連想華:太陽 in USJ:峰岸燈火
さて、第一の分岐点の開始点にさしかかりました。
連想華:太陽 in USJ:峰岸燈火
ーーーーーーーーーーーーー連想華ーーーーーーーー
世界を二つに分けた姉妹の思惑は、余所にあった。
結局、少年と念を巡る「とある物語」は、対を成す世界の母体にとって、ただそれだけの、「とある物語」でしかなかったのだ。
故に、その物語は理の名のもとに捩じ伏せられ、悪意に飲まれて沈むはずだったーーーしかし、そうは成らない可能性もまた同時に、世界には在った。
誰かを想った誰かの心が、三次元の世界にブレを生じさせたのだ。
そのブレは、想いが連なれば連なる程に歪みを強め、遂には可能性軸という概念を世界に生み落とした。
要は、「連なる想い」が提示したのだーーー世界に。
三より成る世界に、四番目の概念を提示したのだ。
その概念こそが、可能性軸であり、別名ーーー「if」。
ifは、三の世界に夢幻を重ね合わせる、無限の法。
彼の法は、語る。可能性は、此処に在ると。故に、まだ終わりではないとーーーそして。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ごめんね、燈火』
受話器越しに栞の声を聞いて、私はため息を漏らしてしまった。
せっかくの旅行を投げうって一人登山をしてくれた彼女には悪いけれど、こればっかりは仕様がない。
『いいのよ、栞。それに、ありがとね。檻の方は手に入ったのだから、それで、十分よ。
後は、あの娘を……いえ、「怨霊」を、どうやってその中に放り込むかよね……』
怨霊を閉じ込める為の「檻」と、それを「閉ざす鍵」は手に入った。けれど、栞の話では、「檻を開く為の鍵」を、あのバカが持っているとのこと。
そうなると、怨霊を檻に放り込むだけでは、事が解決しない可能性がある。
『仮に、私たちが怨霊を檻に誘い込んで閉じ込めたとしても、東君が扉を開けて開放ーーーなんてことになったら、意味がないわ。あの二人の間にある絆はまだ若いから、よほどの事がない限り起こりえないことだけれど、あの爺のこともあるからね。それに、東君は彼女の影響をかなり受けちゃってるみたいだし……一筋縄じゃ、いかないと思う』
さらっと栞のブラック成分が出た気がするけれど、そこはスルー。変にツッコミを入れると、薮から竜が飛び出す可能性があるから。あと、「彼女」発言も、華麗にスルー。
あくまでも栞の彼女は三人称単数の「彼女」であって、男女のそれじゃないのだから、いちいち咎めるというのもおかしな話だ。
『なんとかして、今日一晩あいつを束縛すればいいわけでしょう?峰岸の力で、バカの謹慎を強めるってのはどう?』
それは、雑作もないことだ。
電話を一本入れるだけで事足りる。
『それじゃぁ、修学旅行終わってからのことが保証できないよ。
たしかに、今の怨霊をもとの念に戻すには、東君と二三日引き離すだけでいいけれど……結局彼が何らかのカタチで怨霊を連れ戻しに動かないとも限らないでしょう?そうなれば、怨霊は再びカタチを得ると思うわ。そうなれば、それまでの苦労は水の泡ね。
それに、東君が連れ戻しに〜って話は、かなり可能性としては高いと思う。
特に、学園に帰った後の彼の事を考えると、それは、あり得る話』
……栞の話は忌々しいけれど、まさにその通りだ。学園には、あの女が居る。仮に、今回あいつが怨霊を見捨てて日常に帰ったとしても、そこには「そういうこと」を絶対に善しとしないあの女が……!
「燈火、携帯がミシミシ言ってる。
ギブギブッていうふうにも聞こえるから、やめたげて?
……もう、正攻法しかないと思うんだ。東君に事情を説明して、きちんと「納得したカタチ」で諦めてもらう。それが結局は一番の近道だと思うよ」
携帯がミシミシ言うのは、仕方ない話なので、華麗にスルーしても、本題の方はそうはいかない。
……仮に、あいつを「まともに説得」したとして、あいつが諦めることは100%あり得ない。
逆に、火をつけるような結果に成りかねないし、だからこそ、今みたいに問題になっている。
『納得したカタチで同意を貰う前に、なにかしら工作しないとムリでしょうね。
なにか、案があるの?』
だからこそ、一枚何かトリックをかませ、勘違いさせる必要があるーーー「これで、いいのだ」と。そんなカタチで、あいつを騙す必要がある。
なるべく自然に、歪みを少なくしてーーーそうしないと、あのバカは気づくだろうから……肝心なところでは、ニブチンのクセにね。
一拍おいて、受話器越しに案が提示された。
それははっきり言えば卑怯者が考える事で、そして、弱者が起こす行動ーーーけれど、仕方がないし、仕様がない。
今の私たちには、時間がないのだから。だから、栞がいうように、二人の間に「不和」をもたらすことで、少しでも勝率を上げられるのなら、それは、それで、一つの手としてーーー認めなければ、成らないんだと思う。
不和は、いやなもんですよね。
でも、一人でない限り、不可避なものでもあります。
次回は。