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無限想歌  作者: blue birds
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歪曲する因果3:迷走する想い7:峰岸&久遠

さて、峰岸さんと久遠さんは、策にほころびが在ることを確信しました。


そして、久遠さんに関しては、また別の問題が・・・・・・・

gold gate:迷子の想いと、約束の時



届かない想いが在るからこそ、想いが届くという、ただそれだけのことにーーー価値が生まれる。



そしてその裏返しに、全ての想いは、いつか届くんだよ。

それが何時になるかなんて誰にも分からないけれど。


けれど、想いは届く。それは、当初のカタチとはかけ離れたものになってしまっていることが多いけれど、それでも。




それでも、迷子の想いが誰かの元に届けられたその時に。

その、守られずはずもない約束の時に、その想いに関わった全てのモノが、幸せになれたらとーーー私は、祈っている。



歪曲する因果3:迷走する想い7:峰岸&久遠



 念を封印した私が燈火と合流したのは、8時をまわったくらいだった。


「ご、ごめん、しおい……わた、わたし、何も……」 


 受話器越しに泣きじゃくる親友をなだめすかして今の場所に呼び出したのが、だいたい十分前くらい。そして現在、私たちは旅館近くの川岸で、水面を肴に座り込んでいた。


 私と再会した途端に再び泣き出してしたまった燈火だけれど、今は少し落ち着いている。それでも、私を「しおい」と呼んでしまうくらいには、ろれつが回っていない。




「燈火のせいじゃないよ……たぶん、私のせい。私が翁との契約をしくじったから……

 今ね、東君と由香先輩を遡行視してみたんだ。そして、二人の今の行動原理には、警告夢が大きく関与してる―――ってとこまで、わかった」


 由香先輩の夢には、その根源からして二種類あるように視えた。

 そして、一つからは明らかに翁の気配が感じ取ることが出来る。けれど、もう一つの方が理解できない。どれほど力を駆使しても、ノイズが走るばかり。この、「久遠」の私ですら閲覧不可能な程の―――プロテクトが掛けられている。

 そして、それは東君のほうでも確認できた。



「夢の内容は、二種類あるみたい。念が危険なものだって諭すような内容と、そして、念と二人の傷魂を刺激するような内容……後者は、明らかに翁の仕業。かつての幸せだったころの記憶を、由香先輩にね……そしてその結果が、今の状況」



 ざっとだけど、燈火に今に至る経緯を話した。夢の内容はプロテクトが掛かっているため、直視は出来なかった。いずれも、二人の会話からの類推だ。

 けれど、大きく的は外れてはいないと思う。



「で、でも、それでも私が!」



 燈火は、最初から目を離さずに東君を見張ってれば良かったと、悔いていた。最初から彼の首根っこを捕まえて、彼の傍に居ればこんなことにはならなかったと―――



「燈火の判断は、間違いじゃなかったよ。東君の世界は、燈火だけじゃないんだから。皆が居る、「此処」が彼の居場所で、彼の守るべきもの。だから、それを彼に見せようとした燈火は、間違ってなんかない!

 ……いずれにせよ、契約内容が翁に書き換えられた時点で、私たちは念のことを東君に話さなきゃならなかった。そしてそのときに、二つを天秤にかけて、コッチを選ぶように……」



 翁は、念を救えと私に言った。そして、それを断わった結果が、契約改竄だ。どう転んだところで、当初の予定通りにプランを進めさせてくれるはずがなかった。

 そして、夢を介して由香先輩を唆したことから考えても、間違いない。彼は、契約内容に、絶対に「東君の選択」を組み込んでいるはず……もし、私が彼からそれを奪い取れば、確実にこの契約は破綻する。



「これで良かったんだよ、燈火。さっきまで私、東君に黙ってても大丈夫かな〜って思ってたんだ、今回のこと。このまま黙って帰っても、どうにかなるかなって……あははは、甘すぎだよね。

 後少しで、全部おじゃんになるところだった!だから、燈火にはお礼を言わなきゃね」



 おちゃらけてみた。そして、それは燈火にだって伝わっている。

 最初から私たちは、東君に選択を迫るつもりでいた。だからこそ、燈火には役割があった。



「ごめん、栞……ほんとに、ごめん!」



 少しだけ落ち着いたのか、今度はきちんと私の名を呼んでくれた。ただそれだけのことなのに、心の底から喜びが湧いてくる。




「もう、いいって。だいたい、こそこそしてたのが、そもそもの間違いだったんだよ。だから、此処から先は私に任せて。

 大丈夫、絶対にうまく彼を説得するから!」



 私は燈火の手から、キヨ君の携帯を抜き取った。彼女は、「あっ」と声を零し、空いた手を私に伸ばす。



 それを、私はひらりと躱す。伸ばされた燈火の手は空をきり、私と燈火の間には静かな空気が生まれた。そして、しばしの静寂。


 私は燈火の目を覗き込み、にっこりと親友に微笑んだ。そしてすぐに踵を返して、歩き出した。目的地なんて、ハッキリしてる。あの、糞野郎のところだ。


 私は、『視』た。遡行視を介して、あの男が燈火に言った言葉と顔を、しっかりと。



「調子に乗り過ぎだよ、東利也……よくも、燈火を。

私の、想い人を……」


 煮えくり返る想いを静かに吞み込み、私は宿を目指す。宿はもう、視界にある。宿までは、後少しだ。そして、この修学旅行が終わるまで、あと、一夜のみだ。

連想歌:乱立変数2:想い人3-恋敵:東&久遠

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