終始
「来ると思ってたよ」
僕を見るなり、ヴイバサはそう言った。
「ここはどこだか分かるかな? 絶対に知っている場所だよ」
周りは暗いが、すぐに駅構内だと分かった。
「後ろを見てみな。後ろ向いたからと言って殺しはしないよ」
恐る恐る振り向くと、鼓舞門から紫に近い黒の渦巻きが見えた。
「あれが僕のいる世界とこの世界を繋ぐゲートだよ。もうすぐ開く」
「そんなこと、させない」
右手から剣を出現させる。
「そうだろうね。でも、残念だけど、君とはまだ戦えない。まだ倒す相手がいるんじゃないのかな?」
ヴイバサは上に指を指す。頭上にはボスルーラーがいた。
「コイツを倒したとき、チイチと僕は戦うことになる。さ、倒せるなら倒してみな」
そして、また手をパンと叩くと、僕は飛ばされた。ボスルーラーの頭上に。
「千一くん、聞こえる? 今ボスルーラーの上にいるよ!」
「分かってるよ! どうすれば良い!?」
「待って! もうすぐ出来上がるから!」
レイは必死に下を見ながらキーボードのようなものを必死に打っている。
「急いでくれ! こいつ、いつ目を覚ますか分からないんだぞ!」
「分かってるよ!」
「うわっ!!」
ボスルーラーは目を覚まし、首が大きく動いた。落ちまいと必死にウロコに捕まる。
頭をあげたとき、僕の住んでいた町が一望できた。言葉を失った。
そこにあるのは町ではなく、ただの荒野だった。
しかし、ジッと見てみると、奥の方に建物のようなものが見えている。
「レイ、聞こえるか? 奥に建物みたいものが見えるんだけど」
「えっ、でも、千一くんの町はもう」
「見てみろって!」
どうやって見たのか分からないが、レイも驚いていた。
「嘘、壊されたのは、この周辺だけって言うこと・・・?」
「どういうことだよ」
「あの辺だけ、綺麗に何も壊されていないなんて、おかしいよ。千一くんならあの建物が見えているあの辺は何て言う町なのか分かるんじゃない?」
「あの辺はN市か? ここから五キロもないぞ」
「・・・・千一くん。もしかすると、だけど、壊されているのはこのK市だけなのかもしれない」
「えっ」
「五キロ先はまるで見えない壁があるみたいじゃない? 建物は壊されていなければ、報道のヘリコプターらしきものも見えている。やっぱりここだけ壊されているんじゃないのかな?」
「何でそんなこと、誰が・・・」
荒野になっている自分の町を見て唖然としていたときだった。
「・・・よしっ! 出来た! 私の最高のプログラム。今、千一くんに送るね」
すぐにそのプログラムとやらは送られてきた。タップしてみると、僕の前に出てきたのは。
「やっと会えたね。千一くん」
「レ、レイ・・・?」
僕の前には、画面越しでしか見たことのなかった001こと、レイがいた。
「これが地球の空気か。今は酷いけど」
「お、おい・・・レイ、なのか・・・?」
「ん? そうだよ。ま、説明は後にして、倒しちゃおうよ。ボスルーラー」
レイは僕の後ろに回り、僕の右手に自分の右手を重ねてきた。
すぐに巨大な刃が出てきて、ボスルーラーの首に直撃した。
悲鳴を上げる暇もなく、ボスルーラーの首は切り裂かれた。
「嘘・・・だろ?」
「嘘じゃないよ。千一くんと私の力を合わせたら、こんなの、簡単だよ」
「あ、あのさ」
話そうとしたとき、ゲートの前へと飛ばされる。
「へえ、君だったんだ。チイチに力を与えていたのは」
レイは何も言わなかった。
「でも、ゲートはもう開かれるよ。君たちの星は、もう僕のモノだ」
「ゲートは、開かないわ」
下を向いて黙っていたレイはニヤリと笑って、言った。
「ゲートは封鎖されている。いや、封鎖したって、言うべきかな?」
「・・・・何したんだ?」
「ゲートの裏を見せたのが、最大の失敗とだけ言っておこうかしらね」
ヴイバサとレイが何やら難しい会話をしている。僕はどうすれば良いのだろうか。
「へえ、面白いものがまた増えたな。気に入った。本当はこの星を戴こうと思ったけど、やっぱりやめるよ」
「どういうことだ」
「言葉の通りさ。でも、考えが変わっただけさ」
ヴイバサは右腕を上に掲げる。
「邪魔者二人を、消し去ってから戴くことにするよ」
そう言った直後、僕とレイはゲートの中へと吸い込まれた。
おわり
続きがありそうな終わり方にしましたが、一応バッドエンドにしておいただけです。
気が向いたら続編を書かせてもらいます。
約一年間ありがとうございました。