7、奴隷少女を書くということ
可愛い女の子を出したいなあ
「ねえ、奴隷少女ってどう思う?」
「なによ、藪から棒に」
「奴隷少女だよ、もちろん美人の」
「う~ん、高い値が付くってこと?」
「いやうん、そうかもしれないけどそうじゃなくてね」
「じゃあ、えっと、そうね、歴史上に散見される事実だけれども美しい奴隷は性のはけ口として利用されてきたんじゃないかしら」
「うん、そうだね」
「強そうな男は殺して、弱い女子供は生かして安い労働力にする、というのは鉄板でしょうね」
「ああ、うん、その現実での奴隷問題の是非はともかくとしてだね」
「フィクション、つまり私たちが書く小説の中での奴隷に関する話なわけ?」
「そうそう、僕が投稿してる小説サイトの話はしたっけ」
「ええ、少し見たわ」
「そこでのテンプレの一つに、奴隷少女を救ってヒロインにする、ってのがあってね」
「なるほど、そういうのが書きたいんだ」
「いやでもね、やっぱり真似るだけじゃダメだろ?ある程度話が進んでから足りない属性の子を入れるのがベストかなーとは思ってるんだけどさ」
「上松君、悪い事は言わないから辞めておいたほうが身のためよ」
「あ、やっぱり否定された、っていうか奴隷少女出す事自体ダメ?」
「素人が奴隷出したって薄っぺらいだけなんだから、上松君調べもしないでやる気だったでしょう……」
「え、何となく怪しい建物に奴隷商人がいて、そこで出会う、じゃダメ?」
「別にいいけど奴隷商人って何?闇医者みたいなもの?」
「そりゃあ奴隷を扱ってるから綺麗な仕事じゃないだろ?」
「上松君てバカなの?」
「え」
「奴隷ってのは時代背景やその国によるけど、つまりフィクションならその場所の設定次第だけど、人として扱っているにしろ物として扱っているにしろ、存在証明やら登録やらがされているはずよ」
「うん、それは大体そうなってるね」
「なんでその人は奴隷になったの?」
「うん、その辺の話は重くなるし難しいよね、両親が戦争で亡くなった、とかが多いのかな」
「つまり難民ね」
「難民?」
「その程度も考えてないようじゃ全然ダメね、やりなおし」
「そっか、両親がいないっていうだけの設定じゃダメなんだな」
「当たり前じゃないの、親戚とかが生きていたら養子になるとか、居住地の施設が生きてるなら孤児院に入るとかもアリなんだから、それこそ血縁者皆殺しにあったとか、施設に預けられた子供全員まるっと奴隷にされたとかさ」
「暗い!暗いよ!」
「もう一度言うけど当たり前じゃないの、脇役ならともかく、奴隷キャラをレギュラーメンバーにするなら、その国の奴隷制度の説明するとか、その人物が奴隷になった経緯の説明とかが必要なのよ」
「それは、ちゃんと設定凝らないとダメだね」
「さっきの話に戻るけど、戦争で勝ち取った捕虜にしろ、戦争や災害による難民にしろ、国なり何なりの大きい所が管理するものなので、奴隷屋みたいな民間企業に卸すのも含めて、綺麗な職業です」
「奴隷商売は国営だったのかー」
「いやまあ、そうとは限らないけどね、さっきの怪しい建物ってのを使うのだとしたら非公認の奴隷商って事にすればいいわ、基本人さらいとかして奴隷集めるみたいな?悪役にするならこっちがおすすめね」
「ほう、それなら使えるね」
「もちろんそんな仕事犯罪だし表立ってできるわけないし、別の仕事でカモフラージュしてるとか、伝手やコネがないとダメだとか、考える事は多いけどね……そもそもどこ向けの需要なのか分からないしそんな商売成立するのかしら、ってとこまでは考えなくていいか」
「お、おう、そうだな、やっぱり僕にはまだ早そうだ」
「もちろんそんな人物が悩みやトラウマを抱えていない訳がないので、解決するような話も織り込まなきゃね」
「そういうの考えるのは好きなんだ、とりあえずそういう設定を妄想するだけに留めておくよ……今はね」
「それがいいわね、あそうだ、最初の質問に答えてなかったわね」
「何だっけ」
「奴隷少女をどう思うか、だっけ」
「ああそうだ、そこから始めたんだった、奴隷少女は魔法の言葉じゃなかったんだなー」
「当たり前じゃないの、で、私の意見言ってもいいかしら」
「あ、はい、どうぞ」
「自分の言う事何でも聞いてくれて自分を立ててくれる可愛い女の子、っていうのが透けて見えて反吐が出るわ」
「……ごめんなさい」
「謝ることないのよ?」
「ごめんなさい」
はいごめんなさい。
お金がないから子供を奴隷商人に売る親、とかいう設定もあったなー、と思ったけど、その世界で人身売買がどういう位置付けなのかとか考えるとうわーってなるよね。




