連想歌B-3:乱立変数収束–存在確率10%:正答の破棄2:願い:東利也
86-88部の東君、一人で突っ走り過ぎです。
というか、勘違い?
だって、この物語。影こそ薄いけれど最初から、三人の縁が、物語りを紡いでいるのですから。
連想歌B-2:乱立変数収束–存在確率10%:正答の破棄2:願い:東利也
―――決められない。
何をどう言い訳したところで、俺があいつを連れ帰る道理は無い。
けれど、俺はあいつを残しては帰れない。いや、帰れないんじゃない―――帰りたくなかった。それは結局、感情論にすぎない。
それは他人から言わせれば、たぶん、唯の感傷だって―――なるんだろうな。
でもそんなこと、俺だって十二分に分かっている。
……正しい選択肢は、あいつを置いていくことだ
たったそれだけのことで、全ての問題は解決する。そして何よりそれは、一昨日の俺が―――シロさんに出会う前の俺が望んでいた結末でもある。
「……なのに俺は、迷ってる。正解は分かってるのに。それを、選ぶだけで良いのに。でも、俺はあいつと帰りたい一心で―――ははは、バカみたいだ。本当に、唯のバカだ、俺は」
出来レースもいいとこの賭け事に、躊躇しているようなものだ。
どっちに掛けるべきかハッキリしているのに、それを迷う。
「……わかってる。わかってる。でも!」
……手札が、足りていなかった。俺は重大な分岐路に差し掛かっているにもかかわらず、その手のひらに何も持ってはいなかった。今俺の前に在る路だって、他人から与えられたもの。そしてそれが、正当なる路だとしても、それが本当にそうなのか、俺にはわからない。
けれど、嘘偽りのない確かなモノだって、ある。
それは、ガキだけがゆるされる、甘えともいえる、不確かなもの。
けれどもそれは、確かに此処にあった。
『にいさま!』
そう呼ばれることが、何故か嬉しかった。
あいつは赤の他人なのに、そんなやつから兄さまと呼んでもらえることが嬉しかった。
でも、もしそれを選んでしまえば、それは「俺の路」になる。俺が作り上げなければならない、俺だけの路―――そして、栞はそんな俺の路を、鼻で笑った。
「悲劇は不可避」だと―――そして、それでも何かを願うなら、俺は世界をひっくり返すくらいのことをやってのけなければならないとも。
「……」
俺は、決められなかった。
とるべき路なんて明らかなのに、それをただの感傷で否定する。
最後には、俺が決めなければならない。だけど、それには由香も嫌が応にも巻き込まれることになる。
そのとき、俺は責を負えるのか?
由香や、あいつや、栞達―――俺を取り巻く人々に対して、おれは……?
「携帯が鳴ってるって、由香からか……」
携帯の表示画面には、伊吹由香の名が表示されていた。
そのとき時刻が視界に飛び込んできたが、どうやら長いことウジウジやってたらしい。
由香の性格を考えると、痺れを切らしたというところだろうか。
「……由香に相談してみるのも、手だよな。
今回のことには、あいつも無関係じゃないんだし」
俺は、通話ボタンを押した。
おして、受話器に耳を当てた。そして。
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では!また、近いうちに