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無限想歌  作者: blue birds
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 夢想歌:占いの館にて5:理の狭間:東 利也&寿 小羽

占いの館、東と小羽グループ終了です。

 夢想歌:占いの館にて5:理の狭間:東 利也&寿 小羽





gold gate:正しき選択



世界に存在する事象の多くは、相反する二つの側面を持つ。


ゆえに、それらは善と悪、または「正誤」という概念で人に認識されることが常である。




---それが、人の理。

二つのものを、正しいか間違いであるか。

あるいは、善か悪という枠に押し込めようとする理こそが、人という名の、世界の秩序。




私は、想う。

本来、世界に存在しないはずの善と悪を生み出す存在が我々ならば。




---人は、決して正しき選択をすることは出来はしない。

故にこそ、選択の果てに後悔するのだ---過ちを犯したと。



けれど、私は想う。

間違っても、いいはずだと。

正しくなくてもいいと。



私は、「間違いだけではない」選択を成せれば、それで十分だと。

だから、私は選んだ。




いや、信じたのだ。

いつの日か、青い鳥はその翼で---間違いだけではない選択の果てに、幸せになると。










「わたしは、兄さまと一緒にいたいです!」




魔法使いさんは、言ってくれた。

私という存在は、世界に認められていると。



たとえ、人の世に受け入れられなくとも、少なくとも、私を包むこの世界は、私を拒絶したりなんかしないと。




「お、ま、え、な・・・・・・」




兄さまが、ため息に混じりに私を見下ろしていた。

たぶんというか、絶対というか、兄様は私を成仏させたいと思ってるみたい。

でも。




「兄様は、一緒にいて良いと言ってくださいました!

迷惑をかけなければ、一緒にいてもいいと!」




「うっ」と、痛いところを疲れたとばかりに兄様が頬を引きつらせた。

さすがに数時間前の約束を反故にするのは、気が引けるみたいだ。



「私は此処にいてもいいなら、何処にもいきたくない!

兄様の側にいたい!だって、やっと・・・・・・」




 尻すぼみになって、肝心なところを兄様に伝えられない。


 今度こそ幸せになれると。

 かつての世界で私たちの幸せを奪った「アノオンナ」が存在しないこの世界なら、今度こそ幸せになれる---と。




 恐る恐る、兄様の顔を見上げた。そこから読み取れるのは、困惑。

 ・・・・・・私だって、私みたいな存在は在っていいはずがないと理解していてる。でも、一緒にいたい。




「でも、俺は---」



---拒絶されると、思った。

でも。




「間違いだけでは、ないはずです」



兄様をさえぎったのは、魔法使いさんだった。

先ほど落としたコーラを手でくるくると回しながら、魔法使いさんは「間違いだけじゃない」と、兄様を叱るように見つめていた。



「正しくはないかもしれない。いえ、小羽さんがこちらに残るという選択は、限りなく間違いに近い選択でしょう。

でも、間違いだけだとは思いません。たとえ、間違いだらけであっても、間違いだけということは、ないはずです」



 限りなく、間違いに近い選択---でも、間違いだけではない、そんな、選択。



「たとえ小羽さんを向こうに送るという選択が正しいとしても、私は、それが絶対的に正しい選択だとは思えません。

 どこか間違いを秘めた、限りなく正しい選択---結局は、その程度のものだと思います。ですから、わたしは「後悔しない選択」をあなたたちに選んでいただきたい。

 正しさで選ぶのではなく、後悔しない選択を。どんなことがあっても、その選択の結果を受け止めれるように」





・・・・・・兄様は、うなだれていた。

ついで頭をかき、「女ってみんなこうなんか?」とつぶやいた後。




「・・・・・・俺は、霊能力者でもなければ、魔術師でもありません。こいつのこちについては、たぶん俺はあなたよりも遥かに何も知らない。

 ですから、俺の判断でこいつのことを決めるのは、確かに、おかしなことですよね・・・・・・わかりました。

わかりましたから、俺はどうすればいいんですか?」





「・・・・・・兄様?」




あまりの突然の承諾に、思わずキョトンとしてしまった。

下から見上げる兄様の顔は、先ほどまでとは打って変わって、引き締まっている。まるで、昔の兄様が今の兄様に乗り移ったみたい。



「今回のことで、俺はあとから豪い目に会う気もする。そういう意味では間違った判断とも思うけれど、でも、お前をこの場で無理やり成仏させるのは、それよりも間違っているとも思う。

・・・・・・仮に俺が、お前のことをシロさんに頼んでやってもらったとして、で、まあお前は知らないだろうけど、そういうことを心の底から嫌ってるやつが身近にいてな・・・・・・

 そんなことしたって「あいつ」に知られたら、それこそお前を連れ戻しに俺をあの世まで飛ばすようなやつが、おれの近くにいるんだよ・・・・・・」




 兄様は、「あいつがお前のこと見えたら、「義妹」が出来たとかいって喜びそうだな」---と乾いた笑みを零し。次いで、「いろいろぶっ飛んでるからなー」とため息を漏らした。




「兄様!」




 トホホと力なく笑う兄様の首筋に、私はうれしくなって飛びつく。

その瞬間「ゲッ」て兄様が漏らしたけれど、それはそれ。思いっきり頬ずりをして、甘えてみる。


兄様は「やめろ」とか「熱い」と言いつつ私を押しのけようとするけれど、そうはいかない。にいさまは、良いっていてくれたんだから。


一緒にいていいって言ってくれたんだから、このぐらい近くで側にいてもいいはずなんだから!




「いやいや、丸く収まって良かったよですよ。

これにて、一件落着ですかねー」



いやー、ホント良かった---とつぶやく魔法使いさんは、一仕事終えた開放感からか、「のど」が乾いた様子。

何気ない動作で、持っていたコーラのプルタブに指をかけると、「いや、私も一服」とつぶやき、思いっきり缶を開け放った。



「「「あ」」」




 「あ」の後に続くのは、フシャァァアアア!!!という、コーラの噴出す音。なにぶん、魔法使いさんのコーラはさっき思いっきり床とゴッチンコしたやつで、その上魔法使いさんが無駄にくるくる回して遊んでいたものでもあって、つまりは容赦なく---




「おふろ、沸かすね」




 容赦なく私たちにコーラは襲い掛かり、兄様は占いの館で、お風呂に入ることになった。(もちろん、私は無事でした)


 

 




次回は、視点が瀬戸さんに移ります。


題名は、

夢想歌:占いの館にて1:未来視と、世界の終わり:瀬戸神流

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