夢想歌:占いの館にて2:未来視と、世界の終わり4:真名励起:瀬戸神流
夢想歌:占いの館にて2:未来視と、世界の終わり4:真名励起:瀬戸神流
「私があなたに求めることは、主に二つ。一つが、学園上空に開いているワームホールの使用許可を取り付けることよ―――もちろん、私のね」
本気でヒーローを捜す、本物のヒーロー。彼女は朝食を注文するように、学園の機密事項の申請を求めた。さすがの私も、胆が冷える。
「えーっと、ワームホールとは一体なんのことでしょうか?
そんな物騒なものが学校の上空にあるなんて、わたし聞いたこともなーーー」
白濁した眼球が、私を見据える。はっきり言って、逃げ出したい。
この人、要求が半端ない。実際問題として、こういう話はそれこそ、あの人自らがでばって来なければならないレベルだと思う。
「ワームホールの名は、ゲート012。南雲は―――あなた達が成功者と呼ぶ彼は少なくとも、そう呼んでいるみたいね。
……ゲート名は聞いたことが無くても、学園上空に異世界への扉が存在することは知っているはずでしょう?」
トントンとパネルを叩き、ここにあるはずなのと、竹山さんは再度念を押した。ここに、異世界へと繋がるゲートがあるのだと。
さらには、「無いとは言わせない」と、無言のプレッシャーを追加で畳み掛けてくる。
「……ゲートの使用に関しては、私の一存では決められません。一応、打診はしてみますが、期待はしないで下さい」
私の心が折れるのは、案外早かった。だって、怖いんだもん。
それに、この人が久遠と同じ穴の狢なら、隠し事したって、無駄も無駄だし。
ここにきて、既に私は諦めムード全開だ。
私は客なはずなのに、さきほどから注文されまくってるこの状況にキレても良いかなー?と想いもするけれど、たぶんダメ。
というより、絶対ダメ。
「久遠の娘に未来視をさせれば、簡単に話は通るわ。頑張ってね。
……さて、後はあなたの依頼対象でもあるヒーローについてだけれど、これに関して私が分かることは、彼の住所くらいなの。
だから後は、あなたに任せっきりになるのだけれど―――」
つらつらと依頼内容を告げる占い師を前に、わたしは「はあ、はあ、はあ」と、別に興奮しているわけではなく、ただたんに「はあ、はあ、はあ」と相づちをあわせていた。
疑問に思うことなんて、それこそ無数にあるけれど、深くは考えない。これが、殿上人と接する際に、凡人が基礎として身につけておかなければならない技能其の一なのだ。
……ところで。
「あの〜、お話の途中ちょっとスイマセン。さっきご紹介いただいたヒーロー候補さんなんなですけど、えっとーーー霞さんでしたっけ?
この人はこの人で良いんですけど、ウチのヒーローカップルはどうなんですか?一応あの二人は、あの人的にヒーロー候補のはずなんですけど」
ヒーローつながりで思い出した、二人の顔。
どちらも私の友人で、ヒーロー候補のはずーーーなのだが、此処に私が来てから一度たりとも、二人の名を竹山さんは口にしていなかった。
彼らがヒーロー足り得るなら、少しぐらい話題上っても良さそうなはずなのにと、そう考えた私の思考を見透かすように、竹山さんは言葉を紡いだ。
紡いで、彼女は最後に、わたしにこう言ったのだ。
「彼らはヒーローの原石ですらないわ。彼らには世界を救う力どころか、たった一つの「想い」を救い出す力すら―――でも、そうね。
たしかに、今の彼らがそうだとしても、あの娘も含めて彼らが「今回のこと」を乗り切ることができたなら、あるいは。
万が一の可能性の一つとして、「彼」はヒーローの座へと至るでしょうね」
次回は、
夢想歌:汝の名を問う1:東利也&寿小羽ーーーです。
占いの館を、出ます。