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無限想歌  作者: blue birds
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夢想歌:占いの館へ6:広がる波紋

皆さん(読んでくれてる人)、幽霊のこと覚えてます?

夢想歌:占いの館へ6:広がる波紋





 その音が響き渡ったのは、時計の針(ロレックス!)が10時35分をさした瞬間だった。


「ブブブブブブブブブブブブブブ!!!!!!!!!!」



 ガタンゴトンと豪快な音を立てて走る電車の中にあっても、そこそこ聞こえるくらいには、でかく煩わしい音だった。


 最初、いったい何の音かと周りを見渡したのだが、近くにそんな音源は無し。

 代わりに、すぐに自分の携帯がマナーモードでぶるぶる震えている事に気づいた。




 何気なく、俺は携帯を取り出した。すると、俺に続くようになぜか東と峰岸を除いた全員が、自分の携帯を次々と取り出しはじめたのだ。



(???)



 見ると、全員の携帯が震えている。どうやら、このブブブという音は俺たちの携帯の振動がハモッて奏でられているらしい。



(いったい、なんだ? てか、これ全部メールじゃん)




 音を止めるために開いた携帯が示すのは、「メール着信」の旨。こうして携帯を開いている間も、次々とメールが届き続けている。着信と見間違うくらいに届き続ける、メールの波。


 それらの差出人は、多種多様だった。先輩後輩男子女子、そこには一切の関連性は無く、また、中に教官の名すらあった。もちろん、彼らもボーダレスなのか、旅行引率者だけでなく、学園で教鞭をとっているはずの者の名前すら見受けられる。




(いったい、なんなんだよ・・・・・・)



 正直、この場で返信するのは気が引ける。これが一人のときならどれだけ携帯をいじくろうと苦はないのだが、今仲間との行動中の上、目の前に峰岸様が不機嫌まっしぐらな様子で鎮座されているものだから、よりいっそう無理という話だ……と思ったら、皆カチカチやりだした。

 というわけで、俺もそれに乗っかりメールを開く。するとーーー





八城先輩からのメール



 件名:もう清水は過ぎたか?



 お前の友人、東利也が我々の女神「伊吹 由香」を孕ませた。

 もし清水観光がまだなら、出来る限りやつをお立ち台から突き落としてほしい。


 あそこは飛び降りても致死率20%以下の、自殺の難所だ。殺せずとも、十二分に元はとれるはず。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


田島先輩からのメール


件名:東に太陽が沈んだ。



「伊吹 由香」が「東」に沈んだ。これは真理から外れた事象であり、正されなければならない。


 よって、そこに居る平民上がりの逆上せ上がりをシバキ倒せ。必要なら、家名を上げて援護する。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



小森先輩からのメール


件名:オメデただーー(^ー^* )フフ♪



 なんと、由香ちゃんが妊娠してました!たぶんだけど、Y遺伝子提供者は、東くんだと思われ!


 なんか、こっちはもうどんちゃん騒ぎだよ!日頃はみんな家のことあるから羽目はずさないけど、これはもう駄目だね!!!



 男子の中には゜゜(´□`。)°゜してるバカも居るし、極端なのだと、早退したアホも居るよ(´ヘ`;)



 いや〜もう、これは祭りだよ、祭り!三ヶ月先の瀬戸祭なんか、どうでもよくなるくらいの祭りさね!!!



 というわけで、旦那に直で話し聞いてみて(*^.^*)


 今の心境とか、どっちがせまったのとか、もう、いやーーーーーー!!!!!!!!!








(うん?)





 思わず、メールの意味が分からず、思考がフリーズする。いや、思考がフリーズしたから、意味が分からんのか?

 ん? これって、ニワトリが先か卵が先かってはなしか?







 おそるおそる、周りを見渡す。

 当然ながら、峰岸と東は何が何やらさっぱりという顔でお互い顔を合わせ手首をひねっているが、他のメンツは顔が引きつっている者から嫌らしエミを浮かべているもの、爆笑しているもの、頭を抱えているものなど、様々なリアクションを撮りながら携帯を見つめていた。




 俺ももう一度、メール一覧に目を落とす。 

 飛び込んでくる件名は大概「殺せ」とか、「ご懐妊!」とか、なんとか、まあ、とりあえず似たようなものばかりで要するに。






 男子:東を殺せ(できるだけ悲惨に)




 女子:東くんに話聞いて!(できるだけ吐かせろ)






 の、2択の内容しかないーーー気がする。







「ちょっと、今携帯なった人、私と一緒に来てくれる?携帯なってない人は駄目だからね、燈火」




 まだ頭がくらくらする中、いち早く動いたのはやはり久遠だった。彼女は、あらかじめ峰岸に釘を刺すと、全員にその聖母のような表情を振りまきながら、「ちょっと顔かせや、コラ。一言でもしゃべったら殺す」というニュアンスの視線をぶつけるという、荒技をやってのけていた。





 ・・・・・・もちろん、全員がそれに従う。

 ここで対応を間違うと、今日の自由行動がオジャンになるだけでなく、もう一人の太陽を爆発させることになりかねないのだから。







(東、おまえ、なにやってんだよ……まあ、付き合ってるんだから別に良いけどさ?

 いや、よくないけど。てかあとから絶対殺すけど。でも、それでも、なんで……今日?)





 すでに、アハハウフフな女子禁制の男子の夢フラグはへし折られており、死亡フラグが一本。

 

 一本だけ、天に向かってまっすぐ伸びており、要は、それが誰の死亡フラグかということだ。


 

(死ぬのが東だけなら良いが、絶対俺らもやばいからな……たのむぜ、久遠。

 すべては、お前の采配にかかっている!!!)




 ガシャンと、立て付けの悪い音を響かせながら、列車を接続していたドアを久遠が開く。

 さながら、俺にはどうしてもそのドアが、天国への扉には見えず、これぞまさに背水の陣なんだろうなとか考えつつ、接続されたとなりの列車に乗り込んだのだった。

 


次回は、視点が小羽に戻ります。


さて、彼女はこの状況で何をするのでしょうかね。

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