keyB-2,3共通:歪曲する因果4:迷走する想い8:久遠&峰岸&東&小羽(黒)
空港です!
そして、学園に!
keyB-2,3共通:歪曲する因果4:迷走する想い8:存在確率10%:久遠&峰岸
長いようで短い旅だったと、私ーーー久遠栞は、思う。
けれどついに、修学旅行も終わりを迎えた。
今朝方からどたばたと私たちは身支度をし、ついで最後の晩餐とばかりに半日の観光を終え、さきほどこのエアポートに到着したばかりだ。時刻は、16時45分を指している。
ここまでの道が多少混んでいたとはいえ、ギリギリだ。
私たちの乗る飛行機は学園に直帰する大型の旅客機で、すでに離陸30分前となっている。
慌てる必要は無いが、のんびりもしていられない。
けれど、瀬戸に関しては「にしても、かえりたくな〜い!ねぇ、峰岸、なんとかならない!?」などと騒ぎながら、いっこうにトランクに座ったまま動こうとしない。
……瀬戸にとっては、今回の旅行は楽しいものだったのだろう。
でも、私や燈火にしてみれば、本当に疲れるだけの三日間だった気がする。
「ほんとうに、あの娘はいないの?ほんとうに、大丈夫?」
現に、燈火は今も東君を気遣いつつ、神経をすり減らし続けている。
この憂鬱な状態は、学園にもどり彼と伊吹先輩二人の笑顔をみるまでは、延々とはれることは無いだろう。
「大丈夫だよ、燈火。彼は、今一人。今日一日ずっと彼を見てたけれど、念の影は無かった。
ぜったいに、大丈夫だよ」
燈火の不安を少しでもはらそうと、私は燈火に笑いかけた。
絶対に大丈夫ーーーなんてことはふたを開けてみなければ分からないが、けれど、すくなくとも私の霊視にかの念の姿は無い。
ただ、不安材料もある。
昨晩、彼の帰りが遅かったことはホテルの受付から報告は受けているものだ。しかし、遡行視で確認もしてみたが、彼は自らの意思で踏みとどまり、檻の扉を開けること無くきびすを返していた……でも、それだと、彼の帰宅時間が遅かった理由が分からない。
彼が一人で帰ることを決断したのは、「私たちが別れた、あの河原」だった。
そこから旅館までは、どんなにゆっくり歩いたって、三時間なんてかかるはずもない。でも、彼はそれだけの時間を要し、旅館まで帰宅していた。
……それでも、念は今も檻の中のはず。
「でもね、栞。でもさ……」
私が大丈夫だというにもかかわらず、燈火の不安は拭いきれない。
それも、そうか。なぜか、先ほどから私たちを威嚇するようにーーーいや、私たちから何かを守るように、東君は後ろ手を引いていた。
どうかすれば、彼の後ろに「念」の影がちらつくようだ。
けれど、霊視には何も引っかからない。それが、現実。
「たぶん、私たちが過敏になってるだけ。
大丈夫だよ、燈火。ぜったいに、大丈夫だから……ね?」
飛行機に遅れるよといいながら、私は燈火の手を引いた。
コロコロと間の抜けた音が、忙しないロビーに嫌に響き渡る。
雑多な音は、あるふれかえっているというのに。
それなのに、自分の息づかいが煩わしいほどうるさく感じる。
「大丈夫。遡行視にも、現在視にも、なにも映らなかった。
だったら、大丈夫なはず。ぜったいに、大丈夫なはず!」
わき上がる不安を拭うように、私は歩幅を大きくした。
そして、チケットを渡し、飛行機に乗り込む。これで、この物語は終わるのだと、そう、自分にいい聞かせながら。
※
keyB-2,3共通:運命の足音:存在確率臨界突破(存在強度概算--%):東利也
ついに、修学旅行は終わったーーーていうのは、学園についてから感じた。
この学校、ハイスペックすぎて、自前で空港設備を用している。
だから、飛行機に乗って一時間もしないうちに、まさかの学園着となるわけだ。
「にしても、あいつら何もしてこなかったな。
いや、別に何も無いならないでよかったんだけれど」
俺は、隣を歩く馬鹿ガキを見下ろしながら、何とはなしにつぶやいた。
……とはいっても、横目でちら見するくらい。だって、こいつに「今日の私は、「いない者」として扱ってください」なんて頼まれてるからな。あと、「旅行最後のときを楽しんでください」とも。事実、今日一日ほとんど俺のそばにいなかった。
こいつが言うには、昨日一昨日と俺を引っ張りまわしたことを反省しているらしい。
だからというか、それでそれまでの時間が取り戻せる訳はないけれど、最後くらいは友人達と楽しんでほしいとのことだった。それには、自分は邪魔だろうと。
だから、今日一日は離れたところから、俺についてくると。そして、自分がそんな風に身を引くからこそ、今日の半日で昨日一昨日の分までの、友人との時間を取り戻してほしいと。
だからだから、絶対に今日一日は、自分を相手にするなーーーーーとも。
「おかげで、楽しめたよ。ほんっとうに、最後の最後だけ……だったけどな」
軽い冗談を込めて、皮肉ってみた。そしたらーーーマジで、しゅんと項垂れて、「ごめんなさい」とか言い出す始末。
……こいつ、本当に昨日までのあいつか?なんて、勘ぐりたくなる。
……てか、もうしゃべりかけてもいいらしいな。なんか、空港でしゃべりかけたら、「学園に帰るまでが旅行です!」なんて理不尽な切れかたされたんだが。
あと、「最後の最後まで、友達との時間を大切にしろ」とまで、言われた。なに、それ。おれ、今日で死ぬ訳って感じだ?
「いや、べつに、そんなつもりじゃないんだけどな……」
俺も、自分から皮肉った手前、なんか謝りづらい。
しかし、今日のこいつはーーー正確には、寺から連れ出してからのこいつは、やけに愁傷なんだよな。
ほんとうに、どうしちまったんだろうな。
(まぁ、でも、目の焦点があってないとか意味も無くニヤニヤし始めたとかいうよりは、百倍ましなんだろうけど)
栞に押し入れに閉じ込められたのが効いたのか、本当に、やけに大人しい……それはそれで、今日は助かったんだけどな。
……それに。
それに、なにより、今日栞は、俺に何も言ってこなかった。
あいつを連れ帰ったことについて、何も。それは峰岸も同じで、二人とも、その話題について、何も触れないんだよな。
というか、峰岸なんかは、俺を気遣ってるように見えた。
三人が三人とも昨日のことには触れなかったけれど、それでも、やはりお互いに感じるとこはある。
(栞は何も言わないし、峰岸も……
なんでだ?もう、問題はなくなったのか?)
答えの無い思考は、ぐるぐると頭の中を回る。けれど、こたえはやはり、出ないまま。
簡単なのは栞達に直接聞くことなんだろうが、それはさすがに、できなかった。
だって、昨日の今日で、さすがに……
「利也ー!!!
おーい、こっちこっち!!!」
声が、聞こえた。人ごみでごった返す中、手をブンブン振りながら、由香が近づいてくる。
俺たちの距離は、10メートルくらい。俺は別段足を速めること無く、由香へと歩みを進める。
そして、二人の距離はものの数秒で、詰められた。
そして、「お帰り」と。短く、由香は笑った。
そして、「小羽ちゃんは?」と、やはり、短く問う。
「ああ、こいつ。こいつが、寿小羽ーーーなんだけど、あれ?」
それまでおれの少し後ろをついてきていたはずのガキンチョが、いなくなっていた。
キョロキョロとあたりを見渡すと、すぐに見つかった。あいつは由香の声が届いたあたりから、まったく動いていないようだ。
俯いたまま、まったく動こうとしない。
「・・・・・・すまん、由香。少し待っててくれ。
なんだか、様子が……」
俺は由香をかばうように、体を右にずらした。今にして思えば、それは本能的なものだったんだろう。
……そして、あいつの様子を確認しようと一歩を踏み出そうとしたときだ。
あいつが、顔を上げた。
そこには、それまでのかわいらしい笑顔は無く、壮絶なるーーー夜叉の、笑み。
瞳の瞳孔は極限まで縮小し、どうかすれば白目を剥いて笑っているように見える。
そんなふうに、豹変したあいつは。
「ときはきた。汝がツミwo、つ愚ナe,オンナ」とーーーーーー
※
KeyB-2,3共通:悪意となる憎悪2:存在確率10%:寿小羽(黒)
声が、聞こえた。
あの、声が。
それは、時の声だった。運命の、足音だった。
笑みが、こぼれた。
力が、わき上がった。
私は、かった。にいさまにも、栞にも。
あのオンナの見方をする運命に、ことごとく。
もはや、黒煙はわたしの意のまま。
栞の目だって、曇らせられる。にいさまの目だって、曇らせられる。
そして、世界の目だって、同じこと。
「ときはきた。汝がツミwo、つ愚ナe,オンナ」
言葉にならない呪詛で、世界と、オンナを呪う。
呪詛に呼応して、誰かが声を上げた。
いや、皆が声を上げた。
扉が、開く。うんめいの、扉が。
この、忌々しい運命は、あの時に帰る。あの、始まりのときに。
そこで、終わらせる。始まった場所で、終わらせる。
あのオンナのツミも。兄さまと私の乖離も。
あの、始まりの時にてーーーーー
※
gold gate-存在確率0%
時間軸の錯綜を確認。
アカシックレコードの修正地点が出現。
銀の弾丸候補、及びその配偶者。ならびに憎悪の転移を確認。
転移先は、過去方向の同世界αーーー転移本体は、β因子のみ。
直接干渉値は最小です。しかし、改変は不可避。
物語の決着がつき次第、世界の再構築を始めます。
次からやっと、物語の主軸に入りまする。