県庁へ
卯竜山から県庁まで歩けばかなりかかる。
自転車でもかなり時間がかかっていたのに、徒歩になると一時間近くはかかる。
それに戦闘が追加されると思うとざっと二時間はかかると考えるべきか。
「なあ、県庁行くには一度駅を通らないといけないんだけど、大丈夫か?」
「あー・・・そうだったね。うーん、どうしようか。千一くんは地元の人だから分かると思ったんだけど、どうかな?」
レイに言われた通り、駅を通らずに県庁へ行く方法を考える。
「・・・川沿いを通って行けば行けるな。ほら、東K駅からK駅に行くときに降りた線路あるだろ? あそこまで行って、少し進めば行けるはずだ」
「さっすが地元の人! じゃあ、川沿いを通って行きましょ」
そう言って、僕らは川沿いを通って行くことにした。
もちろん敵はいる。やつらに感情的にはならない。
「かわいそう」と言う概念は、完全に僕の中でなくなっていた。
斬って斬って斬りまくる。体液がかかっても動じずに斬り続ける。
何度か「ナイスファイト!」と聞こえてくるが、戦っている間は聞こえても理解しない。
K駅まで徒歩数分のところまで来た。
線路は崩壊しているので、瓦礫の上をよじ登って進んでいく。
あちこちで燃え盛る炎を気にも留めず、よじ登る。
チラリとK駅の方を見ると巨大なルーラーは鎮座していた。
それも今は無視して、ミニルーラーのいる県庁へ向かう。
県庁までここから大体三十分もあれば着く。
だが、それはルーラーに支配される前の話だ。今はそこまでかからないだろう。
車もいなければ人もいない世界だから。
建物はほぼ崩壊し、県庁だけ見えている。上にはミニルーラーらしき生き物もいる。
予想通り、走りつつも地球外生命体を倒していくとすぐに県庁前まで来た。
県庁前まで来たが、ある疑問が僕の脳に浮かぶ。
「なあ、人がいないのは分かるけど、何で地球外生命体もいないんだ?」
「それは分からないよ。もしかしたら、千一くんの力を恐れて近付かなくなったんじゃない?」
「そんなことはないだろ」
「敵がいないってのは良いことじゃない。早くあのミニルーラーを倒してしまおうよ」
そう言うので改めて上を見る。
「あのさ、あそこまでどうやって行けばいい?」
「そう来ると思ったよ。次はこのアプリを使ってみて」
レイが映っていた画面がホーム画面に変わり、新たなアプリがインストールされていた。
「何これ?」
「まあ、使ってみてよ。今回も運が良かったら一発で倒せるからさ!」
画面に映っているアプリに触れると、僕の前に小さな砲台が出てきた。
「え? 何だこれ? 大砲?」
「お、召喚成功してるね。じゃあ、これを上にいるミニルーラーに向かって撃ってみて」
彼女の言う通りに砲台を上に向けて、スコープに映るミニルーラーに向けて発射する。
ドカンと言う音と同時に僕は吹っ飛ばされた。
「いててて・・・何だ? 何が起きたんだ?」
頭上にいた巨体がなくなっていた。
「ついに、全部のミニルーラーを・・・! やったああ!!」
この喜びをレイと分かち合おうとスマートフォンを見ようとするが、スマートフォンがない。
きっと吹っ飛んだときにどこかへ飛ばされたのだろう。
瓦礫が散らばっている周りを探していると地面が急に暗くなりはじめた。
「うわあああっ!!」
上を見上げると、ミニルーラーが僕の頭上に羽根を広げて飛んでいた。
僕を見つけるとすぐに火球を吐き出してくる。
急いで携帯会社のビルがあった場所まで走る。しかし、ミニルーラーは空を飛んでいるので先に回られた。
「くっ、ここまでか・・・」
しかし、ミニルーラーは口を開けたまま動かなくなった。
しばらく経っても何もしてこないのでまた県庁前に戻り、スマートフォンを探す。
「千一くん! ここだよ!」
砲台の近くからレイの声がするので近付くと砲台のすぐ下に僕のスマートフォンがあった。
「このスマートフォンって呼ばれてる端末を絶対離さないで。これがないと私も所謂バリアってものを張れないから」
「ああ、分かったよ。じゃあミニルーラーを叩き斬って、駅へ向かおう!」
すぐに右手から剣を出現させ、ミニルーラーへと立ち向かう。
しかし、先程と全く様子が違う。口元が光っている。
「千一くん! あいつから高エネルギー反応が出てる! 近くに隠れて!」
咄嗟に見つけた地下道への入り口に僕は飛び込む。直後、轟音が聞こえた。
瓦礫と粉塵があたりを覆う。
しかし、僕の周りは半透明な球体に包まれていたので無傷だ。
「大丈夫? ケガはない?」
「・・・ああ、何とか無事。ありがとう。とにかく、外に出よう」
そう言って地上へ出てみると、あたりは何もなくなっていた。県庁すらなくなり、駅の反対方向を向くと海が見えた。
「これ・・・ミニルーラーがやったのか・・・?」
「そう、みたいだね」
「嘘、だろ・・・?」
これ以上自分の町が壊れて行くのを僕は見たくなかった。
赤く燃え盛る町を見ていられなかった。
ここから先、僕は何をしたのかはハッキリ覚えていない。
気が付くとミニルーラーの頭が僕の目の前にあった。
レイの情報だと、怒り狂った僕はミニルーラーに正面から突進し、あちこち滅多刺しにしていたそうだ。
ミニルーラーの返り血を浴びてもびくともせず、どちらが悪なのか、それすら分からなかったそうだ。
つづく
結構書いていると熱くなってしまい長くなりました。
残り二~三話で終わらせる予定ですので早めに次話を投稿します。