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 そう、問題はそこだった。ちびっ子は能力は1から10までで表されると言っていたにも関わらず、10以上あるものがいくつかある。これは、どういうことなのだろうか。

「まあ、簡単に言うと、神の領域に手をかけている、ってことね」

 そうちびっ子は死んだ魚のような目で言った。

「『神威殺し』はまだ良いとして、『概念殺し』は破壊神系の能力だし、一体どうなってるの……?」

 良く分からないが、どうなっているのかこいつも分かっていないらしい。

「とりあえず能力のことは棚に上げておいて、貴方が私の世界に来ることは決定事項よ。拒否権は無いわ」

 ちびっ子はそう疲れた声で言った。

「それは別に構わないのだが、何故なのか聞いても?」

「簡単に言うと、貴方が強すぎて、他の世界に放っておいたら何が起こるか分からないからよ」

 人を危険物みたいに言わないでほしいが、さっきからの話でなんとなく何かやばいことくらいは察した。ただ、これだけは言っておきたい。

「別に何か起こすつもりもないんだが」

「万が一があったら、私たちの世界にどんな影響が出るか知れたもんじゃないから、手元に置いておきたいだけよ。それに、面白そうだし」

「はあ」

 世界に影響とか、そんな大層な人物じゃないのだがなあ、と思うが、こいつが嘘を言っている気配はない。

「ともかく、これで貴方に与えるスキルがどんなものか決まったわ」

「それは楽しみだ」

 スキル――神の力。それがどんなものかとても気になっていたのだ。内心ワクワクしていると、ちびっ子は俺を指差して言った。

「それはね、『変身』よ」

「『変し……はい?」

 思わず聞き返してしまったことを許して欲しい。変身の意味は分かる。だが、それと俺の能力に何の繋がりもない。

「そう、『変身』。簡単に言うとね、貴方の能力を使わさないようにするためのスキルよ。変身している間は能力を十全に使えないし、そのくせ変身すればそこらの魔王くらいなら蹴散らせるようになるの。まあ、何に変身出来るかは本人の資質次第だけれど。それに、私が貴方にあげれるスキルがそれくらいしかないから、我慢して」

「貰うものだから文句はないが、つまり、俺が能力を使うことなく、魔王を倒せるようになる、と。勇者と戦うつもりもないから、それで十分だな」

「でしょでしょ。それじゃあ、何に変身出来るのか、見てみよー!」

 そうちびっ子が威勢よく言うと、目の前にまた蒼白く光る板が現れる。



   ~ ~ ~

 大和健太が変身可能なもの一覧


・炎の大精霊

 ありとあらゆる炎を司る存在。顕現したとき、半径1000km以内は焦土と化す。

・刃の化身

 切り裂くものの化身。顕現したとき、半径100km以内のあらゆる物体は細切れになる。

・死神

 死を司る神の一柱。顕現したとき、半径100km以内のあらゆる生命は死に絶える。

・ヨグ=ソトースの化身

 全にして一のものの化身。顕現したとき、半径100km以内のあらゆる存在は発狂する。

・想像

 自分で考えろ。*ただし強いものに限る。


   ~ ~ ~



「うわあああああああああああ!!」

 それを見たとき、ちびっ子は絶叫し、俺は絶句した。どれもこれもろくでもない。最後のものは救いかも知れないが、『ただし強いものに限る』がアバウトすぎて困る。それに、残念なことに強いものがろくでもないもの一つしか思いつかなかった。

「もうだめだ、おしまいだあ」

 ちびっ子は頭を抱えてしゃがみこんで震えてしまっている。俺はしゃがんでそいつの頭に手を置いて、こう言った。

「一応強いものを思いついたのだが、どうすれば良い?」

「あ、アンラ・マンユじゃないよね?」

「そもそもアンラ・マンユ自体知らないから安心しろ」

「そ、そう」

 ちびっ子は安心したのか、震えを止め、頭から手を離した。

「じゃあ、頭の中を覗かせてくれる?」

 頭の中を覗かれるのは嫌だが、口では説明できないしそうしないと話が進みそうになかった。

「……分かった」

 そう言ってうなずく。

「じゃあ、思いついたのを強く想像して。行くね」

 ちびっこがそう言うと、頭を得体の知れない不快感が一瞬襲う。するとすぐに、ちびっ子が

「何これカッコいい!」

 と叫んだ。

「そうだろう」

 と俺は自慢げに言った。格好良くて当然だ。思い浮かんだのは、俺が唯一やっているロボットゲームの愛機なのだから。

「『可視化』!」

 そうちびっ子が言うと、少し離れたところにホログラムのような形で俺の愛機が浮かび上がった。黒塗りの騎士甲冑のような外見に、右手に槍にも見えるアサルトライフルと左に小盾のような造詣のレーザーブレード。右の背に砲身が折りたたまれたレーザーキャノンを背負い、左肩に箱型のミサイルランチャーがくっついている。ゲーム中では中量二脚の規格に分類された機体。

「ナイトレイヴン。気に入ってくれたか?」

 そう尋ねると、ちびっ子ははしゃぎながら言った。

「それはもう! 金属で出来ている機械のくせにわざわざ非効率的な人型になっているところとかもうたまらないし、銀色が似合いそうな形なのに黒く染めているところとか反骨心剥き出しって感じで良いよね! それに精密機械の塊のレーザーキャノンを折りたたむとかいう発想! もうっ! もうっ、技術屋として最っ高!!」

「お、おう」

 ここまでハイテンションになられるとは思いもせず、内心引いた。

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