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無限想歌  作者: blue birds
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tips~シュレディンガーの鳥

 ネコじゃなくて、鳥です。

Tips~相克する因果と、重ね合わせの原理



 全ての世界には、一つの伝説が共通して存在している。それらは総じて「幸福の鳥譚」として名付けられ、語り継がれている。



その大筋は、こうである。






 アオイトリは、『存在』の発生初期から変わること無く、幾つもの世界と供にあり続ける。

 そして、その瞳にあまたの世界を重ね会わせ続けている。

 






 ……彼のモノ瞳はその本質故に、夜目が効かない。つまりは、彼の鳥は「闇」を見通すことなどで来るはずもなくーーーそのことは転じて、彼の鳥は光の中に存在するモノのみを、その瞳に映すーーー幸福の化身である。

 闇以外の存在を、無限に映す瞳を持つモノ。

 もし、彼の者の瞳を手に入れることが出来れば、そのモノは誰も到達し得ない、幸福の階層へと到達できるやもしれぬ。




                                              』






 ……じつに、くだらない話である。しかし、だとしても、その「幻想」は残念ながら、存在する。

 いつの時代も、どんな場所でも、その鳥の存在は真しやかにささやかれ続けていた。

 誰も見た者などいないくせに、「それ」は側に居ると。ほんの少し視点を変えるだけで、それは目の前に姿を現すとーーーそう信じられ、語り継がれて来た。








 もし。

 もし、彼の鳥が存在するとして、彼は私達をその瞳に映しているのだろうか?



 人とは、持たざるが故に、望む存在だ。そして、望むが故に、手を伸ばす。

 つまりは、その瞳を求める時点で、その、瞳にはーーーー






歪曲する因果3:迷走する想い3:東&峰岸







 とりあえず白目でネている馬鹿の横で、服を着た。そして今、私は考えているーーーさて、どうするかと。





(こいつ、いっこうに起きないわね……呼吸はあるから大丈夫だとは思うけど)






 どうするかと悩んだ所で、にっちもさっちもいかない。

 なぜなら、さきほど煩悩を撲殺してやったはずの馬鹿が、起きないのだ。


 そして、未だに白目をむいたまま。こいつを放置して部屋を出るわけにも行かないし、こいつを引きずって外に出たくもない……どう考えた所で、他の連中の肴になるのが目に見えているから。




(ほんっとうに、こいつってば、間が悪いんだから……そんなんだから、怨念なんてモノに取り付かれるのよ!)





 持っている木刀(煩悩破魔の剣と命名)でちょんちょんとつついてみても、やはり起きる気配はない……なんだか一気に気が抜けてしまう。

 そのせいか、わたしはなんだか色んなことがばかばかしくなってしまった。

 とりあえず、馬鹿から距離を取り、腰を下ろす。

 背を壁に預けて、今一度深く深呼吸をし、目の前の馬鹿を見つめ直したーーー本当に、自分でもこいつのどこに惚れたのかーーーなんて、頭を抱えたくなってくる。





 ☆





 私は、東利也という男子のことが好きだ。

 愛しているとは言わないけれど、好意は寄せている。



 その気持ちの始まりを考えてみるけれど、特に何かがあって、彼を意識しだしたのでは無いと思う。





 ……目の前にいる、白目をむいて眠る東と言う男は、「ただ」の男だ。どこをどうとっても、普通の男。

 それこそ、「まぁまぁ」の代表格みたいな男なんだ。



 ルックスは、まぁまぁ。

 頭の出来も、まぁまぁ。

 性格は、悪くはない。

 人当たりも悪くない。


 さて、じゃあ、コイツのどこに惚れた?わたしは、コイツのどこに好意を寄せている?

 私にとって、こいつはいったいーーーーーーなんてこと、考えるだけ無駄なのだろうか。






(入学を心より歓迎するよ、峰岸のお嬢さん……そして、久遠の姫君。我が学園へ、ようこそ。私がこの学園の設立者であるーーー)




 ……いつかの、記憶だ。わたしが、初めて、東利也を知ったときの記憶。思い返せば、最初の対面は、無機質な書類越しだった。



 今思い返しても、あんまりかっこ良くなかった気がする。たしか、こいつがなんなの?って思った記憶があるし。



 ……そんな書類を間には挟んで、成功者を名乗る男は、わたしたちの入学を心より歓迎すると謳った。わたしという『峰岸』と、栞という『久遠』が入学することを、此処より歓迎すると……


 それは、それまで何度も受けた通過儀礼だった。

 私はあくまでも、だれにとっても、『峰岸』だった。それは、栞にしても同じこと。

 私は『峰岸』の三女で、家を継ぐ立場には無かったが、それでもどこでも、『峰岸』として扱われた。



 ……確かに、家における私の発言力は、栞のおかげでそこそこある。けれど、上には三人の兄と、2人の姉が居るーーーー家の中でも、私の格付けは、末席に近い。





(さて、君たちにはぜひお願いしたいことがある。縁を紡ぐことを生業としている君にこそ、任せたい大役があるんだよ)





 ……成功者は、ただの年老いた老人だった。もし、あのとき隣に栞がいてくれなければ、失笑を浮かべていたかもしれないーーーそれほどまでに、彼のモノには、覇者としてもオーラが微塵も感じられなかった。





(表向き、この学園は私の後継者を集う機関となっているわけだが……この学園の真の存在意義は、ヒーローの育成にある。いや、彼らのための、環境と整えると表現した方がーーー)






 彼は、ヒーローのために学園を創り上げたと言ってのけた。この、縁の仲介を生業とする『峰岸』を前にして、彼は「それが本来の目的である」と語ったのだ。それは、つまるところーーー







 ミクロの階層と、マクロの階層。

 それを超える存在が、シュレディンガーの鳥です。



 これは、幸福の定義の方でも(戦争の発生機序=マクロ、感情論=ミクロ)絡めたいと思っているテーマです。



 

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