謳歌:手を取り合う二人の姉妹
夢の前に立ちはだかるのは、いつだって、現実です。
それはほとんどの場合、辛く厳しいものですがーーーそのとき。
そのとき彼らの背中を支えてくれるのも、同様に、現実です。
夢を遠ざける現実と、夢を支える現実。
夢と成った幻想は、二つの現実により、カタチを得ます。
そしてーーー
謳歌:アカシックレコード:手を取り合う二人の姉妹
「ねぇ、姉様。
やっぱり私は、人の根源は悪だと思うの」
少女は、腕の中で眠りにつこうとしている姉を、抱きしめた。
「ねぇ、暦。
それでも私は、彼らに幸せになってもらいたいの」
少女は、自分を想い涙を流す妹に抱きしめられ、目を細めた。
「「だからこそ、私たちは此処では終われない」」
二人の少女は、弱々しい互いの手を強く握りしめ、祝詞を唱え始めた。
その祈りは、果たして届くのか。
その祈りは、誰に対して送られるものなのか。
それは、それを成そうとする当の本人達にすら理解されない程の、とらえどころの無い祈りだった。
それでも、その祈りは歌となり、確かな質感をもって、世界を振るわせる。
「いつか見た夢の続きを、ここに。
いつか信じたおとぎ話の結末を、未来に。
折り重なる幾多の世界を超えて、私たちは、たった「ひとつ」を証明する」
とらえどころのない祈りは、それがそうであるが故に、万華の世界を何の制限も無く渡りきり、遂には次元の中心へと到達した。
そこに在るのは、夢幻の王。
彼は、どことからとなく聞こえてくる子守唄に、耳を澄ませた。
歌は、尚続く。
「一つを二つに。
繰り返す命は、円環の果てに、真の根源を証明する。
われらは、信じる。たとえ裏切られると分かっていても、我らは尚、信じ抜く。
故に、我らは神となろうーーー神となり、世界の行く末を見届けよう!」
響き渡る歌声を、王は確かに聞き届けた。
そして、いつもどおりに王は、目をつむる。
目をつむり、再び夢を視ようと深淵へと降りてゆく。
次回は、
謳歌:相克する因果1:東利也&寿小羽
因果と聞くと、ふたつは独立した存在のように感じます。
もちろん繋がってはいますが、それだけです。
あくまでも、二つは別もの。ただ、それでも屁理屈をこねることで、二つを一つに丸めこむことも、可能なはず……?
逆転の一手は、此処から始まります。