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「もう、これでいきましょ!!」
ちびっ子は興奮冷めないまま言った。
「な、なら頼む」
そう言うと、ちびっ子は両手を左右に振り、ホログラムの愛機をかき消す。すると、俺の中に何か入ってくる感覚がする。俺はそれを心地よく感じたので、何の抵抗もしなかった。
「これでよし! これで貴方が私たちの世界に来る準備は整ったわ」
ちびっ子はそう楽しげに言うと、急に表情を真面目なものに変えて言った。
「さて、これから貴方は私たちの世界に来る。すると、戦いの日々がやってくることになる。それでも、貴方は私たちの世界に来ることを望む?」
「その質問はもっと前にしておくべきものじゃないか?」
そう尋ねると、ちびっ子は「忘れてた」と舌をだした。
「どのみち、強制なんだろ。それに、」
俺はおもむろに立ち上がり、野太刀を抜き、その刃に自分の目を映す。そこには、楽しげな色を浮かべた瞳が映っていた。
「師匠が、俺の技術を活かせると言ったんだ」
そう言って野太刀を鞘に戻す。
「行かないわけがない」
ちびっ子は、満足そうな笑みを浮かべてうなずいた。
「なら、送りましょう。送った先で人が待っているはずです。その方たちには貴方のことを伝えてありますから。それでは、貴方の前途に幸多からんことを」
その言葉を最後に、視界に光が溢れた。
* * *
「行ったかの」
大男がいなくなった白い空間に、老人の声が響いた。
「急に出てこないでよ、『戦争屋』」
その声に、キンキン声が答える。小さな黄色のつなぎを着た声の主は振り返り、紺色の道着を着た小柄な白髪の老人を認めた。
「別に構わんじゃろ、『技術屋』」
そう言った老人はどこ吹く風と言った雰囲気だ。
「『羊飼い』から出歩く許可は貰ったの?」
「……もう、そういう時期じゃからの」
「……そう」
しばらく二人は黙り込む。
「にしても、貴方が推薦してくるなんて、珍しいこともあったのね。でも、今度からはちゃんと説明してよね」
「すまんすまん、何分初めてのことじゃから忘れとった」
キンキン声の主は思いついたようにいうと、老人は申し訳なさそうにする。
「それはそうと」
老人は、懐から小さな薄い箱を取り出しながら言う。
「おぬし、まさかと思うが、あやつのやっていたゲームに関係したスキル、あやつに授けておらんじゃろうな?」
「いや? そのゲームのロボットに変身するスキルをあげたよ」
「なんと!」
老人はしばらく黙り込み、キンキン声の主は何か悪いことを言ってしまったのか不安になりおろおろする。
「な、なんか悪いことした?」
「……とりあえず、これを読め」
そう言って老人は小さな薄い箱の中から小さな冊子を取り出し、キンキン声の主に渡す。
「えーっと、なになに」
~ ~ ~
・・・・・・・・・・・・この新型人型機動兵器『アーキテクト』は全長9メートルと旧式のものより大型化し、さらに空気抵抗を軽減するためのエネルギーバリアを搭載した結果、最高時速は1000キロメートルを超える・・・・・・・・・・・・
~ ~ ~
「あ、」
キンキン声の主はやってしまったという顔をした。