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無限想歌  作者: blue birds
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keyB-2,3共通:歪曲する因果4:迷走する想い7:竹山尚子&蒼の魔法使い

個人的な設定で申し訳ないのですが。

この無限想歌は、32番目の物語の一つです。


そのため、ちらほらと意味不明な話が盛り込まれます。

keyB-2,3共通:歪曲する因果4:迷走する想い7:竹山尚子&蒼の魔法使い



 未来視の結果、わたしは今回のことーーー念と少年を取り巻く一連の物事を見過ごせないと、判断した。

 本来、未来は不安定であり、私が予知した世界が顕現する保証など、どこにも無い。


 しかし、万が一にでもそれがなされた場合、この世界は破滅に向かう。

 そんなリスクを手放して放っておくことなど、私にはできなかった。




 だからこその、判断だった。

 私は至極当然として、久遠の娘に警告を発そうと受話器を握ったのだがーーー





「もうすこしだけ、待ってあげて下さい。

あの二人は、私が守り抜きます。だから、あとすこしだけ、彼らにチャンスを」




 禁めるように、冷たい何かが私の手に添えられた。

 それは、誰かの手のひらだった。けれど、それは触感こそ人肌のそれだったが、しかし、血の気配がまったく感じられない。まるで、展示されているマネキンを彷彿とさせる、冷えきった無機質なそれだ。



「……どなたかしら?

客人をお招きした覚えは無いのですけれど?」




 ゆっくりと霊視を開始する。

 策的範囲はーーーというより対象は、手のひらの主。

 会話で気をそらせながら、わたしは第二の眼をひらいた。正体不明のだれかに、対応するために。




 けれど。




「ーーーなにか分かりましたか、竹山さん?

私について、何らかの意味をくみ上げることがーーーふふ、ですよね。

できるわけ、ありませよね」



 「できるわけがない」と言った誰かの声を、私は遠くで聞いた。

 この手のひらの主は、あまりに異質すぎる。この声の主は、ありえない。





「あなたのそれは……どういうこと?

それは、幻術?」





 私の目には、無数の絡まった糸と、それに吊るされた人形が見える。

 さながら人形劇に使われるような人形が、人形劇にはありえない本数の糸に、雁字搦めに固定され、貼付けにされていた。




 ……通常、霊視が不可能である場合、私の瞳には何も映らない。

 それは潜在的に霊視の侵入を拒める者も、異界の技師のように人為的に霊視を拒む者も、同じことだ。わたしのような霊視能力者への対応は、「視せないこと」ーーーその、一点につきる。



 けれど、私の目の前には、糸に絡めとられた一体の人形があった。

 たしかに、私の目は対象の縁をとらえている。けれど、「くみあげる」ことができないでいた。


 未来すらくみ上げることのできる私でも、不可能なほどの何かーーーそれが、対象なのだろう。




「幻術ではありません。ただ、「そういうこと」なんでしょう。

私はただ単に、そういう存在なんです」




 糸に絡みとられた人形は、だらしなく俯いたまま、身動き一つとれないでいた。

 それは、あまりにも悲惨な光景。私はたまらず、霊視を切りあげた。






「どういったご用件でしょうか。

世界を守るとは?彼らにチャンスを与えるとは?

私は何一つ、あなたのおっしゃことを理解できないのですが」






 私の問いに声の主はクスリと笑うと、「お茶を入れましょう」と返した。

 同時に手を私から離し、数歩はなれる。


 そして、勝手知ったる我が家とばかりに戸棚から茶葉を取り出し、急須でお茶を入れ始めた。




「……ふぅ、もう、なにがなにやら。

でも、まぁ、もういいでしょう」





 霊視を現在視に切り替え、視覚を獲得する。

 再び手のひらの主を見ることは避けたがったが、仕様がないーーーと想ってのことだったが、しかし。




 私の瞳に映ったのは、ただの女性だった。黒髪長髪の、美しい女性。

 ……おそらく、気を使ってこの用に視せてくれたのだろう。



 あの茶目っ気あふれる。笑顔からしても、そんな気がするのだ。




 私は、差し出されたお茶をいただいた。

 彼女との手とは違い、お茶は暖かかった。そして、彼女の笑顔もまた。



「自己紹介が遅れました。わたくしは、イツキというものです。世界移動の魔法使いであり、隣で日々をせこく生きているシロの、師にあたるものです。いつも弟子に良くしてくださっているようでーーー」




 そう、彼女は名乗った。彼女は世界移動の魔法使いであり、そして、お隣のシロさんのお師匠さんであると。

 そして「いつもお世話になってます」などと、状況が状況でなければ、なんて普遍的で、微笑ましいやり取りだろうか。





「先ほどの私の問いに、答えてくださらないのでしょうか?

事態は、一刻を争うとーーー私は、考えているのですが?」





 視線をイツキさんに向け、わたしは再び問いただした。

 あなたの真意は、なんなのかと。



 すると、彼女はなんでもないことのように、「ハッピーエンドが見たいだけです」と言ってのけた。




 ……意味が、分からない。





「竹山さんの予知どおりに明日、学園へと渡った小羽ちゃんは瀬戸高校の門を使い、500年前のーーー今の彼女が生まれるに至った過去の次元に、東君と伊吹さんを連れ去ります。そして、そこで三人の絆が試されることになるはずです。ただ、ご心配なさらずに。

ここまで来た以上、東君と伊吹さんの無事は保証されています。どう転ぼうとも、二人は無事に帰還します……問題は、小羽ちゃんです。あの娘が、一緒にかえって来れるかどうか。そこが、問題なんです」





 ズズズとお茶をすすると、イツキさんは間を置いた。そして、「おいしいお茶です」と付け加える。

 また、「グラム300円くらいの味ですね」と、よけいなことまで。



「加えて、彼らにチャンスを与えるということに関してですが、そのままの意味です。

この世界群においてはすでに、東君と伊吹さんの無事は保証されています。けれど、小羽ちゃんだけは別です。もし、あなたがここで彼らに介入すれば、小羽ちゃんの帰還はなくなります。

久遠の姫が、絶対に許しませんからね。時の精霊でもけしかけて、問答無用で小羽ちゃんの排除に乗り出すはずです。

 でも私は、三人がなかよく手をつないでお家に帰れるーーーそんな結末を、見てみたいんです。

 そんな「未来」があること、私は「知っている」ので」





 二杯目のお茶を沸かしながら、イツキさんは屈託なく笑った。

 ……まるで説明になっていないのが、残念だ。説明する気がもとから無いのだろうか。

 それに、未来を「知っている」と?彼女も私同様に、霊視能力者なのだろうか……?



「……だったとして、世界を危険にさらしていい理由にはならないでしょう?

明日、彼の念が過去と現在を結びつければ、世界の改変が起きるのではないのですか?

そのような危機を、一個人の感傷で見過ごせと?」



 彼女は、シロさんの師であるという。加えて、霊視能力者であるならば、シロさんが懸念する、世界改変についても知り得ているはずだ。

 ……まっとうな人間なら、個人と世界の二つを天秤にかけたとき、どちらに傾くかなんて、分かりきった答えであるはずだ。




「あれ? なぜ、竹山さんがそのことを?

久遠のお姫様に、そこまでの判断能力はなかったはずだけれど……?」





 

 イツキさんは予想外だとばかりに目を見開いた。

 そして、「どうして、そのことを?」と、逆に問いかけてくる始末。

 ……微妙に、話がかみ合ってない。

 久遠の末姫が、なんと?




「世界改変の危険性を指摘したのは他でもない、あなたのお弟子さんである、シロさんでしょう。

彼女が言うには、この世界の重複存在ーーーとかいう、「過去に近似される世界」の影響で、世界の修復機構が働く可能性があると……未来視において、事態の収束に乗り出したシロさんがそうおっしゃっていました。

それは、事実なのでしょう?」




 私の問いに、それまで目を丸くしていたイツキさんは、「あーねー?」と、間の抜けた声で答えた。

 ……すこしイラッとしたけれど、ここは我慢どころなんだろうか。




「今回の件に、シロが関与しているんですか?でも、なんで?

あの娘は、この件には全然関係ないはずでしょうに?」




 不思議そうに首を傾げる、「未来を知る」魔法使い。

 彼女は、どういうこととなのかと、私に答えを求めている。





「いえ、関係ないことはないでしょう。彼女は東少年の占いを担当していましたし、接点はあります。

連絡先も交換していたということで、非常事態に対応を迫られる可能性というは、十分に考えられるのではないのですか?」

 




 イツキさんは、「ふむ」とうなずいた。

 そして。





「そのようなことになっていたのですね……どこでどう、組み込まれたのか?

けれど、あの娘が絡むとなるとーーーどうなるか分かりませんね。

これは直接、私が干渉する必要が出てきた訳か……ううんと、大丈夫です。

だとしても、何の問題もありません。世界改変の問題も、私に任せていただければ、何の問題も、はい」





 さきほどまで「まかせとけ」と豪語していた彼女は、このたかが数分で「どうなるかわからない」と言い出した。

 いったい、どういうことなのだろうか?





「……イツキさん。端的に問います。答えてください。

妙な交わしなどは、不要です。あなたは、この事態の深刻さを理解しているのですか?」

 

 

 シロさんが言うには、彼女の師は「自由奔放な天才の極地」の一言につきるらしい。

 けれど、今回の事態にそれで対応されても困るのだ。


 私の視た未来が必ず起きるということはありえないが、それでも、あの未来だけは見過ごせない。

 詰める災厄の芽は、摘んでおくのが常套であろう。



「世界改変の危険性というものは、把握しています。ただし、その件にあの娘が絡んでいるとは知りませんでした」





 あっけらかんと、彼女は答える。シロさんがこの件に絡んでいたことを知らなかったと。

 では、未来を知っているとは? その発現性の信憑性自体が、危ぶまれることになる。




 故に、私は再び問いただした。では、「なぜあなたは「未来」を知っている」などと発言したのかと。

 私と違う可能性を、その眼に映していたのかとーーー?





 その問いに、彼女は。




「私はあくまでも魔法使いであり、超能力者ではありません。竹山さんのように、未来視を行う力など、独力では持ち合わせてはいません。

ただし、シロからもお聞きになっているかとは思いますが、私は「世界移動の魔法使い」です。ようは、移動魔法のスペシャリストで、まぁ、平たく言うと、この世界の未来に該当する世界に、往ったことがあるんです。俗にいう、タイムトラベルですね」






 ……今、なんと?彼女は、いったい何と言った?





「タイムトラベル?それは、あの、タイムトラベルですか?時間旅行という意味での?」






 半信半疑の私を前に、彼女は「そうです」と一言で言い切った。そして、こうも続けた。






「信じていただかなくて、結構です。私がタイムトラベラーであるか否かは、ここではたいした問題にはならないでしょう。

竹山さんが、問題視しているのは、世界改変の危険性のはず。そうであるならば、私がそれに対応できる力を持ち合わせていると、示せばいいわけで」






 イツキさんは、ポケットから携帯と思しき機械を取り出すと、おもむろにどこかに電話をかけ始めた。

 そして、一言二言誰かに何かを告げて、さらに待つこと数分ーーー機械は、私に手渡された。




 どうやら、わたしに話せということらしい。

 少し釈然としないものも感じたが、そこは黙って従うことにした。ただ静かに、受話器を耳に押し当てる。

 そして次の瞬間。わたしは、我が耳を疑った。



 なぜなら、無機質な機械の向こうには、明らかに。

 圧倒的な存在がーーーこれは、昨日瀬戸の者に仲介を頼んだはずの……


「はじめまして、未来視の魔女どの。私は「成功者」だ。そこの魔法使いの身元は、私が保証する。

もし、この会話で納得していただけなければ、直接我が学び舎にて落ち合いましょう。移動は彼女に頼むとよろしい。

現在私はロスにいるが、30分ほど待っていただければ、面会も可能です。どう、されますか?」

無限想歌は、東君達の物語です。

けれど、それは他人に関係ないという訳でもない。


今回の竹山さん達は、彼らなりの意思で持って、東君達に干渉しています。

彼らはそのことを知りませんが、それは他の物語で、意味を持つことになります。




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