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無限想歌  作者: blue birds
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keyB-2,3共通ー相対現在-lマイク&シロ&久遠峯岸ペア

 さて、相対現在でのお話です。

 

keyB-2,3共通ー相対現在-マイク&シロ&久遠峯岸ペア




「とりあえずゲート閉じるの一択だろうが、ぼけ」

ーーーこの言葉が頭に響いた瞬間、私の腹は決まった。




「シロさん、その方にはお引き取りいただいて結構です。

やはり、翁をあちら側に送るのが最善手のようですね」




 騒ぐ猫を前にオロオロするだけの魔術師。

 そして、こちらの依頼を受けるそぶりすらない、猫もどきの寄生体。

 そんな二人に任せていては、いつまでたっても埒は空かないだろう。




 だいたい、この猫にはいくらでも対価は払うと言ったのだ。

 我が一族と燈火の家がもつ力も伝え、それで恩に報いるとまで言った。

 ゲッシュを交わしてもいいとまで言った。



 ーーーそれでダメならば、私は翁を使役するしか無い。まぁ、その場合にも、私は移動魔法なんて使えないので、そこはシロさんには協力してもらわなければならないがーーー猫は必要ない。




 ……そう、猫は必要ない。代わりに、翁が必要になる。

 けれど、実際問題として、翁を使役するのには、かなりの制限がある。

 今回の使役に至っては、その制限をほぼ無視することになるだろう。




 きっと、その対価は途方も無いもので、払いきれる自信はない。

 でも、きっとどうにかなる。そう、いざとなれば、「命」をもってすればーーー




「って、なにしてるの!?」




 叫ぶシロさんと、「じゃますんな」と冷淡に返す猫。

 猫は、シロさんが差し出している機械ーーー門の検出器に手(前足)をのばしていた。

 猫の手から逃げるように、シロさんは機械を持ち上げる。




「なにを、なさっているのでしょうか?

もう、お引き取りいただいて結構です。独力で帰れないというなら、シロさんの身が空くまで待っていただけませんか?彼女には、やってもらわなければならないことがあるんです。

 さて、シロさん。では、次の段取り……」



「ざけんじゃねぇぞ、女。

こんなもん放置して帰れるかよ。悪いが、ゲートは閉じさせてもらう。

お友達とは、お別れだよ」







 一歩進みでて威嚇する私を、猫はものともしない。

 それどころか、私たちの邪魔立てをする気らしい。





「ちょっと!そんなの!なんで、そうなるの!?」





 猫の言葉に必死に食らいつく、燈火。

 燈火は根が真面目で優しいから、こんなやつの戯れ言にもつきあう。

 けれど、そんなことは、本来、必要ない。



「なんでもくそもねぇよ。おまえ、馬鹿か?

この穴は、爆弾みたいなもんだ。それも、次元丸ごと吹き飛ばしちまうような、特大のな。

んで、その爆弾には解除装置がついてる。それも、ボタン一個押すだけって代物がな?」



 ……猫が言う解除ボタンとは、おそらく、あの装置だろう。

 シロさんが持つ、ゲート探索装置。あれに、門の接続をいじれる機能もついているとしたら。



「燈火、もういいよ。

時間がないんだから。さあ、シロさん始めましょう。

当初の予定通り、私が翁を励起するから、シロさんは転送をお願い」



 さて、翁を喚ぶには私の生気(血にたくさん入ってる)がいるから、何か切るものは無いかとーーーあった、ハサミ。包帯を切るやつか。ちょっと大きいけど、仕方ない。

 さて、切るものは見つかった。これで然るべきところをザックリとやれば、それなりの血が取れるはず。量にもよるけど、喚ぶだけなら、十分な量にはなるはずだし。




「栞、それは駄目だって言ったでしょう!」

「久遠さん、落ち着いてください!」

「おお、やれやれ。その間にゲート閉じるからよ」




 最初の静止の声は燈火で、次のがシロさん。

 そして、最後のが。




「いい加減にして。今のところだけれど、ゲート先からの情報流入で世界改変は起こってない。

それは、学園の結界が機能しているからでしょう?そうでしょう、シロさん?」




 ハサミを持った私の問いに、コクコクと頷く魔術師。

 目線は、ハサミに釘付けだ。




「だからって、つなギッパでいいってことは無いな。

それに、翁って何だ?そいつを向こうに送って浸透圧が変異しない保証でもあんのかよ?」



 猫は、猫にあるまじき視線で私を射抜く。

 彼の言っている意味は分からないが、意図は伝わってくる。




「ないけれど? それが、なに?

ちなみに、私霊視能力者なの。あなたの本体が魂だけの存在なら、霊と変わらないのよね?

その体、ぐちゃぐちゃにしたらあなたの本体が出てくるのかしら。

そしたら、出てきたあなたをペットできるのかしらね?

言っている意味、分かる?」





 すっと、目を細める。

 遡行視ができなくなっても、私は霊視能力者。

 時の精霊ですら使役する私が、そのへんの寄生虫に遅れをとる道理は無い。





「はっ!補強術式かけなきゃ視えん三下が吠えるな。

まじで薄気味悪いんだよ、その「メガネ」。 コッチ視んな」




 ……なんと?

 今、彼は何と言った?





「ちょっと、なんのこと?

栞は眼鏡なんてかけてないわよ」



 冷静に突っ込む、燈火。

 そう、私は眼鏡なんてかけてない。

 少なくとも、燈火が視認できるような眼鏡は。



 なのに。





「は? てめぇも同じもんぶら下げてるじゃねぇか。

何言ってんだ? お前はそれかけてても見えんのか? あ?」





 猫の、言っている意味が分からない。

 



 ふと、シロさんに視線を向ける。



 すると、彼女は不思議そうな顔でこちらを見つめていた。

 そして、「お二人のそれは、じゃあ、なんなんですか?」と。





 私は、彼女の瞳を覗き込んだ。

 シロさんのきれいな、ブルーサファイアの瞳を。

 彼女の大きな瞳は、私が映っている。よく目をこらせば、その鏡に映った、私の顔に……!




「っつ! こ、れ、は!」






 私は、彼女の瞳の中で、どす黒いもやを視た。

 それは私の両眼にべたりと、はりついている。

 




 即座に、言葉を紡いだ。

 その言の葉には、浄化の念を込める。対象は、私だ。

 ーーー呪が完成する。同時に、私を覆っていたもやが晴れた。

 そして。




 声が、聞こえた。





『視たいものをみせてくれてありがとう、栞。

お礼に、私もあなたにいいものみせてあげる!』





 思い浮かぶは、羞恥と後悔。

 今更ながら、私は何をやっていた?



 今日一日、私は何を視ていた?




「燈火、こっちを向いて!」





 自責に念に駆られながら、私は祝詞を紡ぐ。

 今の私ならーーー見えた。燈火にかかる、薄気味悪い霧が。そこからは、あの念の気配が漏れ題している。





「っく!」





 悔しさで、祝詞を止めそうになる。

 私は今日一日、何も視ていなかったと思い知らされたのだ。

 いや、視たいものをみせられていた。



 全てがうまくいって、私たちが無事に学園に帰れるというーーーそんな、風景を。

 そんな世界を、私はあろうことか、あの念に!!!




「あぁあ……」




 もやが晴れると同時に、燈火も思い至ったようだ。

 私と燈火が、彼に選択をせかすために、一日前の航空便を手配してーーー渡していたことを。



 もし、彼が私たちの意図道理に動いたのなら、彼は今日一日私たちと行動なんかしない。

 百歩譲って彼が昨晩帰らなかったとしても、私たちは、そのことを「疑うべき」だった。それは、「念」の姿が彼の周りに無かったとしてもだ。


 本来なら、浮かんでしかるべきだった。なのに。

 それなのに、今の今まで、私たちには、その選択肢が「浮かんですらいなかった」のだ。





「翁!ワレ、久遠を紡ぎしーーー」





 いろんな感情がぐちゃぐちゃに混じり合い、私は手首にハサミを向ける。

 もはや、一刻の猶予も許されない。でなけば、この次元の向こうで、燈火の大切な人たちが!




「やめて、栞!」

「ちょっと!」

「なんだ!?」




 私のとっさの行動に、三者三様のリアクション。

 燈火は私の手首に手をかけ、シロさんは私を押さえつけようと羽交い締めにする。

 


 猫は、そんな私たちを視て「つき合ってられん」とあきれ顔だ。そして、私を止めるためにシロさんに放り出したされた機械に歩みを進める。






「「「あ!」」」





 猫を除く全員が、息をのんだ瞬間だった。

 猫だけが、「やれやれ」と息を吐いた瞬間だった。









『あアアあああアアアああああああアアアああああああdjafdjalkfa!!!!!!!!!!!!!!!』







 上空から、叩き付けられるように何かが降り注いだ。

 それは、誰かの心だった。引き裂かれることに身をもだえる、だれかの、心の叫びだった。






「今のって、まさか……」





 燈火が、顔を真っ青にしている。

 そして、おそらく私も。


 最悪の場合、今の叫びは。いや、最悪ではなく、どう考えても……





「シロ。俺を向こうに送れ。

今すぐにだ」






 

 状況は、劇的に動く。

 私たちの理解を待たずして、置いてけぼりにする。




「え? でも……」

「いいから送れ! 速く!」







 視線を猫に向ける。彼はゲートを睨みつけていた。

 彼の目に宿るのはーーー殺意。そして、それは彼の器に収まりきらないらしく、外に漏れだしーーー私たちを、圧迫する。



 今まで私が感じたことの無いほどの、圧倒的なプレッシャーだ。

 そんな殺意を体から零しながら、彼は、こう、つぶやいた。



















「見つけたぞ」ーーーーーーと。

 

 







 

 さて、次回以降は基本的に過去でのお話のみになります!

 

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