夢想歌:縁を紡ぐ、久遠の園1:久遠栞
兄妹組はすでに夢を謳う段階に入ってますが、久遠さんはまだです。
silver bullet1:希望を補完するもの−20---3--
ーーーーーーーー虫眼鏡の向こう側ーーーーーーーーーー
夢であったならと、老人は想い続けていた。
目の前で起っていることが現実あり、自身が信じた世界こそが、
夢物語であったならばとーーーそう、涙を流し続けていた。
「虫眼鏡の向こうには、たったひとつの答えしかないんです。
だったら、やれることをやるだけーーー私は、そう、想います」
その答えはーーーYES。
くだらない戯れ言だと知りながら、彼がどうしても捨て去ることが出来なかった、あの日の願い。
……少女はーーーー久遠栞であったモノは、右手に咲いたリンドウを老人に差し出した。
それは、少女にとっては唯一の希望であり、翻って、老人に対する絶望でもある。
ーーーーしばらくの沈黙の後、老人はリンドウを受け取った。
受け取り、歯を食いしばった。それは結局の所、老人の敗北を意味していたのだ。
老人が信じた幻想は儚くも散り、そして、咲いたのだ。
空よりも濃い蒼の花は、老人に語りかけるーーー「あなたの悲しみに寄りそうモノ」は、此処にいると。
つまりは。
「私のすべてを否定するか、我が子らよーーーならば、もう何も言うまい。
そのかわり、見守ることにしようーーーーもちろん、勝算はあるのだろうな、久遠の末姫よ?この成功者を挫いたのだ。なにがあろうと、失敗は許されないーーーその覚悟の程、しかと見届けさせてもらう!」
子が親を超えるのは、少し先の話です。
次回は、夢想歌:縁を紡ぐ、久遠の園2:久遠栞
desu