立ち、昨日レムを迷宮区まで乗せて行った船頭の少女だ。


 愛すべき主人レムに、アリシアは自分のことを恋人だと紹介され、嬉しさのあまり感嘆の声を漏らす。


「ほへ〜、昨日は死人みたいな顔してたのに、今日は幸せそうな顔してるっす! それにこんな美人な恋人まで……。まぁいいっす、それより格好を見るに、今日も迷宮っすか?」

「はい、お願いします」


 昨日のレムの表情を見て、少しばかり彼のことを心配していた船頭の少女は、彼の昨日との変わりっぷりを見て驚きを覚えるも、恋人と紹介されたアリシアとの仲のいい雰囲気に納得する。


 アリシアと言えば……今の彼女はミニスカメイド服から冒険者衣装に着替え済みだ。動きやすさを重視する為、上は腹を大きく露出させた革製のノースリーブジャケット、下もこれまた露出の多い革製のホットパンツ、腕には鉄製のガントレットを装備し、脚にはハイブーツを履いている。もちろん、彼女の大好きなガーターベルトも忘れていない。


 メイド服姿もセクシーかつ、なんとも愛らしかったが、ワイルドな冒険者衣装も普段とのギャップが楽しめていい……それがレムの抱いた感想だった。


「さぁ、行こうか、アリシア」

「ふふっ、ご主人様にエスコートしてもらえるなんて、ドキドキしちゃいますっ♡」


 先にゴンドラへと乗り込んだレムがアリシアに手を伸ばすと、アリシアは微笑ましいものを見るような表情で彼の手を取り、ゴンドラへと乗り込むのだった。


「ふへ〜、口から砂糖吐きそうっす!」


 レムとアリシアのラブラブっぷりに、船頭の少女は苦笑しながらそんなことを言うのだった。





「お、レムにアリシアじゃねーか」

「今日は二人で迷宮攻略であるか?」


 迷宮区に辿り着き、ゴンドラから降りたレムとアリシアに二人の騎士が声をかけてくる。


「ジェシーさん、ラージさん!」

「昨日は奢ってくださって、ありがとうございましたっ」


 ジェシーとラージ……どうやら今日は二人で迷宮の見張り番をしているようだ。二人に向かって、レムとアリシアは昨日の礼を言う。


「なーに、気にすんなって」

「うむ、それに酒のおかげで二人は〝うまくいった〟ようであるからな」


 ジェシーとラージはニヤついた表情で、レムとアリシアの繋がれた手を見る。ゴンドラから降りてから、二人は自然と手を繋いでいたのだ。


 レムはジェシーたちの視線に、恥ずかしげに顔を赤くするが、アリシアは「おかげさまでご主人様と〝一緒に〟なれました♡」と、レムの腕に自分の腕を絡めて満面の笑みを浮かべる。


「おーおー、お熱いこって」

「ゲヒャヒャヒ! レム殿も男であるな!」


 ジェシーとラージが満足げな顔で言う。レムは恥ずかしさのあまり、そそくさと迷宮へと歩を進め、アリシアもそれに従う。


「あーあ、俺にもアリシアちゃんみたいな美少女イービルエルフの彼女できねーかな?」

「ゲヒャヒャヒャ! その歳まで独り身なお前には無理な話である!」

「うるせー!」


 レムたちの後ろから、そんな会話が聞こえてくるのだった。





『グギャッ!』


 迷宮一層目――


 レムとアリシアの前に、耳障りな声を上げながら、一体の異形が現れた。言うまでもない、Eランクモンスターのゴブリンだ。


 アリシアの体がビクンと強張る。それをレムは見逃さなかった。彼女の盾になるように前に出て、目の前の空間から《霊剛鬼剣》を顕現させる。


 例の如く、ゴブリンは華奢なレムが身の丈程もある魔剣を手に取ったのを見て、それをロクに使えるはずもないと思い込み、ゲラゲラと笑いながら駆け寄ってくる。


 ゴブリンは何も持っていない。どうやら引っ掻き攻撃でもするつもりのようだ。


「間合いに入ったな?」

「グギャッ――?」


 レムの呟きとともに、ゴブリンが――否、ゴブリンの頭が不思議そうな声を上げる。

 その場に残ったのはゴブリンの首から下のみ、その上はあらぬ方向へと飛んでいった。


「す、すごいです! 大剣を召喚したと思ったら、こんなに軽々と……これがご主人様の――霊装騎士の力……」


 後ろで見ていたアリシアが驚愕の声を上げる。


 ゴブリンが間合いに入った瞬間、レムは《霊剛鬼剣》を横薙ぎに振るった。

 ゴブリンの首は横一文字に切断され、勢い余って後方へと飛ばされていったのだ。


(アリシア、自分の持ってるスキルは覚えてるけど、戦闘に関する記憶は失われてるのか。それか、戦闘自体したことがないのかな?)


 ゴブリンが現れた時のアリシアの反応を思い出し、レムはそれを見抜いた。そして、迷宮に連れて来るべきではなかった……と少し後悔する。

 スキルがあっても戦闘経験がなければ、役には立たないし、何より咄嗟の時の判断が出来ない。スキルの練習をさせてから迷宮に連れて来るのが正解だったのだ。


 そんなわけで、一旦引き返そうと提案しようとしたのだが……。


「ゴブリンの動きはなんとなく理解できました。これならわたしでも戦えそうです!」


 などと、アリシアが言い出した。その表情からは先ほどまでの怯えの色は消えている。体の強張りもない。

 レムの直感が告げている。アリシアは強がっているのではなく本気でそう言っているのだと――


(あと一回だけ様子を見てみよう。それでダメだったら今日は引き返そう)


 アリシアの様子に、レムはそう決める。


「ご主人様、次はわたしが戦ってもいいですか?」

「わかった、でもぼくの前には出ちゃダメだからね?」


 戦いたいと言うアリシアに、レムは念を押しながら、それを許可する。


「それと……アリシア、今からぼくがやることは誰にも秘密だからね」

「……? 何をされるのですか、ご主人様?」

「まぁ、見てて……アイテムボックス、発動」


 レムの言葉に不思議そうな表情を浮かべるアリシア。口で説明するより、見てもらった方が早いだろう。

 レムはゴブリンの死体へと近づくと、手を近づけ小さく呟く。すると、ゴブリンの死体が黒い靄に包まれ――消え失せた。


「……ッ!? 死体が消えました! どういうことですか?」

「こういうことだよ、アイテムボックス、オープン」


 またもや驚愕の声を上げるアリシアに、レムは外套に込められたアイテムボックスを再び発動する。

 すると、黒い靄とともに、今度はゴブリンの死体がその場に現れた。


「討伐系のクエストには証拠としてモンスターの体の一部を持って帰るのことになっている。ゴブリンだったら耳を剥ぎ取る必要があるんだけど、この力を使えば剥ぎ取らずに丸々持ち帰ることができるんだ。丸々持ち帰れば死体の買い取り報酬が得られる」

「なるほど、だから誰にも秘密というわけですね?」

「……そういうこと。この能力を狙って、タチの悪いヤツらに目をつけらるかもしれないしね」


 アリシアは察しがいい少女のようだ。レムの言わんとしている事を皆まで言わずに理解した。

 レムはそれに感心しながら、一応補足しておく。


 そんな時だった。


 再びレムたちの前に、ゴブリンが現れた。今度は小さな斧を装備している。


「ご主人様、見ていてください、わたしの力を……!」


 ガントレットに包まれた右腕をゴブリンに向けながら、アリシアが言う。


 そして、彼女が放つスキル――その効果を目の当たりにし、レムは驚愕に目を剥くこととなる。


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