表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

卯竜山へ

目の前にある深野川大橋ふかのがわおおはしはすでに崩壊しているので、山から近い天龍橋てんりゅうはしを渡ろうと提案するがレイはそれを断る。

理由は単純で「何が起きるか分からないから」だそうだ。

そんなのは今の状況も同じだろう。

いつ、何が起きるのかは僕にもレイにも分からない。

「千一くん、川の水が少ない今がチャンスだよ。川を渡っていこう」

そう言うので元々あまり水量の多くない深野川を渡る。

普段もくるぶしくらいしか水が流れていないが、今は水たまりより少ない。

あちこちで火が燃え盛っているので、消火活動に使われたのだろう。皮肉なことにも先ほどまでいた場所にあったやぐらは火消しのために活用されていたらしい。

今は使われることもなく、ただの建造物になってしまっていたが。


川を渡り終えて、休憩所として使われていた緑地があった場所に着く。今は緑など一切なく、全て茶色になっている。

そこからミニルーラーのいる卯竜山うりゅうやままで徒歩十分もかからない。

もっとも、それは建物があったときの場合だが。

今は建物が倒壊しているので歩けば五分もかからないだろう。

「千一くん、今度は落ち着いてね? 私もちゃんとサポートするから」

「ああ、今回は大丈夫、だと思う」

「思うじゃダメなんだよ」

そうは言うものの、やはり自分の町を破壊した者どもは許せない。

いざ相手を前にすると自分を制御できなくなる。

卯竜山のふもとまでやってきた。上を見上げるとミニルーラーが木をなぎ倒して山の頂上へ上ったのであろう面影が窺える。

何故ならふもとからミニルーラーがはっきりと見えるからだ。

「千一くん、前回みたいに襲ってこないかもしれないけど、もしかすると襲ってくる可能性もあるから、気をつけてね」

「分かってる」

そうは言ったが、本当は何も分かっていない。あいつの首をぶった斬りたい。その考えしか頭にはなかった。

「まさか、また頭の中いっぱいになってる? 大丈夫、もっと私を信じて」

彼女はそう言うので、今回は彼女に頼ってみることにした。

坂道を数分歩くと、ミニルーラーの足元までやってきた。

すぐに右手から剣を出す。

「今回は私に任せて。さっき完成したプログラムを送るね」

そう言うと、僕の音楽機器が音を上げた。アイコンが増えていた。

「何だこれ」

「そのアプリを使ってみて」

アプリに触れてみると、右手に持っていた剣が光り出す。

「それは悪退アプリだよ。一度しか使えないけど、とにかくそれでミニルーラーを軽く突いてみて」

彼女の言われるがままにツンと小突いてみる。

悲鳴をあげる間もなく、ミニルーラーは跡形もなく消えてしまった。

「は?」

「うんうん。よく出来てる。やっぱり私の腕に狂いはない!」

画面にはドヤ顔をしているレイがいる。

「おい、あの化物はどこ行ったんだ!?」

「悪退のアプリだって言ったじゃない。名前の通り悪を退いたの。悪の塊で出来ているようなものだったんだし、存在自体がなくなったわけ」

驚いた。こんなすごいものを僕と話しながら作っていたなんて。

「・・・あのさ、こういうものすごいものはラスボスで使った方が良かったんじゃない?」

「そう言うわけにもいかないんだ。これが使えたのはさっき古城にいたミニルーラーを倒せたからなんだ。あいつのデータから作ったのが今のアプリだから」

「よく分からんけど、すごいな」

「まあね。じゃあ、次は最後の県庁にいるミニルーラーを倒しに行きましょ! もうひと頑張りだよ、千一くん!」


画面の中で笑顔を振りまく彼女を見て、僕はもう少し頑張ろうと思った。

彼女に信頼を寄せている自分にも、気付いていなかった。


つづく

二ヶ月ぶりの投稿です。

九月は多忙で書く暇がありませんでした。

この話もあと三話くらいで終わろうと思っています。


ちなみに登場する橋や山の名称はもじっています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ