Tips〜あるタイムトラベラーの手記:タイムトラベルと、世界移動
のちのちのことがあるので、こういう構成になりました。
ファクターが近すぎるとあれなんで、むりやり入れてます。
次回こそ、東クンの話です。全話の竹山さんの話の補完になります。
Tips~あるタイムトラベラーの手記:世界移動と、タイムトラベル
時間とは、「変化」を記述するための概念である。
過去も現在も未来も、結局は「何かの状態」に「連続性」をもたせるために存在するのだ。
しかし、上記に挙げた時間にまつわる3つの概念の内、実際に世界として存在するのは、「現在」のみである。過去も未来も、どちらも架空の存在でしかない。このことは、タイムトラベル技術の確立に置いても、非常に重要な意味をもつ。
現在の技術を総動員すれば、タイムトラベル自体は可能である。そして、その旅行方向に、未来や過去方向といった縛りは無い。あるのは、たった一つの事実のみである。それはすなわち、「自身の意図した世界には決して飛ぶことが出来ない」ということ。そして、一度跳んでしまえば、それが最後……なにがあろうと、自身の存在した「元の時空への帰還は不可能」となることである。
現在確立されているタイムトラベルは、世界移動の亜種である。通常用いられる世界移動の法では、世界の系統樹に沿った形でジャンプが行われるため、自身の世界への帰還は可能である。これは、世界同士が系統発生の際に生じた枝により接続、固定されているためである。
しかし、タイムトラベルの世界移動では、この「系統樹間」をジャンプする。ジャンプが過去方向である場合、アカシックレコードの補正により、「限りなく過去世界に近似される世界」へとーーーーつまりは、隣接する世界樹の特定ポイントへと、跳ぶことが出来る。
ただし、未来方向へのジャンプは、そう上手くはいかない。アカシックレコードの補正が、過去方向ほど働かないのだ。本当に、どこに着地するのか、分かったものではない。この原因は不明であるが、「ラプラスの魔」が長期未来予知を不得意とすることも、同様の理が働いていると見える。
また、これに加えて厄介なのは、世界の自己修復機構である。どの世界でもこの機構は保存されているが、これとタイムトラベラーが絡むとろくなことが無い。それは、私の経験が実証済みである。
世界は、整然とした因果を望む。もしそれが破綻するようなことがあれば、自ら是正しようと世界を再構築するのだ。だからもし、自身の世界にタイムトラベラーという「異世界の記憶媒体」がこつ然と現れるとどうなるかーーー?また、これは私自身試したことが無いが、もし、系統樹を超えて世界同士を接続した場合、何が起こるのかーーーー。
考えるまでもない。生み出されるのは、混沌だ。そして、世界の内包される者タチは、それが混沌であるということすら、気づくことが出来ないーーーただ一人唯一の例外である、タイムトラベルを覗いては……
※
今さらになって、なぜタイムトラベルが禁忌であるかを悟った。自身が元の世界に帰れなくなるだけなら、まだいい。しかし、ジャンプした先の世界は、ジャンプした私という存在だけで、崩壊する。
過去方向は、まだマシだった。たどり着く先は、基本的に自身の過去世界の重複存在だ。それほどの混乱は……無い。未来方向に比べれば、だ。
しかし、未来へのジャンプは、悲惨だった。私がジャンプしただけで、数億の人間が消滅した。私の子孫が、存在を否定されたのだーーー「私が子を成したことが無いという事実」に合わせて。つまりは、私が否定した。
……馬鹿げてる。なんで、そうなるの?
私は、世界を救いたかっただけだった。だから、過去へと跳んだ。それなのに、救うべき過去が、「救える過去」から変容してしまっては、意味が無い!
だから私は、未来に救いを求めた。だから、未来へと跳んだ。そして、得られた答えは、救いなど無いというものだった。
私は、跳んだ。なんどもなんども、跳んだ。世界を。時間を。
馬鹿だった私は、跳び続けた。ほんとうに、救えない存在だ、わたしは。こんなわたしは、生まれてこない方がーーーーー
兄貴!どうにかしてくれ!
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なんか、独自の設定が多いです。
他の作品の「猫とネズミのワルツ」とか「Tips」の方で主軸になってるテーマもありますので、興味をもってくださった方はそちらもお願いします。
猫で、「世界の発生」について。
Tipsは文字通り、Tipsです。概略だけなら、Tipsが一番かと。