連想歌B-1:乱立変数収束–存在確率10%:正答:東利也
正しい路を選ぶ。
その先には、何があるのか。
連想歌B-1:乱立変数収束–存在確率10%:正答:東利也
―――俺は、一人で帰ることを選んだ。
何をどう言い訳したところで、俺があいつを連れて行く道理は無かった。
ただ、後ろ髪を引かれる想いが無いかと言われれば、それは否定できない。
けれど、万が一あいつを連れ帰って、由香に何かあった場合。
俺はきっと、死ぬ程後悔するはずだ。そしてその結果、連れ帰ったあいつを―――恨むだろう。身勝手にもあいつを罵倒し、拒絶するかもしれない。
そして俺は一人被害者面して、さらに―――
……けれど、だからと言って俺は、あいつを見捨てるつもりも無い。
ただ、今は手札がそろいきっていないというだけの話。
あいつが閉じ込められている場所は、分かっている。そして、あいつがそこから出られないことも。
だったら、俺は何時だってあいつを救い出せるわけだ。
そう、あいつを連れ帰るのは別に、「今」でなくても良いというだけの話。
「由香には……言わない方がいいよな。
あいつ、ぜったいに怒るはずだから……」
俺は頭をぼりぼりとかき、携帯をポケットにしまった。
携帯は、いっこうに鳴りだす気配はない。たぶん、栞が由香に釘を刺していてくれているからだと思う。
「……」
とにもかくにも、俺は一人で帰ることにした。
それが今の俺に出来る、最善の判断だと、そう、自分に言い聞かせて。
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87は、B-2です。