第二章:無限想歌ー浅・深ー因縁再編・始祖の宴1:時の外側にて:彼方
筋道を違え、他人を貶める者たち。
しかし、そこにあるのは
Tips~少し先の未来:叶えるもの
何かを願うことは、罪ではない。
しかし、それらを叶えることは、罪である。
そして、そのどちらにも、是非の概念は適応されないーーーと、セントラルへ続くゲートを見上げたまま、アイシュは呟いた。
「セントラルの魔術協会は、すでに瓦解している。あそこにあるのは真理への好奇心ではなく、人間臭くも尊い、生の営みだけだ・・・・・・東と言ったか、貴様の名は? まあ、何者でも良い。なんにせよ、貴様が向こうで出会うのは、そういった「個人の願望」と、「それらが結びついた鎖」で「本来の筋道を捻じ曲げた」人間たちの巣窟だ。
そう、あそこにいる連中は、貴様の同族と言っていいだろうな。」
魔術世界の真理探究を唯一無二の使命と定めた機関、、、「学院」は、すでに本来の在り方より破たんしていると、アイシュは言う。
そして、そこに存在する者たちは、、、東の同族であると。
「ボトムアップからトップダウン型へ探究方針が転換したことが転機だったのだろう。あれから、純粋な知的探求に政治色が混じりだした。そして、今ではその色一色に染まっている・・・・・・何とも罪深いことだ。しかし、そこに是非はない。貴様が彼の者との共存を望んだように、あの者たちにも、それ相応の願いがあった。ただ、それだけだ。」
破たんした。
壊れてしまった。筋道は違え、本来あるべき世界がゆがんでしまっている。
しかし、その「ありさま」に、是非はない。
失われた純粋無垢が惜しくもあるが、それでも、現として在るのは、破たんである。
筋道を歪めるほどの願望。
それほどの想い。そして、それらの根幹を成す、「縁」という絶対矛盾。
「見てくるといい。あそこに残されたもので価値のあるものは、もはやそれだけだ。どれほど筋を違えようとも、他者の願いを虐げようとも、万難を排除して自身の望みにカタチを与える手腕には、一遍の価値を認めざるを得ない。」
望むのならば、「それ」を見よと、アイシュは東にささやく。
只人の丈を超えたところにある何かを望むのなら、やつらの在り方に臨めと。
最強の吸血鬼は、ものたざる者ーーーである英雄の原石を見下ろし、不敵
に笑ったのだった。
次は、彼方ちゃん視点の会合へ。
非常識な人たちがうごめく世界にあり、彼女は何を思うのか。