第二章:無限想歌ー浅ー因縁再編・始祖と仲介人2・峰岸燈火&アイシュ、バルツ
いつだって、力のある人は理不尽なものです。
第二章:無限想歌ー浅ー因縁再編・始祖と仲介人2・峰岸燈火&アイシュ、バルツ
放たれる殺気は静かで、向けられる視線は震えるほどに優しさと慈愛に満ちていた。
それこそ、この「お方」になら、殺されても良いとーーー思えるくらいに。
ーーーたった、一言。
次の一言で、全てが決まると・・・・・・私は、確信した。
確信し、そして、口を開いた。たった一つの、切り札を。衛星一機という聞くに堪えないカードでは無く、唯一無二の、私のーーーいや、「私たち」の、カードを。
私は、切った。
「バルツ氏、あなたが私たちを此処へ導いたはずです。東利也、寿小羽、伊吹由香ーーー聞き覚えのある名であるはずです。あなたが、夢を介して救った、三者の名です」
ーーーピクリと、魔法塚の眉が動いた。
次いで、怪訝そうな表情。その数瞬後ーーー
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第二章:無限想歌ー浅ー因縁再編・拡大家族:パジャマパーティ−乱入アイシュ、バルツ&寿小羽等
ちょうど、私が手元を狂わせてジュース一杯のコップを布団にぶちまけようとした瞬間だった。
「ああああああっって、あれ? なんで? ジュースとコップが、宙に浮いてる?」
私の手元から離れ、真下にあった布団一式を汚すはずだった飲み物一式は、中で静止していた。私は一瞬、重力なくなった? 地球やばい?
ーーーとまで思考したが、突如と湧いた声によって、それら全てがかき消された。
「貴様が小羽か? ふむ。たしかに、私の残滓が香るな・・・・・・しかし、私は介入した覚えが無い・・・・・・が、確かに私の魔法だ。いやはや、どうなっている?」
振り返ると、そこには見慣れぬ少女が出現していた。
そして、その目の前には目をぱちくりと大きく開いたまま固まる小羽ーーーの後ろには、これまた口をあんぐりと開けたシロさんが、ポテチを頬張ったカタチで固まっている。口の中が見えて、ちょっと汚い(今はそんなこと言ってる場合じゃないよね!)。
なんだか時でも止まったんじゃないかというくらい静寂な世界で声を上げ続けるのは、私の見知らぬ銀髪の少女だけだ。
「白髪、何を知っている? 全て吐け。この魔法は空色に盗まれた覚えが無いものだが、私自身施行した記憶が無い。まあ、世界録そのものへのアクセスが不可能となった現状では、ある意味では必然と言えるが、この個体のスペックからしても、記憶の欠落の線は薄い。であるならば、これは貴様の師以外にはあり得ない。」
視線をずいっと、シロさんの方に向けて好き勝手にしゃべる少女。
彼女は、シロさんの綺麗な白髪を白髪呼ばわりしたあげくに、さらに尊大な態度で私たちにーーー
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第二章:無限想歌ー深ー学園と世界の防衛機構-:よるべなき拠り所:アイシュ、バルツ&久遠栞&東利也
車を降り、霞み少年宅へと歩を歩めている最中だった。
とつぜん、世界から音と光が消え失せた。夜の波とは違う、完全な闇だった。
そして、それと同時に浮かび上がる声が1つ。
「っち、なまったか。時の停止程度で、この様とはな。通常空間の再構築が平衡して二カ所とは、いよいよもって、私も落ちたものだな・・・・・・」
俺が声の方にのほほんと振り返る間に、隣を歩いていた栞は言の葉による祝詞を完成させていた。
束縛術式が込められた数羽の蝶が俺の視界を横切ろうとしてーーーその刹那、光の残滓を残して消滅した。
それでも栞はめげず、「我、久遠のーー」と祝詞を唱えるがーーーって、それって例のリストカットのやつ? おいおい、それは止めろとーーー俺が、止める前に。
「うぐぐぐぐううううんん!!!」と、栞の口が何らかの力で塞がれていた。
唇を縫われたみたいに、栞の口は一向に開く気配が無く、うめき声を上げるばかり。そのため、血液供給用カッターも、空中で静止している。
「現状で抵抗するほど愚かとは、この世界の久遠の血も薄れたか? あの精霊種が未だに貴様ら一族を特別視している理由が理解出来んな?」
・・・・・闇から、浮かび上がる声。
尊大なその物言いと良い、現状の闇といい、俺には身に覚えがありすぎるものだった。なぜなら、そう、この声の持ち主はーーー
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第二章:無限想歌ー深ー学園と世界の防衛機構-:解呪:アイシュ、バルツ&伊吹由香
お風呂上がりだった由香は、もはやパンツを履こうとしているところだった。
そう、女子の尊厳たるパンツである。というか、パンツ一枚程度、よく考えるとそれほど尊大なものでもないかもしれないが、いやはやり、ノーパン女子とは・・・・・・・
「あ、そのせつはどうも・・・・・・・」
と、とにかく、真っ暗闇の空間にパンツ履きかけの姿勢で放り込まれた由香は、その現状に嘆くこと無く、目の前に現れた銀髪の少女に礼を述べた。
それに対し。
「貴様に「どうも」と言われる覚えも無いが、まあ、減るものでもないし、礼くらいは受け取っておくか? しかし、貴様からも私の残滓が感じられるな。はて、何が起こっている?」
パンツ一張羅でもめげない女子高生・伊吹由香の言葉に対し、覚めた目つきで銀髪の少女ーーーアイシュ・バルツは、問いで返す。
「いやーーーどうなってるんでしょうね? わたしも、良く分かりません。」
そして、尊大な少女の問いに、由香は由香なりに精一杯の誠意で介したつもりだったのだが・・・・・・
「話にならん。当事者全てを集めるか」っと言う一言で、その誠意もろとも、由香の自尊心は粉砕されることになる。
次回、当事者が全員参加の会合タイムです!