keyB-2,3共通:存在確率0%:断罪のとき:伊吹由香&寿小羽(黒)
あとすこしで、物語が終わります。
TiPs~32番目の物語
猫とネズミが、ちぐはぐなワルツを踊っていた。
サルと犬とが、笑みを浮かべて談笑していた。
過去と未来とが、生まれたばかりの「今」を愛おしそうに抱き上げていた。
怠け者のキリギリスが、病気のアリに変わって仕事に出かけていた。
運命を受け入れた少女が、運命に立ち向かう青年を支えていた。
答えなき問いが、問いである答えとして、滅び行く世界に微笑みかけていた。
未来より飛来したロボが、過去を救おうと奔走していた。
神から愛された少年は、彼自身は神を愛することなく、神の愛するモノを愛そうとしていた。
闇が、光を静かに招き入れた。
光は、闇にほんの少しの温もりを手渡した。
ーーーーーーーーーーなぜ。
なぜ、それが成される?なぜ、猫とネズミがワルツを?なぜ、サルと犬が談笑などを?
過去は未来を否定するのではないのか。怠け者のキリギリスは、どこまでいっても怠けもでしかないはずなのに。
受け入れるなら、なぜ立ち向かう?
自己矛盾を抱えるモノが、どのツラで世界に微笑む?
未来を救えぬ機械が、過去を変えるなど冒涜である。
神より愛されし少年も、同罪だ。
相克する闇が光を受け入れるなど、あってはならないーーーーあってはならぬのに、なぜ。
なぜ、彼らはーーー?
keyB-2,3共通:存在確率0%:断罪のとき:寿小羽
黒蛇を使えば女をいたぶることなど、容易かった。
手始めに、腕をへし折ってやった。
次いで、あばらも。
その次には足をへし折り、空中へ放り出す。
「がっ!」
四足のうち、その半分が使えなくなっているため、女は受け身すらとれない。
部様にも地面に叩き付けられ、咳き込んでいる。
けれど。
「ご安心ください、ねぇさま。
すぐには、終わらせませぬ故」
けれど、これだけでは終わらせられない。
わたしは、女が「復元」するのを待つ。
私と女は今や、魂だけの存在だ。
この状態の私たちに、「死」という概念は無い。どれだけ破壊されようとも、けっして、死ぬことだけは無い。けれど、それは何も感じないというわけではない。腕を切り裂かれれば線のような痛みが走るし、打撃を加えれば鈍い痛みにその身を沈めることになる。
しかし、ある一線を越えると、体は元の状態に復元される。
老いにしても、傷にしても、復元され、いやされてしまう。そう、この、記憶というーーーーもっとも忌わしき傷を除いては。
故に、不死。
故に、永遠。
故に、救われぬ。
「覚えておいでですか、ねぇさま?
私たちが、初めてお会いした日のことを。
ねぇ様が初めて我が一族の城をお訪ねになった、あの日のことを・・・・・・」
小刻みに震える女を見下ろし、私は問うた。
しかし、女は答えない。ぜぇぜぇと荒い息をあげながらーーー
「迎えにきて下さいましたよね。迷子になっていた、私を。
……あのときの私は、兄さまが誰とも知れない人に取られるのが嫌で嫌で仕方なくて。
一国の姫である私は、あなたをお迎えする立場であったにもかかわらず、その責を投げ捨てて城を抜け出し、果てには、迷子に。
ふふふ、本当に愚かですよね。姫として、失格です。普通なら、勘当ものです。実際、婆やからはこっぴどくしかられました。
……でも、そんな愚かな私をねぇ様は迎えに来てくださり、そしてーーーあのときの笑顔、今でも色鮮やかに思い出すことができます」
腕と足の復元は案外すんなりと終わっていた。
けれど、胴体の方がまだらしい。
「目をつむれば、色鮮やかによみがえります。
あの日の、ねぇ様の微笑みを。あの日の、ねぇ様の言葉を。
……わたしはあの日を境に、姫になろうと決意しましたのですよ?
一国の姫として、恥ずかしくないようなーーーあなたを、ねぇさまと、胸を張って呼べるように!!!!」
胴体の復元を待たずして、女の足をつかみあげた。
そのまま天高く女をかざし、地面に叩き付ける。
「愚かだった!愚かだった!
ただ一度の優しさにすがりつき!
かけられた甘い声色に身を委ね!」
幾度となく地面に叩き付け、さらには女を再び放り投げる。
女は、地面をなでるように滑りながら、再び停止したーーー意識は、失っていない。
「世の理不尽より守られていた私は、気づかなかった!
お前が、女ギツネの類いであったことに!お前が、間諜として兄さまに近づいていたことに!!!!」
間髪入れず、私は黒蛇にて打撃を叩き込む。
カハッと息を漏らすように、女はうめいた。
「影で笑っていたのであろう!さぞかし愉快であったろうな!
父様も母様も、兄さまも!私も!婆も!民も!皆、お前を信じていたのに!
そのすべてを裏切り、そして!」
女を天に掲げ、視線を城下に固定する。女の目には、この地獄が映っているはずだ。
今なお、延々と悲鳴と炎があがり続けている、その、地獄の様が!
「これが、お前の罪だ。あの悲鳴と怨嗟の声を聞け!
あの、炎よりあぶれる民の姿をその目に焼き付けろ!そして、知れ!この痛みが、おまえの、罪だと!
民の苦しみに変えることは到底叶わぬが、それでも!」
声が、聞こえる。
ツミを償わせろという、声が。
そして、こうも、告げる。
もうすぐ、始まりのときがくると。
あの、ときが。
私がーーーこの、私の始まりが!
「ツミは、償われなければ。そして、そのときはきた。
繰り返す命は、貴様のツミ忘れなどしなかったのだ!どれほどの時が過ぎようとも、そなたのツミはソナタに帰る!
ふふふ、今代のお前は今、何をしているのであろうな?いずれ来るこのときを知らず、愚かにも今のこのときを生きているのだろう!笑っているのであろう!
さあ、ともに視るとするか!遥かなる未来にて、自身のツミが問われることを露程も知らぬ、愚かなる、きさまの、姿をな!」
女を逆さ吊りにし、目線をあわせる。
女は苦しそうに口をぱくぱくさせるばかりで、もはや言葉すら失ったらしい。
しかしそれは、断罪の痛みによるものだ。
この女は、自身のツミを知らぬ。私を通してしか、感じておらぬ。
ならばそう、見せてやろう。己が姿を。己の、愚かで卑しい、真の、根源たる魂の姿をーーー
次回、因果が歪曲します。
大きな因果と、小さな因果。
いずれにせよ、小羽ちゃんが背負うには重すぎます。
けれど、だれかが背負わなければ。
それはつまり、張り巡らせた因果のどこに、ツミを見いだすのかーーーという、ことです。




