silver bullet subunit1:相克する因果:寿小羽
一つを、二つに。
少女は、自身と向き合うことになります。
Tip~相克する因果と合わせ鏡の法
鏡を覗き込んだとき、そこに映る自分は、本当の自分じゃないと感じることが多々ある。
それもそのはずで、鏡の中の自分は左右が反転してしまっているのだ。
それは、「合わせ鏡の法」でも同じこと。
この法は対象の根源を鏡の前に引きずり出す、「根源たる法」ーーー故に、秩序レベルの執行力がある。けれど、所詮は鏡でしかない。
だから、この法を用いて根源を投影した者は、自己矛盾を目の当たりにすることになる。
それこそが、相克する因果とも呼ばれるに値するーーーー
※
silver bullet subunit(F)
わたしは、ハッピーエンドを望みます。
ここでのハッピーエンドの定義は、もじどおり、めでたしめでたしで飾られるものです。
ユエに、ワタシは望みます。
例え 世界が赦さな クと も ワタ
師は、か の じ ょ tati が ・・… ‥‥修正を続行します。
警告します。エラーが乱立しています。このままでは、存在確立が想定の範囲を超えます。
最悪の場合、揺らぎの世界が発生する可能性も考えられます。
引き続き、gold gateは修正を加えてください。繰り返します。gold gateは、引き続き、修正を加えてください。未だ、銀の弾丸の脅威は消失していません。
※
silve bullet subunit1:相克する因果:寿小羽
私を取り囲んでいた囁き声は鳴りを潜め、今や社を満たすのは、私の声のみ。
「ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼん、のーーーます!
ゆびきった!」
私の前に差し出される、小さな指。それは、私の小指と瓜二つで。
「だから、ねぇ様には針千本お飲みになっていただかなくては……「私」も、そう思うよね?」
問いかける声に、私は答えない。
震える体を、必死に押さえつけるだけ。
「あの銀の人、何だったんだろうね……
一つを二つにって、こういうことなのかな?」
再び私は、「私」に問いかけられた。
それでも、私は答えないーーー否、答えられなかった。
「ねぇ、いつまで私を無視するの?
「私」がそんな娘だなんて知ったら、兄さま、とても悲しまれるでしょうに……」
兄さまと言葉に、心がびくりと震えた。
兄さまに、嫌われるーーーそれだけは、絶対に嫌だ!
「私だって、わからないよ。
なんで、こうなっちゃたのか、なんて・・・・・・」
思わず口を開いてしまった。
顔を上げ、まっすぐに「私」を見るーーーそこには、見間違うはずも無い、「私」が居た。
月光を背に、微笑んでいる。
「やっと、答えてくれたね。
すこしだけ、うれしいな」
屈託なく笑う、その笑顔。そして、はにかむ仕草。
それは、大好きな兄さまの気を引くために私が水辺で獲得した、私の数少ない武器とも言えるものだった。普通の爺や婆なら、一発でしとめられる自信がある。
そんな武器を、「私」が私に向けている。
「ねぇ、協力してくれる気になった?
あの忌々しい門を、こじ開けるのを」
再び周囲がザワザワと騒がしくなる。それに私はおびえるしかない。
「みんな、すこし静かにしてて。
私が、きちんと「私」とお話をするから……ね?」
最後の、「ね」。
それは、周囲の気配ではなく、私に向けられたものだった。
「わたしは、此処に残る。
そして、朽ち果てるの。それが、私の取るべき道」
もはや、周囲の気配は完全に消え失せていた。それは、「私」が怒っているから。
その怒りは当てられるだけで身を裂かれそうな、刃物を思わせる焰をちらつかせている。
「なにを、言ってるの?
外に出なくては、あの女から兄さまをまもれないでしょう?」
私の頬に、「私」の両の手がそっと差し入れられた。
ゆっくりと、顔を挙げさせられるーーー私は、「私」と目が会った。
「あの女は、生きている。生きて、再び兄さまを陥れようと、女の気を利用して兄さまに忍び寄っている……わかるでしょう?
私が、守るの。あのときの私には出来なかったことが、今の私になら出来る。あの頃の無力だった私は、もう何処にも居ない。
今の私なら、兄さまの力となれるの。それは、とっても素敵なことでしょう?」
目の前には、「私」が居た。でも、私じゃない。目の前に居る者が私だなんて、認めるわけにはいかない!
「させない!そんなこと、ぜったいに!」
私は、震える声で叫んだ。そして、あらん限りの力で、「私」を睨みつける。
「……あなた、だれ?
私の振りをした、「私」……?」
目の前の少女は、そんな私を見て、首を傾げた。
そして、私の髪をぐいっと引っ張ると、私の目を覗き込むように身をそらさせる。
「あなたは、私じゃない「わたし」……ああ、そういうこと。
あなたは、鏡に映った私なのね?だから、反転してるんだ……先ほどからあなたを見て、イライラしてたのよ。今の今まで分からなかったけれど、今になってやっと分かった。
あなた、「ねぇ様のことが好きだった頃の私」でしょう?」
黒い炎をちらつかせながら、目の前の少女は壮絶な笑みを浮かべた。
舐めるように彼女の炎が私を這い回るが、それが私に害をなすことは無かった。
「あの女がしたことを、忘れたの?
いいえ、忘れていないはずよね。私には、分かるわよ。あなたは「私」で、私。
ねぇ様への感情以外のなにひとつ、私達で異なるものはないはず」
少女はつかんだ私の髪を離すと、少しだけ私から距離を取った。
舐めるように、私を見つめる。
怖かった。怖くて怖くて、仕方なかった。目の前の少女が、どうしようもなく「私」であることが怖かった。
けれど、負けることは許されない。彼女に負ければ、私は「私」になってしまう。
そうすれば、私は兄さまをきっと悲しませる。
それだけは、許せなかった。だから!
「私は、人外の化け物となった。しかし、死して尚、私は寿家の姫。
このような身になってまで、生きようとは思わない!ましてや、人外の力で人を殺めようなどと、それこそ、一国の姫の名折れ!
そのような愚行を、兄さまが許されるはずがない!」
私は、震える足で立ち上がった。すこしでも目の前の少女に飲まれまいとするためだ。
彼女の邪悪な力は、私には及ばないらしい……それも、そうか。なぜなら、彼女は「私」なのだから。
「人の道を外れた外道を地獄に突き落とすのに、人外の力を使って何が悪いの?
あの女の性で、我が家族と家臣、そしてなにより、善良なる民の命が奪われた……許せるものか。
……千秋の想いが、やっと実を結んだのよ。繰り返す命は、私に報復と正義の施行の機会を与えてくれた……ならば、それに従うことこそが、一国の姫たる者の勤だと、私は思うわ」
私たちは、互いに「私」を前にして、にらみ合う。
どうしたところで「私」は、相克する私だった。どれほど言葉を交わした所で、和解することなど出来るはずもない。
私達は、そもそもが、対局に座する存在だ。
だから、私が彼女に力を貸すことなどあり得ない。私が彼女に飲まれぬ限り、彼女は此処で朽ち果てるのみ。
だから。
「あなたには、ここで私と朽ち果ててもらう。
それが、人を呪った私の、人としての最後の勤め……ぜったいに、私はあなたを、外へは行かせない!」
相克する因果の、問題提起です。
んで、次回は歪曲する因果の方ですね。つまりは、兄貴の方……