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無限想歌  作者: blue birds
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連想歌:乱立変数2:想い人2:東&伊吹&峰岸

東君をひっぱたきたい今日この頃。寒くなってきましたね。


連想歌:乱立変数2:想い人2:東&伊吹&峰岸



 私は夢で見聞きしたことを、利也に話した。

 銀の髪を持つ少女と、彼女の予言。そして、彼女の夢とは異色の空気を孕んだ、幸せな夢の話ーーーそれらすべてを、私は利也に伝えた。



「……利也も、同じ夢見てたんだね。

なんか、ちょっと怖い」



 彼の話を聞く限り、彼も私と同じ夢を見ていた様子だ。ただ、その夢を見たのは唯の一度きりで、その夢は私の場合だと、一番最初の夢に相当する。



「銀髪のやつ、俺が災厄と向かい合わなきゃならないとか言ってたけど……そっちでは、俺が災厄を連れて帰るとか―――言ってたんだって?」




 二人とも、しばらく無言だった。

 利也が使っている携帯はキヨ君のだから、速く話を終わらせないといけないってことは、分かってる。


 でも、それでも遠く離れた二つの地で、私たちは同じ夢を見ていた。加えて、利也は現在、「寿小羽」を名乗る幽霊に取り憑かれているとのこと……


 そして、利也はその娘をこちらに連れて帰るつもりだったらしい。




「ねぇ、利也。疑ってるわけじゃないけど、本当に幽霊に取り憑かれているの?

なんていうか、ほんとにそれは幽霊なのかなぁって思って……」



 私と利也は、夢の少女が災厄と呼んだモノがなんなのかーーー言葉にせずとも思い浮かべることができた。それはたぶん、あの娘だ。

 夢の中でコロコロと笑っていた、無垢な少女。けれど、私はどうしても、あの娘が災厄だとは思えない。そしてそれは、利也も同じようだった。



「小難しい話になるけど、霊って表現が一番合ってるらしい。

しかも、あいつが災厄って話だけどさ……あいつが出来ることって、たかが知れてるぞ? 普通はモノに触れられない上に、触れられたとしても、力とかは年相応だし……災厄って言われてもなぁ?」



 たどたどしくだが、利也は霊と念について話し始めた。ソースは、占い師のシロさんって言う人ととのこと……

 利也自身、二つの違いはよく分からないと言ったふうだ。



「う〜ん、ややっこしいね……でもシロさんも、小羽ちゃんを見て別に危険だって言わなかったんでしょう?じゃあ、災厄って何のことだろうね……今、小羽ちゃんって、そこに居る? 話とか、無理っぽい?」



 テレポートまで使いこなすというシロさんの話は俄に信じがたい。それに、幽霊という存在も、なかなかに……

 だから、一番手っ取り早い方法を選んだ。



「うん? 話ってお前、喋るの? あいつと?

……それが一番速いか。でも、あいつ俺以外のやつには見えないっぽいから、無理かもよ? って? お前何―――――――ブツッ!」



 突然、携帯の切断音が鼓膜を打った。

 一度携帯を耳から話、画面を確認してみる―――やはり、切断されたらしい。



「やっぱり電波悪いのかな……最悪、電池切れ?

って、繋がった」




 呼び出し音が、耳に響く。

 けれど、いっこうにその音がやむ気配がない。



 延々とコール音はリピートしたあげく、最後にはお留守番サービスに繋がった。



「……利也?」


 私は、首を傾げながら再び通話を切り、掛け直した。

 それこそ、何度も何度も掛け直し、やっと繋がった時には……










 

 それが想定できなかったかと言われれば、嘘になる。けれど、いくらなんでも、この状況でそれが起るとは思わなかった。



「なんで? どうして?」


 M4に連れ去られたという、あのバカを探しながら、私は廊下を歩き回り、やっとこさ当の本人を見つけた――――と、思った矢先だった。



「小難しい話になるけど、霊って表現が一番合ってるらしい―――」



 目の前の全てを、疑った。

 それは彼が携帯電話を持っていることも含め、彼の口から「霊」という単語が零れでいていたことも、そう。


 そして、受話器越しに誰かに向けている気配が、私が欲してやまない―――!




「―――理かもよ? って? お前何すんだ!」


 気づけば私は、あいつから携帯を取り上げていた。そして、通話を強制終了させる。



「誰と話してたの?」




 端的に、私は問いかけた。

 そんな私に対し、彼はめんどくさそうな顔を向けている。


 しばらくして、再び携帯が鳴り始めた。

 視線を落として、通話者を確認する。

 画面に映るのは、伊吹由香の文字……




「これ、キヨの電話だよね? なんであんたがそれで由香先輩と話してるわけ?」



 自分の声が震えるのを、堪えられなかった。

 視線を上げ、東を睨みつける。



 すると、気まず気に私から目線をそらし、「どうでもいいだろ、そんなの」と、返してくる。




「あんた、昨日今日って皆に迷惑かけてんの、分かんないの?

って、分かってないのか……だから、こんなこと出来るんだもんね?」




 私は、紋所よろしく、携帯を彼に突きつける。

 その瞬間、彼の顔が真っ赤に染まるのが見えた。


 赤には、恥と怒りの二つが見て取れる。



「迷惑かけたのは、謝るよ。

ほんとに、済まなかったと思ってる」


「じゃあ、こんなことできないでしょ? ねぇ?」



 彼に弁解する余地を与えず、私は口を開いていた。

 その声には、私の意図しない怒りがにじみ出ている。

 自分でも、マズいと思った。これ以上は、本当にマズいと。



 けれど。




「事情が、あるんだよ。理解してもらえるとは思わないけど、ほんとに今立て込んでるんだ。だからそれ、返してくれよ」




 我慢、出来なかった。何も知らないくせにという顔で、東は、「事情がある」と言った。そしてそれが、私に理解できるものではない、とも。けれど、この通話先の相手には、それが出来るのだと暗にほのめかす。


 ……理解できないって? 私が?

 先ほどの会話の断片だけでも、何の話をしていたかくらい、察しはつく。

 

 栞からも精霊種の介入がある可能性を聞かされていたのだ。

 気まぐれな精霊は何かの手段を講じて、東を檻に向かわせるだろうとも―――


 そして、それが、今の状況を生み出した。



「理解できないって、何が? わたしに、何が分からないって?

ねぇ、あんたに、私の何が分かるの? 私の何も知らないくせに、分かったような口を聞かないで!」



 もはや、私は叫んでいた。

 ここが公共の場であることも忘れて、声を荒げていた。

 そして、認めたくないけれど、私の頬を何かが伝わっていく感触も感じる。



「おい、待てって!それ、キヨの携帯だろ!?」



 集まってくる野次馬とバカを背に、私は走り出した。片手には、キヨの携帯が握られており、未だにコール音が響き渡っている。



 わたしは、間の抜けた音をお供に、宿の廊下を駆け抜けた。

 走って走って走って走って、宿の外にスリッパのまま駆出して、私は。



「うぅうっつ、う!」



 溢れる悔しさと自己嫌悪をうめき声に変えて独り、月の下嗚咽を漏らして、泣いた。

 

 

次回は、歪曲する因果3:迷走する想い7:峰岸&久遠です。



いや〜、先が長い……

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