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死霊のわたわた

作者: 水無川 燐

 時は2045年。フリー記者の西九条カレンは、自分がどこを歩いているのかわからなくなり、すぐに道を引き返そうとした。

 しかしここは梅田地下街。ひとたび迷い込めば生粋の大阪っ子ですら二度と日の光を見ることはないとされている。「ちょっと地下の様子見てくる」と調査に赴いた府知事の遺体が先月地下57階で発見された事件は記憶に新しい。

 もとは田舎者を迷わせるための施設に過ぎなかった梅田地下街がこのような迷宮に変わったのは、ちょうど一年前のことだった。

 突如として地下街内部に濃厚な霧が発生し、その後死霊の姿まで目撃されるようになった。地下街が深層のダンジョンと変化したのもこの死霊達の仕業と噂されている。

 カレンはいつの間にか地下街の放送室に辿り着いていた。そして部屋の奥に青白い顔をした中年男性の姿を見つけて悲鳴をあげた。

「生きた人間に会えるとは…。頼む。力を貸してくれ」

「あなたはまさか…、府知事!?」

「地下街が迷宮と化したのは、ここに閉じ込められた死霊達が思い思いに動くためだ。死霊達の意志をひとつにまとめ、力を合わせて地下街を地上に押し上げるのだ。日の光を浴びれば死霊達は昇天することができるだろう」

 カレンはアナウンスボタンを押した。知事の声が地下街全体に響き始める。現役時代さながらの知事の演説を受け、死霊達は気持ちをひとつにして天を仰いだ。

 地下街が浮上を始める。そしてちょうどその時に、最高速度時速603キロ、日本の夢を乗せたリニアモーターカーが大阪駅に接近、地上に出現した梅田ダンジョンに激突したのだった。

 地下街の崩落、リニア破壊で大阪が背負った多額の負債。世間で「大阪は終わった」と囁かれる一方で、カレンは別の感想をもった。

 あの時破壊されたのは、大阪が抱えてきた忌まわしい部分の象徴ではなかったか。

 これから大阪の新しい時代が始まるのだ。

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