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無限想歌  作者: blue birds
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歪曲する因果3:迷走する想い2:朝霧&瀬戸&キヨ

東君の意図しない所で、各々の意志は働きます。


それらは、やはり各々が意図したわけではないカタチで、それぞれに影響を及ぼし合うことにーーーそれが、縁というものではないでしょうか?

 爆笑する瀬戸を前に、俺こと菅原清は、頭を抱えていた。

 ・・・・・・・いや、俺だけじゃなく、他のオトコ連中も、似たような感じ。そして、そんな俺たちを尻目に朝霧はしたり顔。さっきまで全力で不機嫌だったくせに、今は鼻歌でも歌いだすんじゃなかろうかというくらいに機嫌よく、普段なら絶対に口にしないような安物ホテルコーヒーを口へと運んでいた。



「ねぇ、菅原君、良い言い訳はあった?」




 微笑を携えて問う朝霧の前---つまりは、俺の目の前にもあたるわけだけど、その、目の前のテーブルには、一本の鍵が置かれている。何の鍵かといえば、部屋の鍵だ。

 鍵に彫られたIDは3012号。これを使えば、今夜の「俺たちの部屋」に入れる。うん、入れる。それは、別に問題はない。ただ、その鍵が今此処にあることが問題なんだ・・・・・・・




『東君が峰岸さんとこに夜這いしてたって!嘘じゃないよ!

うちの娘が峰岸さんの部屋からころがりでてくる東君を見たって!しかも、白目剥いてたって!きゃー!!!!どんだけ激しかったんだろうね!』



 遠くから聞こえてくる黄色い声で、さらに頭が重くなる。



『俺が聞いた感じは、東の夜這いじゃないな。

峰岸さんの方が、東を木刀で襲ったんだろ?で、殴打気絶させて部屋にお持ち帰りしちまったって・・・・・・あ?東には息吹さんがいるのにだって?そんなのシラネェよ。まぁ、あいつ、一回捕まっておきながらなんとか逃げ出そうとしたらしいな。

でも、結局捕まったと。それが、白目剥いて部屋から転がり出た――ときだっけ? んで、そんときたまたま近くにいた娘が、バスタオル姿の峰岸さんが木刀片手に東を部屋に引きずり込むのが見たって---聞いてる』




 先ほどから俺たちの周りを右往左往する東と峰岸の猥談。

 縦横無尽に駆け巡るそれら噂話のどれもが、真偽が見定められないものばかりだ。けれど、どの話にも共通していることがある。







それは、バスローブ姿の峰岸武者と白目廃人東の存在。そして、どの話でも最終的に、武者が木刀ちらつかせながら廃人を部屋に引きずりこむ・・・・・・・



「峰岸、大胆じゃない!?バスローブ姿で東を誘惑とは、いやはや。

しかも木刀って、それ絶対私のだよね? あの、嵐山で買ったやつ!」


 テンション高めに横でぎゃあぎゃあ騒ぐ瀬戸にジロリと一瞥くれてやるが、なんてことはない。普通にスルーされた。

 というより逆に、きらきらした目で見つめ返されたよ!



「いや、瀬戸よ。おまえ、ちょっと能天気すぎねぇ?」



 場違いすぎるテンションンを諫めようと、瀬戸の声をかけるが、なんてことはない。それどころか。




「いい気味。今日一日好き勝手やった罰があったのよ。でも、あの娘からすれば役得かしらね?

惚れた男に裸を見られたんだもの・・・・・・ふふ」



 小声で「貧相な体をね」と続いたのは、聞こえなかったことにしておく・・・・・・それはそれとして。





「なぁ、おまえら二人、マジで俺が鍵取りまちがえて渡したの気がつかなかったわけ?」





 ぽつりと、問うた。二人の女子に。

 大した意味もないだし、返答だって、予測できる。でも、聞かずにはいられなかった。



「わたしは、全然気づかなかった」

「わたしは気づいてたけど、おもしろくなりそうだったから、ほっといた」




 前者の返答が朝霧で、後者が瀬戸。二人の答えを信じるなら、瀬戸だけでも「おい、瀬戸!」って攻めたくなるが、絶対に朝霧も気づいていたとしか思えない……










 今日一日の俺たちってのは、悲惨なものだった。本当なら、俺たち男子の班と+峰岸率いる女子班inUSJで楽しい想い出をつくってるはずだったのに……それがおじゃんになった理由としては、女性陣の機嫌が悪過ぎたといったもの以外考えられない。

 機嫌が悪かった女子は主に二人で、まあ、班に三人しか女子が居ないのだから、もうそれだけで女子の不機嫌率は概算しても70%に届くかという感じだ。


 一人が峰岸で、一人が朝霧。二人の機嫌の悪さは「ドングリの背比べ+天井知らず」くらいで、要は、双璧を成してmaxに機嫌がわるかった。そして各々の不機嫌の理由は、別個にある。




 ……峰岸に関しては、まあ、だいたい検討がつく。

 我らが姫様の不機嫌の一つの原因としては、想い出作りの最終イベントの地にて、大好きな二人がそろって不在だったことがあると思う。

 東に関しては言わずもがな。あいつは、伊吹先輩とニャンニャンしてることが学校側にバレて、その罰則で別の旅館に軟禁されてた。で、もうひとりの、どんなことがあっても片時も峰岸の側を離れないはずの、側近で親友の久遠が……風邪で倒れたとかなんとかで、今日のUSJを欠席。



 たぶん、久遠の方は嘘だと思う。東の方はどうかは知らないが、明らかに久遠は「風邪」が理由で参加できなかったんじゃない。その根拠としては、「なんか色々あったけど、最後は皆で楽しく遊びましょう」ーーーってなっている中、峰岸が頻繁に席を外してーーー「だれか」と携帯で話していたことが、挙げられる。



 もちろん、峰岸が誰と何を話していたかなんて、知る由もない。けれど、基本的に峰岸は無駄なことが嫌いで、用件を分割して話されるとなると、普通にキレる。いわんや、携帯とかならなおさらだ。

 なのに、遠目に見る携帯に耳を当てた峰岸の表情ってのは真剣そのもの。多少の陰りはあった気がするが、少なくとも、電話先の相手への怒りはなさそうだったーーーってところから、絶対に相手は久遠しか思い浮かばない。少なくとも、「仲がいい」くらいの俺たちがチョロチョロ電話で話そうものなら、「そっちに行くから待ってなさい」か、「ハッキリもの言いなさいよ」のどちら二択が受話器越しに聞こえてくると思う。




 あと、電話の相手が「家」関連ってことも考えられるが、それはないだろう。それこそ、峰岸に限らず、『峰岸』ってのは総じて無駄を嫌う傾向にある。よく考えて、パッと動くーーーそれが、家訓であると。

そう、峰岸本人が言っていたしな。





……さて、それはいい。まあ、それはいいよ。峰岸が俺たちに対して自己中心的な行動をとるのは、いつものことだから。


 問題は、朝霧の方。

 こっちは普段から俺たちに優しく接してくれる、女神様みたいなやつで、基本的に礼儀正しく、和を重んじる性格。

 そのせいか、峰岸とは折が合わない。

 というのも、峰岸は身内には包み隠さず素を出すようで、要は、身近な人間に程、彼女は我がままになる。

 それは、久遠からすれば「甘えているだけ」らしいが、その甘え方が猫のアマガミのふりして、ライオンの一噛におよぶもので、だからこそというかなんというか、そう、「度が過ぎてる」。



 今日も今日とて峰岸は所かまわず、電話のために、席を立った。もちろん、断わりの一言くらい入れていくものの、数が数だ。だいたい三十分おきくらいに峰岸は席を外していたと思う。

 もちろんその間は俺たちも好き勝手は出来ず、結果として。





「あの娘、最近ちょっと調子に乗り過ぎじゃない?」



と、朝霧は「ぬっころす!」という気概を隠しもせずに、峰岸を影から見ていた(さすがに真正面からはやらなかったけど)。






 峰岸もバカじゃないから、俺たちの空気は察知してたいはず。それでも、やはり電話の方を優先していた。それで、結局、そんなこんなで俺たちはぴりぴりした一日を過ごすはめになったというわけ。










 一日を振り返っても胃が痛むだけなので、もう思い出さないことにしよう。

 なんにせよ、俺たちはUSJで一日を過ごし、旅行最後の宿である、大阪のビジネスホテルに荷物を下ろした。前日は京都だったが、今日は大阪だ。

 当然ホテルも変わってるし、部屋も変わってる。



 俺たちは各々の部屋の鍵を受け取り、荷物を下ろしに部屋へと向かった。普段の俺たちなら自分で自分の荷物を運ぶなんてことはないのだが(というより、やったらアウト)、最終日のホテルはあくまでも庶民が利用するホテルなのでそこは庶民に合わせるしかなかった。

 


 そして、俺たちは狭い部屋に荷を下ろすとすぐに、フロントへと向かった。幾分騒がしい気がしたが、それでも部屋よりはマシだった。

 それに、なによりも女性陣が居ないということだけで肩の力が抜けており、俺たち三人はそのへんのソファーに腰を沈めた。

 することもなく、だからといって夕食までだいぶ時間があったため、ソファーでくだらない話をだべっていると、朝霧と瀬戸がやってきた。



 朝霧は、相変わらず不機嫌そうだった。話を聞くと、部屋が気にくわないらしい……気持ちは分からなくもないが。

 んで、どんなカタチであれ、修学旅行の自由時間を一緒に過ごしてきたわけで、それなりの親近感ってのも出来上がってる……のか、当然のように朝霧と瀬戸も俺たちの話に混ざろうと、席をつくれと言ってくる。


 本当は大の高校生が5人も集まれる程広い場所じゃなかったが、瀬戸が俺の正面ーーーつまりは、金森が据わっているソファーの肘掛けに、さらには、朝霧が隣に座っていた坂石をソファーから追い出し、そこに腰を降ろすことで、場は収まった。若干坂石が哀れだったが、そこはスルーだ……ここまでは、いい。



 ここまでは、問題ない。問題は、此処からだ。

 そこから、なんてことない話をしばらくした。それはホテルの微妙な部屋に対する不満だったり、なんだかんだで楽しかったから学園に戻りたくないよなーなんていう願望だったり、あるいは、「ところで峰岸は?」という、女子が仲間割れしていないかを伺う何気ない会話だったり。




 で、この「峰岸は?」ってのに、瀬戸が「あの娘は今ーーー」って答えようとしたところに、東が現れた。 

 最初こそ、「なんで此処にいんの?」ってなった。それは他でもない、当の本人がそう思っていることらしく、「明日の便に遅刻するのもなんだからって教官に言われたんだけどーーーな?」と言い、だからといって、「同じホテルに戻してくれるなんて思わなかったけど」と付け加えた。



 ……内心、そこに居る全員が此処に居ないある人物の顔を脳裏に浮かべたろうが、だれもそいつの名を口には出さなかった。それは、無粋ってもんだから。




「ほら、鍵。荷物おいてこいよ」



 俺は確かに、目の前においてあったの「3012」の鍵を東に手渡したはずだった。そしてあいつは鍵を受けとり、荷物を置きに、俺たちの部屋へとーーー。


 ……たしかに、目の前のテーブルには瀬戸たちの部屋の鍵も一緒に二つ並べておいてあった。それも、確かだ。けれど、自分たちの鍵と女子部屋の鍵を間違えるはずがない。だって、俺は確かに、俺の「目の前」に自分たちの鍵をおいていたんだ。あとから合流した瀬戸も鍵をテーブルに転がしたが、それば俺の目の前じゃなくーーー正確にどこかは覚えてないが、少なくとも、俺の目の前じゃなかったことだけは、確かだったーーーはずなのに。





「ねぇ、聞いた?東君と峰岸さんがねーーー」






 俺の前には、「3012」号室の鍵が残っている。これは本来なら、東が持っているべきもので、それが、俺の前ーーーと、ちょっと横にずれた位置。

 「朝霧の目の前」に、残されていた。おれがぼけていないなら、鍵が移動しているとしか思えない。そして、鍵に足がついているわけでもなく。故にーーー




 自然と、朝霧の方に目がいく。あのとき、俺たちが東にほんの少し気をとられている時、こいつは何をしていたのだろう?





「なに、キヨくん?

何か、言いたいことがあるみたいね?」





 朗らかに笑みを返す朝霧を直視できない。たぶんーーーというか絶対、こいつが鍵をすり替えたんはずなんだが、でも、それを言ったところでちゃんと確認もせずに渡した俺が一番悪い。

 誰に責があるかと言われれば、俺だ。




「おまえ、何がしたかったわけ?」




 責は俺にある。だから、俺は朝霧に問うた。責任の所在ではなく、その、意図を。

 すると、こいつは悪びれもせず、こう、答えた。




「う〜ん?

べつに、なにも?ただ、コーヒーをおいしく飲みたかっただけ。

ただ、それだけよ」ーーーーと。

次回は、歪曲する因果3:迷走する想い3:東&峰岸です。


部屋に引きずり込まれた東君と、部屋に引きずり込んだ峰岸さんに、視点は変わります。

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