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無限想歌  作者: blue birds
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silver bullet subunit1:相克する因果:寿小羽

 一つを、二つに。

 少女は、自身と向き合うことになります。

Tip~相克する因果と合わせ鏡の法



 鏡を覗き込んだとき、そこに映る自分は、本当の自分じゃないと感じることが多々ある。

 それもそのはずで、鏡の中の自分は左右が反転してしまっているのだ。



 それは、「合わせ鏡の法」でも同じこと。

 この法は対象の根源を鏡の前に引きずり出す、「根源たる法」ーーー故に、秩序レベルの執行力がある。けれど、所詮は鏡でしかない。



 だから、この法を用いて根源を投影した者は、自己矛盾を目の当たりにすることになる。

 それこそが、相克する因果とも呼ばれるに値するーーーー




silver bullet subunit(F)


 わたしは、ハッピーエンドを望みます。

 ここでのハッピーエンドの定義は、もじどおり、めでたしめでたしで飾られるものです。




 ユエに、ワタシは望みます。

   


    例え          世界が赦さな   クと   も ワタ

 



 師は、か   の  じ ょ  tati が    ・・…   ‥‥修正を続行します。




 警告します。エラーが乱立しています。このままでは、存在確立が想定の範囲を超えます。

 最悪の場合、揺らぎの世界が発生する可能性も考えられます。


 引き続き、gold gateは修正を加えてください。繰り返します。gold gateは、引き続き、修正を加えてください。未だ、銀の弾丸の脅威は消失していません。







 


silve bullet subunit1:相克する因果:寿小羽




 私を取り囲んでいた囁き声は鳴りを潜め、今や社を満たすのは、私の声のみ。



「ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼん、のーーーます!

ゆびきった!」



 私の前に差し出される、小さな指。それは、私の小指と瓜二つで。



「だから、ねぇ様には針千本お飲みになっていただかなくては……「私」も、そう思うよね?」




 問いかける声に、私は答えない。

 震える体を、必死に押さえつけるだけ。




「あの銀の人、何だったんだろうね……

一つを二つにって、こういうことなのかな?」





 再び私は、「私」に問いかけられた。

 それでも、私は答えないーーー否、答えられなかった。




「ねぇ、いつまで私を無視するの?

「私」がそんな娘だなんて知ったら、兄さま、とても悲しまれるでしょうに……」





 兄さまと言葉に、心がびくりと震えた。

 兄さまに、嫌われるーーーそれだけは、絶対に嫌だ!




「私だって、わからないよ。

なんで、こうなっちゃたのか、なんて・・・・・・」




 思わず口を開いてしまった。

 顔を上げ、まっすぐに「私」を見るーーーそこには、見間違うはずも無い、「私」が居た。



 月光を背に、微笑んでいる。



「やっと、答えてくれたね。

すこしだけ、うれしいな」




 屈託なく笑う、その笑顔。そして、はにかむ仕草。

 それは、大好きな兄さまの気を引くために私が水辺で獲得した、私の数少ない武器とも言えるものだった。普通の爺や婆なら、一発でしとめられる自信がある。



 そんな武器を、「私」が私に向けている。




「ねぇ、協力してくれる気になった?

あの忌々しい門を、こじ開けるのを」




 再び周囲がザワザワと騒がしくなる。それに私はおびえるしかない。



「みんな、すこし静かにしてて。

私が、きちんと「私」とお話をするから……ね?」




 最後の、「ね」。

 それは、周囲の気配ではなく、私に向けられたものだった。





「わたしは、此処に残る。

そして、朽ち果てるの。それが、私の取るべき道」




 もはや、周囲の気配は完全に消え失せていた。それは、「私」が怒っているから。

 その怒りは当てられるだけで身を裂かれそうな、刃物を思わせる焰をちらつかせている。




「なにを、言ってるの?

外に出なくては、あの女から兄さまをまもれないでしょう?」




 私の頬に、「私」の両の手がそっと差し入れられた。

 ゆっくりと、顔を挙げさせられるーーー私は、「私」と目が会った。




「あの女は、生きている。生きて、再び兄さまを陥れようと、女の気を利用して兄さまに忍び寄っている……わかるでしょう?

 私が、守るの。あのときの私には出来なかったことが、今の私になら出来る。あの頃の無力だった私は、もう何処にも居ない。

 今の私なら、兄さまの力となれるの。それは、とっても素敵なことでしょう?」



 目の前には、「私」が居た。でも、私じゃない。目の前に居る者が私だなんて、認めるわけにはいかない!






「させない!そんなこと、ぜったいに!」




 私は、震える声で叫んだ。そして、あらん限りの力で、「私」を睨みつける。




「……あなた、だれ?

私の振りをした、「私」……?」




 目の前の少女は、そんな私を見て、首を傾げた。

 そして、私の髪をぐいっと引っ張ると、私の目を覗き込むように身をそらさせる。





「あなたは、私じゃない「わたし」……ああ、そういうこと。

あなたは、鏡に映った私なのね?だから、反転してるんだ……先ほどからあなたを見て、イライラしてたのよ。今の今まで分からなかったけれど、今になってやっと分かった。

あなた、「ねぇ様のことが好きだった頃の私」でしょう?」



 黒い炎をちらつかせながら、目の前の少女は壮絶な笑みを浮かべた。

 舐めるように彼女の炎が私を這い回るが、それが私に害をなすことは無かった。





「あの女がしたことを、忘れたの?

いいえ、忘れていないはずよね。私には、分かるわよ。あなたは「私」で、私。

ねぇ様への感情以外のなにひとつ、私達で異なるものはないはず」


 




 少女はつかんだ私の髪を離すと、少しだけ私から距離を取った。

 舐めるように、私を見つめる。



 怖かった。怖くて怖くて、仕方なかった。目の前の少女が、どうしようもなく「私」であることが怖かった。

 けれど、負けることは許されない。彼女に負ければ、私は「私」になってしまう。

 そうすれば、私は兄さまをきっと悲しませる。


 それだけは、許せなかった。だから!





「私は、人外の化け物となった。しかし、死して尚、私は寿家の姫。

このような身になってまで、生きようとは思わない!ましてや、人外の力で人を殺めようなどと、それこそ、一国の姫の名折れ!

 そのような愚行を、兄さまが許されるはずがない!」




 私は、震える足で立ち上がった。すこしでも目の前の少女に飲まれまいとするためだ。

 彼女の邪悪な力は、私には及ばないらしい……それも、そうか。なぜなら、彼女は「私」なのだから。





「人の道を外れた外道を地獄に突き落とすのに、人外の力を使って何が悪いの?

 あの女の性で、我が家族と家臣、そしてなにより、善良なる民の命が奪われた……許せるものか。

 ……千秋の想いが、やっと実を結んだのよ。繰り返す命は、私に報復と正義の施行の機会を与えてくれた……ならば、それに従うことこそが、一国の姫たる者の勤だと、私は思うわ」



 私たちは、互いに「私」を前にして、にらみ合う。

 どうしたところで「私」は、相克する私だった。どれほど言葉を交わした所で、和解することなど出来るはずもない。



 私達は、そもそもが、対局に座する存在だ。

 だから、私が彼女に力を貸すことなどあり得ない。私が彼女に飲まれぬ限り、彼女は此処で朽ち果てるのみ。


 だから。





「あなたには、ここで私と朽ち果ててもらう。

それが、人を呪った私の、人としての最後の勤め……ぜったいに、私はあなたを、外へは行かせない!」


 

相克する因果の、問題提起です。


んで、次回は歪曲する因果の方ですね。つまりは、兄貴の方……

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