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無限想歌  作者: blue birds
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歪曲する因果3:迷走する想い4:東&峰岸&栞

さて、兄妹は此処から別行動です。


兄は、仲間のもとに。


妹は、悪い子を閉じこめる、押し入れの中に……それぞれ、向かうことになります。

歪曲する因果3:迷走する想い4:東&峰岸&栞





 仮に、心の底から間違った末に、女子の入浴現場に突撃したあげくに木刀で昏倒させられたとしてーーーそんな状況下で目が覚めた場合、どんな顔で起き上がるのが正解だ?



(起きるタイミング、完璧にミスった……)



 薄目で周りを確認してみるも、見えるのは壁のみ。それも、相当の至近距離にそれがあるようで、つまるところ、俺は部屋の隅に転がされているようだった。あと、ちょっとだけ見覚えのある冊子が見える。あれはたしか、玄関と居間を仕切る冊子のはず。

 たぶん、おれは玄関側の壁にね転がされているようだ……このまま、ダッシュで逃げれるだろうか?

 


「くっしゅん!あ〜もう、最悪……あ、栞お帰り」



 突然の声に、びくりとしそうになった。

 声からして、主は峰岸。くしゃみから考えて、まだバスタオル?今起きたら、悲劇の再来か!?

 そして、さらに追加イベントで、栞が帰ってきたらしい!!! どうしろってんだよ! なんか良い言い訳あるか? いや、ない! ないけど、俺、どうする?どうすればいい?

 だれか、俺をこの状況から解放してくれーーーと、思ってたら。




「えい」



「あっっっっっっがあああああ!!!!!」




 前者が栞のかけ声で、後のが俺の悲鳴な。平坦に「えい」って声が聞こえてきて、それだけだったら大したことなかったんだが、なんか、脇腹に激痛が!

 なんか、あばらの下から内蔵ゴリゴリされててててえてt!!!!!!!





「やめろよ、おまえ!!!

殺す気か!?」




 あまりのショックに、俺は飛び起きた。でも、それで精一杯。なんとかして栞から距離もとりたかったが、いかんせん部屋の隅。縮こまって脇腹押さえるだけで精一杯だ。





「べつに、殺す気はなかったけど、なんとなくね。目、覚めたでしょう?

それに、今は痛くないはずよ。ちゃんと、出来てたし」



 あきれ顔でそう言う栞の奥に、引き気味に顔をつらせる峰岸が見えた。ちゃんと、服は着ているみたい。ただ、木刀は依然として手放してはいなかったが……





「……今は痛くないけど、さっきはめっちゃ痛かった。まじで、死ぬ方と思ったぞ」




 ぶつくさ良いながら、俺は立ち上がった。そうすると、身長差から栞の手がおれの脇腹くらいに来る。パブロフの犬よろしく、脇腹(正確には肝臓)がズキリと痛むも、なんとかムシ。

 平静を保ちつつ、俺は部屋を見渡した。

 そして。





「……じゃあ、俺はこれで。また、飯の時にな」


 

 一騒動あった為か、峰岸が大人しい。ぽかんとした様子で俺たちを見上げている。俺はそれを横目で確認しつつ、捨て置かれていた自分のボストンバッグを「両の手で抱え上げる」と、そそくさと玄関へと向かった。この機を逃せば、もう次はない気がしたんだ。


 なのに。





「ええええ!!!!!ちょっと、まて、あれ?どういうことだ!?」




 後ろから掛かる峰岸の静止を振り切る勢いで玄関に躍り出た俺は、信じられないものを目にした。

 


『スー、スー、にいさま……』



 

 それは、俺が此処までボズトンバッグでなんとかして運んだはずの、どでかい荷物だった。なんともまあ、幸せそうに寝ていらっしゃる……いや、だめだろ、これ。




「どうしたの、東君?

はやく、荷物おいてこないと、また先生に怒られるよ?」




 俺に視線と声を投げかける栞。彼女は、居間と玄関との境界線で、俺を見つめていた……なぜか、峰岸は追ってこない。まだ、今なら、ここから余裕で逃げれるんだが!



「いや、それが……」




 しかしいかんせん、どでかい忘れ物がある。

 それは、玄関ですやすやと眠るバカガキだ。こいつは俺にしか物理干渉できない体質のようで(床は見た感じOK?)。しかも、宿の急な鞍替えなんてイベントが発生した時に限って、爆睡しやがった!

 ここまでこいつを連れてくるのには、本当に苦労した。

 いくらか試行錯誤を繰り返したが、どう足掻いたところで、俺以外のものは、こいつに触れられなかった。手始めに普通にボストンバッグに入れたんだが(中の荷物は無視できたのはアドバンテージ?)、ヒモ抱えた瞬間床に残されるという、なんとも意味不明なマジック!


 だからといって、普通にこいつを抱き抱えてみたが、傍から見たら、「おまえ、なにやってんの?」って聞かれる格好になり……最終的に、ボストンバックを底から抱え上げて移動するってところで落としどころを見つけた。

 それでも、それを見られたキヨ達には、やっぱり「おまえ、なにやってんの?」って言われたよ!

 


 でも、ちょっと頬をはったくらいじゃ目を覚まさないこいつを運ぶには、こうするしかなかったんだ。まじで、寝付きよすぎなんだよ。まあ、それはそれだけ泣き疲れたってのがあるわけで、そして、泣かしたのは俺な訳で。


 んで、話を戻すと、なんでこいつが玄関で寝てるのかって話だ。 

 ……たぶん、峰岸がおれのバックを中に入れた時、あそこに取り残されたんだろう。俺が峰岸にぶちのめされた時、バックは玄関にあった。それが、目を覚ました時には部屋の中に移動していた。


 どう考えても、峰岸が動かしたとしか思えない。だとすると、当然バックの中のこいつは玄関に取り残されるはずで。




「……いや、なんでもない。じゃあな」



 俺は、そそくさとバカガキをまたいで、外に出た。いくらなんでも、あそこであいつを回収するには、無理がある。一人パントマイムするには、ハードルが高すぎた。

 ……とはいえ、あいつが目を覚ました時、ちょっとばかりあいつも混乱するかもしれないが、まあ、同じ宿に居るわけだし。




 ここまでくれば、あとで簡単に合流もできるはず。まあ、多少の文句はつくだろうが、それはかんべんしてもらわないと、こっちだって世間体ってもんがあるからな!
















そうやって、俺はあいつを残して、ロビーへと向かった。もちろん、鍵をもらうためだ。こんどこそ、正真正銘の、俺たちの部屋の鍵を……あれ?




「おれって、峰岸達の部屋の鍵、どうしたっけ?」




 ポケットを探ってみるも、見当たらない……マジで、どうしよう。

 鍵、なくしたし……



次回

謳歌と怨火:歪曲する因果5:寿小羽&久遠栞です。



悪い子は、暗い押し入れの中へ。ちょっとばかり、嫌なおはなしになります。

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