1、小説を書く練習をする
さて、始めようか
「と、いう事なんだよ竹中さん」
「……え、何どういう事わかんない」
「とりあえず話合わせて」
「つまり……どういうこと?」
「……」
「……」
「違うでしょ」
「いや分かんないわよ!説明無しでいきなり話し出すから分かる訳ないでしょ!」
「えー、急に怒らないでよ、なんなんだよ……」
「こっちの台詞!」
「ごめんなさい」
「分かればよろしい!」
「……」
「で、何なの?」
「何が?」
「は?最初に変な事言いだしたの上松君でしょ?」
「そうそれ!」
「は?」
「その自然さ待ってた!」
「何それホント意味分かんない」
「いやだから小説を書く練習だよ」
「それで?」
「今してる」
「私と話してるだけじゃない」
「あー、だから、これがそうなの」
「たまに上松君が何言ってるか分からない」
「とりあえず会話のみで構成された文章の練習だよ」
「うん、もう放っておこうかな」
「で、僕が現実世界視点でメタ発言とか出来ちゃう担当で、竹中さんが小説世界視点でこの世界観重視する担当ね」
「なにそれ勝手に担当決めないでよ」
「えーだってもう決まってたし」
「えーじゃないよ、私聞いてないし、誰が決めたの?」
「作者が」
「早速か!……まあいいわ、それで?」
「で、二人が会話しているって設定の小説って、実は僕結構好きでさ」
「あれってでも小説と呼んで良いのか微妙ではあるのよね、ライトノベルの枠にも入れるか怪しいレベルよ、まあ読みやすくはあるんだけど」
「そうなんだよねー、まあそれは棚の上に置いといて、実際自分で書いてみようかなって思って」
「そうなんだ、がんばってね」
「で、今やってる」
「私と話してるだけじゃない」
「ループ設定も嫌いじゃない」
「ごめん、私は無しだわ」
「じゃあ終ろう」
「そうね」
「はい、おしまい……とは行かないのだがー」
「何なのよもう!」
「まあだから竹中さんはそのままでいいよ、僕は僕の設定守るし、僕達はきっと、分かり合えない運命なんだ……」
「運命と書いて定めと読ませる的なあれなの」
「じゃあそれで」
「キャラがブレブレだよ」
「まあまだキャラなんて固まってないからね僕達、名前が上松と竹中って事くらいで、そうそうそれで最初に戻るんだけど」
「最初ってどの最初?」
「と、いう事なんだよ竹中さん、あたりかな」
「最初も最初じゃん!」
「そう、出だしでさ、名前出すのって難しいよね」
「うん……うん?」
「だってほら、現実世界では名前呼ぶ機会って少なくない?」
「少なくないわね」
「……話が終わってしまうよ……」
「だって私上松君の事は上松君って呼ぶし」
「あだ名とか、あんたとかって呼んでくれてもいいよ?」
「嫌よ気持ち悪い」
「その発言僕が傷付かないとでも思った?」
「どっちでもいいわね」
「ドSキャラか」
「は?」
「ごめんなさい」
「それで?どうして名前出すのが難しいの?」
「……うん、自分で自分の名前って言わないじゃない?」
「そうね」
「そうすると自然と誰かに呼んでもらう必要性が出てくる」
「まあ、そうなるか、でも割とそんな場面多いと思うけど」
「さっき君はなかなか呼んでくれなかった」
「そうだっけ」
「そうだよ、あそこは……どういう事なの上松君、とかって反応がベストかなー」
「それもちょっと無理やり感ない?」
「ん?う~んそうだな、そうかも、やっぱり難しいなあ、そう考えるとさっきのタイミングはかなり自然だったし良かったかも、僕の名前が出るのが遅いってのが少し不服ではあるけど」
「やっぱりさ、最初に主人公のキャラははっきり紹介しておくべきじゃない?」
「それは三人称視点の特権じゃないかな、途中で登場したキャラもその都度紹介出来るし」
「客観的に紹介出来るのは強みね、その点一人称は主人公キャラ視点でしか登場人物を語れないからね」
「そうだね」
「でも一人称でも主人公は自己紹介させる事で名前出せるじゃない」
「吾輩は猫である的な?」
「そうそれ」
「僕あれあんまり好きじゃないんだよね、あ、あの作品は素晴らしいと思いますはい、でもあれはさ、猫っていうインパクトもあるしさー」
「出だしからガツーンっと来るよね」
「主人公が他キャラに自己紹介する感じなら良いんだよ、でもほら、地の文で自己紹介書いてる作品って結構あるでしょ」
「そうだったかな、うん、まああるね」
「あれは誰に向けて言ってるの?」
「誰にって……読者に?」
「メタ要素が冒頭から入るって事になるんだが」
「それはほら、第三者視点的な……あれ?」
「そう、その作品は一人称視点であるにも係わらず読者を意識している、つまり主人公が読者を意識している事になる!」
「メタ要素のある作品ならまだしも、そう言われるとちょっと気になっちゃうわね」
「だから僕は、自然にキャラ紹介をしたいのだよ」
「それで名前なの?」
「まずは名前でしょ」
「性格とか生い立ちとか環境、境遇とかは……」
「これから考える」
「私達の関係は?」
「これから考える」
「え?」
「え、じゃあ男と女の関係?」
「性別は確定したけど、誤解を招く言い方やめてね」
「あれあれ?竹中さん何か顔赤くない?」
「……これは怒りだ」
「あ、はいごめんなさい」




