霊との恋愛信じてる?
突然だが、皆さんは霊感を持つ人・・・・・幽霊が見える人を羨ましいと思うだろうか?
ちなみに俺は見える側の人間だが・・・霊が見えて良かったと思った事は正直あんまり無い。
確かに霊が見えれば死んでしまった大事な人に会えるかもしれないが、幽霊を探すのは生きている人間を探す事より遥かに難しい上、もし成仏してしまっていては会う事は叶わない。あと、霊感があると霊に好かれるがこれもあまりメリットとは言えない、むしろデメリットだったりする。
どんなデメリットがあるのかって?例えば教室で授業を受けてる時、頭の上をほよほよと漂われでもしてみろ、気が散ってしょうがないぞ?
・・・・・・・今まさに俺がその状況に置かれている訳だが。
「へぇー、陽介くんって頭良いのねぇ!私先生が何言ってるのか全然分かんないよ。」
頭上から聞きなれた声が聞こえてくる。その辺漂ってるだけでうっとおしいのに話しかけてくるとかハエが愛おしく感じるウザさだな・・・・・
この人間サイズのハエこと愛川清子は一週間ほど前から俺に付きまとって・・・・・いや、憑きまとってくるようになった幽霊だ。
何故こんな奴に憑かれているのか・・・・・よく分からないが霊感の強い人間は霊を引き寄せやすいようで、霊からも自分の事が見える霊能力者の事は見るだけで分かるらしい。俺とこいつは生前接点など全く無いが、このハエ曰く実際成仏せず未練をこの世に残して留まってる霊なんてそんなにおらず、自分を認識してくれる者がいるとつい話しかけてしまうらしい。
・・・・・要は話し相手になって欲しくて懐かれた訳だ、迷惑極まりない。
「・・・・・・」
「陽介くん?聞こえてる?」
「・・・聞こえてるから話しかけないでください、先生の話が聞こえません。」
「ん?何?もっと大きな声で言ってくれないと聞こえないよ。」
こいつは俺を煽ってるのか?当たり前だがこの教室に俺以外霊感のある奴はいない。こいつのうるさい声は俺にしか聞こえないが俺の大きな声はクラスの全員に聞こえるわけだ。そんなことみんな言われなくても分かるだろうが俺の頭上にいる奴は一向に分かってくれない。
「陽介くん?どうしたのよさっきから黙って?もしかしてお腹痛いの?」
「・・・・・・・」
「大変!陽介くん、私が保健室まで連れてってあげるから。」
いらんお世話だ、大体触れもしないのにどうやって連れてく気だよ。
どうだろうかこの状況。皆さんはこんな状況に憧れているのだろうか?憧れている訳がない、こんなのに好かれてもなんにも楽しい事なんてない!
欲しい人がいたら引き取ってくれ!この愛川清子(享年83歳)を!!
いないとは思うが、俺が幽霊の女の子とのラブコメしているとか勘違いしてる人の為に言っておく。
俺、葉月陽介が憑き纏われている霊は女性であって女の「子」ではない。
愛川清子さんは俺の母親の倍は生きてた方で年上とか熟女とかいうレベルですらない、さすがに恋愛対象外だ。ちなみに、よく恋愛小説で幽霊と恋をする話はあるが、実際あんな話はありえない。
医療技術が発達した現在の日本で年頃の女の子が死んでしまう事は少なくなった上、仮に不幸な事故で亡くなったとしても生きてる男と恋愛やり直すほど余裕のある人はそうそういやしない。そういう余裕のある霊は大体が天寿を全うし、生前の内に死を覚悟した人。この世にやり残した事の無い、未練も何も無いような霊だ。
・・・・・おばあさんしかいないぞ?そもそもおばあさんだって恋愛しに来てる訳じゃないぞ?愛川さんだって死後の暇つぶしにちょっとお話しに来ただけだし。ただでさえ条件が厳しい上にそもそも霊感を持った奴がほぼいない以上、幽霊とのラブコメがスタートする確率なんて下手したら宝くじが当たる確率より低い。
これで分かっただろう、霊が見えたっていい事なんてあんまり無い。
あんまり無いが・・・・・
「陽介くん、今日は真っ直ぐ帰らないの?」
「用事があるんで・・・・・」
「ああ、そういえば今日陽介くん告白すんだったね、今の子ってどうやって告白するの?」
「どうって・・・普通にですよ・・・・・」
「あっはっは!普通か!そうか、そうだねぇ、普通でいいよ普通で!
凝った事しなくても、気持ち篭ってたら伝わるからねぇ。」
「・・・・・」
「じゃあ私は邪魔しない方がいいかな?」
「いや・・・・・別についてきてもらって結構です。」
「そう?それじゃあ見届けさせてもらうよ。」
「・・・お願いします。」
・・・・・勇気の足りない人には、あると少しはいいかもしれない。
短編とはいえこんな初心者の小説、目を通して頂いただけで有り難き幸せでございます。




