第二章:無限想歌ー深ー繁栄と退廃:再誕の一歩:セントラル大聖堂
なんとなく、生活安定してきたので、また書き始めました。
第二章:無限想歌ー深ー繁栄と退廃:再誕の一歩:ユーリ・ベネット
世界とは、神の木に実った果実である。そして、人間とはそれらを食い荒らす害虫であると---それが、ベネット家嫡男である私、ユーりという人間の世界観だった。
「彼の世界との開戦の下ごしらえはどうなっていますか、ベネット?」
虫が・・・蟲が、ガサガサと音を立てる。醜く太り、あまつさえその肥大を精神の域まで浸食させた、哀れな蟲けらが・・・・私に、問いかける。
「我が世界と、彼の世界、両世界の友好の懸け橋としての交換留学をおっしゃっているのであれば、すべからく順調です。このまま行けば、各学園におけるテロを皮切りにした世界大戦が生じることでしょう・・・そして、当然の帰結として、我が世界は敗北します」
彼の世界には、我が世界を圧倒する因子が複数存在する。魔法使い至高たる始祖に加え未来からの介入者、そして、生ける願望器。それらの一つを相手にしたところで、我が世界に勝利などありえない。
それでも、戦争は起こる。いや、起こすのだ。
負けるための戦争を。終わるための戦争を。目の前の蟲が・・・蟲達が、この世界が、歩んできた路の重みを示すために。
「大いに結構です。衰退期に入ったこの世界は、一度終わらなければならない。そのための戦争です。ええ、そのための。ゆえに、必然の敗北。ゆえに、必然の勝利。私たちの、新たな門出の一歩を祝して」
貼り付けた笑顔に受け売りの謳い文句。それらを口にできることの幸せを噛みしめ、蟲は・・・我が世界セントラルが誇る最高学府の学長にして、元老院議長でもある男オルゾフは、カラカラと笑った。
それに、わたしも「我らが未来に幸の実りを」と返す。
「新たなる、再誕の使者として選ばれたこの誉、ベネット家嫡男ユーリの名において、必ず遂行して見せます」
私は、返す。空っぽの誓と信念を。私は口に出す。
それは醜くも野太い、目の前の男と同じ、ガサガサという耳障りな蟲の羽音によくにた声だった。
年取ると、体が言うことかきかない・・・・