手にもつ紅茶がぬるくなる話
「それは……すごいな。ほとんど国じゃないか。こっちの世界、少なくとも日本にそんな学校はない」
孝太郎は驚きを隠さず素直な感想を述べた。
「ですから他国は大学校には手が出せないんですよ。各国へ最新魔法研究の成果を提供はしているんですけどそれも各国の魔法学校との協力でって形です。大学校出身ってだけで仕事には困りませんし地位も高いものをいただけるようです、ただし大学校から出て行くものはかなり少ないですが」
「…………」
孝太郎の手にもつ紅茶はだいぶ熱さを失っている。
「話が少しそれましたね、それでその異世界同士が接触できる魔法ですが、大学校は各国首脳に通知しました、詳しい内容は伏せてですが。そして同時にこうも伝えたようです
『この魔法による研究内容・成果はすべて大学校が保有し、またこの魔法およびその研究内容・成果の各国への協力は行わない』
と」
「それで他の国が納得は……」
紅茶を机へおいた。
「しないでしょうね。勿論反論の嵐ですよ。大学校へ普段は友好的な国でさえ苦言をしたんですから。それでも大学校は反対する国へ、他の魔法研究の協力無期限停止を盾にして反論をつっぱねました。結局、先の友好的な国の執り成しもあって異世界接触による成果を用いての他国への攻撃・侵略をしないことと、その成果を大学校の意見を最大限尊重しながら各国へ少ないながらも提供することで和解しましたが」
「なるほどね、ということはだ。サンドラさんは」
「大学校所属です。これでもなかなか成績優秀なんですよ。その結果この異世界交流担当責任者になれましたし」
顔も少し自慢げだ。
「そしてそのワタシのパートナー【異世界文化交流代表権利者】に伊藤孝太郎さんは選ばれました! 」
「【異世界文化交流代表権利者】……ね」
「そうです、ワタシとともにこのニッポンの文化を異世界へもたらす者、それにあなたは選ばれました! 」
笑顔でサンドラが答えた。
「ちなみに1つ質問いい? 」
口元に手を当てながら孝太郎は問う。
「……ワタシが答えられるのなら」
少し笑顔がくずれながら答えた。
「このパートナーの権利、辞退ってできる? 」
「……できます」
顔が少し曇りながら答えた。
「もう1ついいかな? 」
「どうぞ」
「サンドラさん、この権利を辞退されたことある? 」
「……あります」
顔を曇らせて答えた。
「じゃあさ、その辞退した人って何人いる? 」
「…………」
かなり顔を曇らせて、黙っている。
「……人数は? サンドラさん」
「………です」
「え? 」
「今までにワタシがこの話をして辞退された方は39人です……」
顔をうつむかせて、答えた