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プロローグ 追い詰められる霊装騎士

 要塞都市〝ガリウス〟――人類の大敵〝魔族〟が栄える領域〝魔界〟に最も近しい場所に位置する人間族の住まう大都市だ。


 そんな大都市の一角、高級宿の煌びやかな一室で……。


「〝レム〟あなたパーティを抜けなさい?」

「え……?」


 少女の突然の言い分に、少年はキョトンとした表情を浮かべて声をあげる。

 まるで、自分が何を言われたのか理解できないといった様子だ。


 声を上げた少年の名はレム。歳は十二。

 銀の髪に銀の瞳、そして綺麗な白い肌を持つ少女のような容姿をした少年だ。


 対し、彼の前に椅子を置き、その上で綺麗な足を組み、冷ややかな視線で言葉を浴びせたのは〝マイカ〟という名の少女だ。

 肌の色は白、黒色の髪に同じく黒色の瞳、美少女と言える容姿を持っている。


 フルネームは、マイカ=イザヨイ・サイレン。歳は十六。

 父は異界出身の大魔導士と呼ばれる英雄であり、母も同じく異界出身の先代勇者。

 マイカはそんな父母の力を引き継いだ、この時代における勇者の一人である。


「何を言っているのか分からない……といった様子みたいね? 分かりやすく言ってあげるわ。アンタ、もう足手まといなのよ」

「つまりぃ〜、レムきゅんはもう〝お払い箱〟ってこと! あはははっ! 今までご苦労さま☆」


 呆然とするレムに向かって、容赦ない言葉をぶつける少女が更に二人……。

 このパーティの一員、魔法使いの〝レイナ〟と戦士の〝クルエル〟だ。


 歳はマイカと同じく十六歳。

 二人ともマイカのように勇者としての力は持たないが、レイナは強力な魔法スキルを、クルエルもまた上級スキルの持ち主であり、勇者パーティとして相応しい戦力を有していた。


 対し、レムはというと――


「レム、たしかにあなたの〝霊装騎士〟の力は強力よ? でもただそれだけ、今の私たちの置かれた環境には着いて来れないわ」

「そっ、それは……」


 マイカの言い分に言い淀んでしまう。


 彼の能力は霊装騎士――特定のアンデッドの力を武具として具現化する力を持つ。

 その力は数年前に発現したものであり、一般的なスキルと比べると強力なものだ。


 この世界には大きく分けて六つのスキルの種類がある。


 下級スキル、中級スキル、上級スキル、超級スキル、更にその上に今は使えるものがほとんど存在しない古代スキルと、使用者が世界で唯一の固有スキル……以上の六つだ。


 一般的には常人が使えるのは中級スキルまでとされている。


 そんな中で、霊装騎士であるレムの持つスキルには上級スキルが含まれている。

 そのような力が発現したからこそ、レムは勇者の護衛役として孤児院から抜擢され、二年前に旅立ったのだ。


 その後、二人だけだった勇者パーティに入って来たのがレイナとクルエルだ。

 旅の当初は強力なレムの力を頼りにしていた彼女達ではあったが、約一年前だろうか……。


 レイナとクルエルは超級スキルを発現した。

 そして時同じくしてマイカに至っては古代スキルを身につけた。


 これにより、パーティは今まで避けていた過酷な旅路へと突入する。

 相対する敵は凶暴、そして強力なものへと代わり、旅の初めは猛威を振るっていたレムの霊装騎士としての力でも、苦戦する事が増えてきた。


 それと同時に、当初はレムに頼っていたレイナとクルエルにでさえも、危ないところを助けてもらうという場面さえも最近では珍しいことではなくなってきた。

 マイカやレイナの言うとおり、いつしかレムはパーティの足手まといとなり始めていたのだ。


「ふんっ、どうやらパーティを抜けるのはイヤって顔ねぇ?」

「あは! そうだと思って、レムきゅんにはパーティを抜けなくて済む方法も用意しといたよ☆ アタシたちって優しいよね〜」


 パーティを抜けることに首を縦に振らないレムを見て、レイナとクルエルは目配せをするとそんな事を言い出す。

 二人の顔にはイヤらしい笑みが張り付いている。


 その表情を見てレムは気づく。

 自分がパーティを追放される事を受け入れないと分かった上で、三人はこのような話をしてきたのだと……。


「嫌な予感しかしないけど、一応内容を聞かせてもらえる?」


 戦力外通告されたというのに、パーティに残してもらえる条件……。

 ロクなものであるはずがない。


 だがしかし、レムは正義感の強い少年だ。

 人々の未来のために戦う勇者パーティの力になれるのであれば、嫌な役回りでも受け入れる覚悟ある。


 それに、レムが勇者パーティに入ったのは、とある人(・・・・)を思ってのことだ。

 その人のために、出来ることならレムは勇者パーティを抜けることはしたくないのだ。


「簡単な話よ? レム、あなた私達のせいっ……こほんっ、奴隷になりなさい?」

「な……っ!?」


 奴隷だと? しかも今奴隷の前に変な単語つけようとしなかったか!?

 思いもよらぬ言葉で驚愕に目を見開くレム。


 そんな彼とマイカのを見て「「ぷ……っ」」と、レイナとクルエルが小さく吹き出す。


 その笑いはレムの反応によるものなのか。

 はたまたとんでもないことを口走りそうになったマイカに対するものなのか……。


 それはさておき。


 マイカは再び咳払いをすると言葉を続ける。


「レム、さっきも言ったとおり、あなたは最早戦力外よ。そんなあなたがパーティに残るには私達の身の回りの世話をする他ないと思うの」

「そのとおり。むしろこれは感謝すべきことじゃないかしらぁ?」

「そうそう〜、奉仕奴隷だったら戦闘で死ぬ心配はないもんね〜、あはっ!」


 相変わらず、マイカは女王様然とした、レイナとクルエルは馬鹿にしたような態度で好き勝手な意見をぶつけてくる。


 当のレムはというと……。


 仲間であるはずの少女三人からここまで言われた事実。

 そして、そこまで言わせてしまった自分の不甲斐なさに、表情を暗くし黙り込んでしまう。


「くすっ――レム? 何も奴隷になるのは悪いことだけじゃないわ。もちろん身の回りのお世話もしてもらうけど、私達がそういう(・・・・)気分になったら、アッチ(・・・)のお世話もしてもらうんだから」

「……ッ!? マ、マイカ……一体何を……」

「あなた女の子みたいな顔してるし、小柄でとっても可愛らしいわ。たまに見てると思うの、あなたをメチャメチャ(・・・・・・)にしてみたいっ――てね」


 レムも思春期だ。

 マイカが言っている言葉の意味くらいは分かる。分かるのだが……。


 仲間であるマイカが自分をそんな目で見ていた……。

 初めて知ったそんな事実に、気が動転してしまう。


 そんなレムを見て、マイカはこれみがよしに脚を組み替え、頬を染めながら嗜虐的な笑みを浮かべる。


 レイナとクルエルを同じような表情を浮かべている。

 マイカと違うのは、脚を擦り合わせて若干モジモジとしているところくらいであろうか……。


 そんな二人を見てレムは思い出す。


(あぁ……私達の(・・・)奴隷になれって言っていたっけ)


 と――


 つまり、そういう要求をしてくるのはマイカだけでなく、レイナとクルエルもということになるのだ。


 世間一般的に言えば、マイカだけでなくレイナとクルエルも美少女だ。

 十歳の時から思春期を迎えた今まで一緒にいた彼女たちを、異性として意識した事が無いと言えば嘘になる。


 ……が、それにしても、この言いようはあんまりだ。


 だが、マイカはレムの心境などお構いなしとばかりに、スッと脚を差し出してきた。

 短いスカートを履いてそんなことをするものだから、中が見えてしまいレムは気が気では無い。


 そんなレムの反応を見て、マイカ唇を更に釣り上げながらこう言った。


「ブーツを脱がせて足を舐めなさい? それが奴隷になった証よ」

「……」


 足を舐める……。

 屈辱的なその行為に、レムが従うかどうかで、彼が心から屈服するか試そうということらしい。


 レイナとクルエルは……。


「くくく……マイカったら大胆ねぇ」

「舐めちゃう? レムきゅん足なんか舐めちゃうの!? あはははっ!」


 と興奮した声をあげる。


 追い詰められた状況の中、レムが下した決断は……。


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