silver bullet subunit2:歪曲する因果:東利也
東クンの、お話です。
gold gate
彼の生きる世界は、当初は簡潔だった。しかし、彼が生きて時を過ごす程に、彼の世界は複雑さを増して行った。
ーーー世界は、最初から複雑だったのだろうか? 幼い彼が、単にそのことに気づかなかっただけで、本当は、世界は……
いや、そうじゃない。世界は、本来シンプルなものだったはず。
少なくとも原初の世界は、ただ在るだけの、そんな、存在だった。けれど、いつからか、そこに線引きが成され始めたのだ。
線は境界を描き、世界を二つに分けた。そして、二つは三つに。三つは四つに。
描かれる境界は世界の発生に伴い複雑さを増して行き、今では、世界樹と呼ばれる大樹を誇るまでになった。
……けれど、それと彼の物語とは何の関係もないことだ。彼の世界はあくまでも、彼だけの世界。
彼の固有世界は、彼を内包するこの世界とは、境界敷を隔てて独立している。
ーーーだから、だろう。
幼かった彼の世界は、彼だけのものだったのだ。幼かった頃の彼は、そのことに気づいていなかっただけ。小さかった彼は、自分という世界と、それを包む大きな世界ーーー内包世界の二つで、精一杯だったのだ。
だから、錯覚した。
まるで、この世界がただのその二つからなるような錯覚を描き、そして時を重ね、いつしか彼は、気づいた。
世界には、無数の世界が溢れていることを。
それは彼を包み込む内包世界はもちろんのこと、それ以外の。
それ以外の、とても小さな世界達。
それは、彼を包みこむ世界とは違い、優しくはなかった。
それどころか強情で、意地っ張りで、自分本位で意地汚くーーー故に、尊かった。
だからこそ、彼はーーーー
※
silver bullet(F)
御託はいい。
貴様の教鞭など聞き飽きたんだよ、gold gate。
貴様のゲーティングは後に受ける。だから、しばらく黙っていろ。
これは、『命令』だ。
しばらく、gold gateはお休みです。