夢想歌:占いの館にて2:未来視と、世界の終わり3:瀬戸神流
世界の終末を救うのは、誰でしょうか。
夢想歌:占いの館にて2:未来視と、世界の終わり3:瀬戸神流
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ヒーローになりたいんだろ?なら、なればいい。
救いを望んでいる世界なんて、そこかしこにある。
……要は、そいつらを直視する気概があるかどうかだよ。
歴史上ヒーローとよばれた者たちはすべからく、そういった世界と向き合い、そして、戦ったんだ。
それぞれが救いたいと願った、それぞれの最大の敵である–――世界とね。
――――――――――――――――――――ヒーローの条件より 抜粋
「というわけで、ヒーローの居場所を教えて下さい。
それさえ分かれば、あとは拉致監禁でもなんでもして、学園に連れて行きますから」
そう意気込む私を前に、竹山さんは「たくましい娘ね」と笑っていた。
自分で言うのもなんだけど、人を拉致監禁するのは、逞しさとはまた別物な気がする。
「依頼内容は理解したわ。それで、ヒーローの場所よね。えっと、ちょっと待ってね……」
そう言って、机の下からipadを取り出した竹山さんは、google mapでいきなり検索を開始した。タンタンタンとパネルをタッチする音が室内に響き、そしてものの数秒後には–――
「ここにヒーローがいるから、あとは御随に」
ストリートビューで映し出されるているのは、ヒーローの自宅(?)。表札には岩城の名字が見え、その下には春香、哲生、霞と、おそらく……?
いや、まてまて。
「最近の占いって、こんな感じなんですか?なにか水晶的なやつとか、あとはその……世界がそもそも滅びるのかとか、なんとか……そういった感じに進めても良いのでは?」
確かに私はヒーローを探しているけど、こんなにあっさり見つかってもらっても困る。それに、世界を救ってもらうって一言で言っても(言ったのは私だけど)、何を持ってして「救い」とするかとか、そういう細かいところを詰めて行かないと、後々不味いことになりそうな気がする。
だから、軽い気持ちで世界の滅びに関して尋ねてみたんだけれど。
「世界が滅びるのは、6年後よ。
あなた、知らなかったの?」
……ん? 世界が滅びるは6年後?
今、竹山さんは、6年後っに–――え?
「この世界は今から数えてだいたい6年後に、消えてなくなるのよ。文字通り、消滅ね。この時空間そのものが、消失するの」
えー? なんか、私が思ってたより、事が深刻そうじゃない?
時空の消滅? なんで、そんなことが?
「理由は分からないわ。けれど、6年から先の「未来が無い」ことは確かよ。
嘘だと思うなら、久遠の娘にでも視てもらいなさい。あの娘は未来を「くみ取る」ことは出来なくても、「ただ視る」ことは出来るはずだから―――6年後の世界が「存在しているかどうか」くらいは、わかるはず」
……この人は。
「本物よ。私は、正真正銘の、霊視能力者。それも、この業界でも稀な「未来視」を行える、数少ない異能の一人よ。
……私の意図する「世界の救い」は、この世界の「維持」。あなたが、ふざけ半分で探しているヒーローを、私は本気で探しているの。そして、なんとかここまでこぎ着けた」
ふと、視線が竹山さんとぶつかる。
そして、此処に来て、私は初めて竹山さんの目を直視した。
彼女は、白内障で濁りきった、死んだ魚を思い起こさせる目で、私を覗き込んでいた。あれでは、視力なんてほとんど失われているだろう―――
「ヒーローへの仲介をお願いできるかしら? もちろん、断わるなんて連れないこと言わないでね?先が無いのは、あなたも私も同じなのんだから」
「今」を映さない瞳で「未来」を映す魔女は、優しく笑った。
そして、私は直感した。一人、見つけたと。
ヒーローを一人、探し当てたのだと–――わたしは、漠然とした感覚で、そう、「確信」した。
夢想歌:占いの館にて2:未来視と、世界の終わり4:収束点:瀬戸神流
この物語では、東クンはヒーローではありません(汗)
彼がヒーローになるには、まだ、「この物語」を別のモノとして紡ぐ必要があるからです……