4、固有名詞を考える
鬼ころし
鬼をも容易く両断すると言われる剛剣……う~ん刀っぽくないな、ボツかな
「ねえねえ竹中さん」
「何なの改まって」
「変幻自在剣の使い手ってどう思う」
「っぶ!」
「ぶ?」
「いや違う違う笑っちゃっただけ、なんなのそれ?」
「今度書く小説の登場人物が使う……流派?」
「何で疑問形なの」
「だって技じゃないしもっと大きなくくりで……型?やっぱり流派かなー」
「ふ~ん、それはどんなものなの?あーそれとも名前の印象を聞きたいの?」
「う~んと、まずは流派の内容として、その時その時に応じて即興で対応を変えられるような剣技って感じ、そこから変幻自在、としました」
「やっぱり異世界転生ものなのよね?真面目に見たらダサいとか難しい漢字の羅列で読みは横文字だとかそういうのは考えないようにする前提として……」
「お、おう……」
「内容からのネーミングとしては良いんじゃない、そのまま過ぎる感じはするけど、分かりやすさも大事よね、ちなみに他に候補はあったの?」
「あー、あんまり考えてなかったな、今思いつくとしたら、変幻を取って自在剣、あとは変則剣、幻惑剣、これはちょっと意味変わって来ちゃうな」
「まあその中だったら変幻自在剣ね、っていうか読みはへんげんじざいけんで良いのよね?」
「うん、最初は変幻自在剣と書いてエチュードと読ませようかと思ってたけど、ちょっとアレ過ぎるからね」
「中学二年生も真っ青のアレっぷりね、変幻自在剣はそのまま読ませた方が音も面白いし、良いと思うわよ」
「でしょ!変幻自在剣!って声に出してみると何かにやっとしちゃうよ」
「上松君のそういうところちょっと気持ち悪いわ」
「そういう事は思っていても言わない方が良いよ、相手が傷付く」
「あーうん、忠告ありがとう、でもそれ知ってる事だったわ」
「ソウデスカ、ソレハザンネンデス」
「今日はこれだけなの?」
「まあこれだけっちゃあこれだけなんだけど、ネーミングの話はもっと広げたい」
「あー、うん、いいけど」
「皆キャラとか土地とか武器とかの名前どうやって決めているんだろうか?」
「私ファンタジー物は専門外だから分からないわよ、読む事は読むけど」
「素材とか本当困る、異世界超便利素材魔法銀ミスリルでしょ、異世界超便利素材その二伝説の魔法金オリハルコンでしょ、ここまではいい」
「いいけどオリハルコンて魔法金でいいの?」
「ランクとかイメージ的に大体そんなもんでしょ、深く考えたら負けだ」
「あ、うん、まあいいか、でその先ね」
「そう、やっぱりインフレしてくると幻獣系素材が鉄板なのかなー、でもオリハルコン以上の物で全て構築された生物がそれ以下でしかない生物に負けたり身体の一部剥がれたりとか考えられないんだよね」
「そこでいわゆるチート能力の出番なんじゃないの?」
「う~ん、まあねー、でもやりすぎると興ざめなんだよな、最初からやれよって話になっちゃうし」
「よく使われるのは、チート持ちだけど争い事に積極的ではない性格付けをする事かしら、そういうレア素材で本気を出すみたいな」
「でも結局武装してハーレムメンバーも武装して、権力者にコネ作って内政チートまがいな事して世界中から一目置かれる人物になったりするんだろ?」
「上松君そういうの嫌いだっけ」
「嫌いじゃない」
「じゃあいいじゃないの」
「まあいいか」
「そうね」
「釈然としない」
「面倒臭い男ね、上松君って」
「それは今さらだ……と、そうそう、武器の名前は結構出来てきてるんだ、評価お願いします!」
「それはまた唐突な……でも何で私が?」
「提示したり例えばこうっていうのは僕の役目、コメントしたり評価するのは君の役目だ」
「いつから?」
「最初からかな」
「誰が……って、ああこれ、あれ書いてるのね?何だっけ、会話文形式のやつ」
「『小説を書く練習をする』だね」
「もう何か、いいわ、書くなとは言わないから、今度からはちゃんと一言言ってよね、こっちにも心の準備ってものがあるんだから」
「そういうの無い方が面白いんだけどな……」
「もう協力しないわよ?」
「あ、すいませんお願いします」
「仕方ないわね、武器の名前だっけ?じゃあ、どうぞ」
「箇条書きにするね」
「うん」
・月心
月のように煌めく曲刀 心の強さが刀に力を与えると言われる
・金浪
黄金に輝く小太刀 血を吸い、より光が増すと言われる
・韋駄天
オーソドックスな長刀 見た目とは裏腹に、その魔力で持ち主の速度を上げるという噂がある
・菊正宗
異世界に存在すると言われる花の紋が施された刀 素材は一般的に知られるものだが一級品である
・恋草
見る者を惑わすと言われる妖刀の脇差し
・鏡月
鏡の様に物を映すと言われる程美しい曲刀 一般の鍛冶技術での再現は不可能と言われている
「どうだろうか?」
「と、言われてもね」
「何かあるだろ?とりあえず方向性は変えるつもりは無いんだけどさ」
「じゃあ何も言う事ないじゃないの」
「うーむ……」
「まあ、ツッコんでもらいたいのはあれでしょ、お酒でしょ」
「あ、よく分かったね」
「未成年とはいえ、流石に最後のだけは知ってるからね、他も何かそれっぽいし」
「そうなんだよ、元ネタ何にしようかと考えてたら浮かんだんだよね」
「上松君そういう設定とか考えるのだけは好きだものね」
「そうそう、形に出来ないんだけどね、って大きなお世話じゃ!」
「ノリツッコミとは新しいわね」
「冷静すぎだろ……」
「まあでもこれって、良い練習にはなるかもね、設定を考える練習?」
「ん?何?ちょっと分かんない」
「……上松君はナチュラルにやってるから分からないのかもね」
「つまり、どういう事?僕にも分かるように説明プリーズ!」
「何なのよテンションおかしいんじゃない?えーっとね、自分ルールを作って、その縛りの中で物事を作るって感じ?説明が難しいわね」
「全くわからん」
「例えばね、さっきの上松君のはお酒の名前の剣、っていうくくりでしょ」
「正確に言えば刀だ」
「あ、そう、まあ何でもいいけど、そういうくくりを作って色々考えるのよ、あの説明書きみたいなやつ」
「あー、あの設定ね」
「うん、あの設定込みでもっと数を増やすの」
「難しいな、でもあれ、その刀を持ったキャラクターがどんな風に戦うかとか、どんな性格かとか考えるの楽しい」
「そうね、刀自体は名前からイメージしやすいから、漢字の名前はやり易いわね、本当は辛口甘口とか、アルコール度数が強さに関係してるとかだと……」
「おー!そこまでは考えてなかったよ!」
「でもやり過ぎると設定過多だし、調べるのも労力使うと考えると微妙かしらね、詳しい人なら良いのだけれど」
「あー、僕お酒詳しくないや厳しいかな」
「まあ名前だけ貰ってくるだけでも十分じゃないの、変える気ないんでしょ」
「ああ、うん」
「じゃあそのままで良いんじゃない、頑張って」
「おう、頑張る!」




