ーサブ:小羽&彼方:拡大家族ーパジャマパーティー1
夏が終わり、秋がくる。今年は冷夏だったように感じましたが、お米は大丈夫かな>
ーサブ:小羽&彼方:拡大家族ーパジャマパーティー1
主不在のアパートの一角で、パジャマパーティーが開かれている。
参加メンバーは計3人。小羽と彼方、シロだ。3人はひきつめた布団に寝転がり、神経衰弱をしていた・・・・・・訂正。2人が布団に寝転がり、小羽は宙をふわふわと浮遊している。
それはともかくとして、右最下段のカードを開きながら、シロが口を開いた。
「スカイウォーカーにプレインズウォーカー、あとはブックメーカーなどなど色んな呼び方があるけれど、それらが指し示す存在は、基本的に次元を渡り歩く旅人の総称なの。もちろん、一応は、私もその1人。ただ、今回利也君がスカウトに行ってる霞君は、頭1つ飛び抜けた存在なんだ・・・・・・あ、ダメだ。」
めくったカードは、スペードのエースとダイヤのクイーン。
見事な不一致だったため、ターンは小羽に移る——ーと同時に、小羽は静かに力を指先に集中させた。
遅れて幾ばく、シロが持つポータル(移動式世界門)が活性化する。
それと同時に、現世界の臨席である姉妹世界βの法則が流れ込み、小羽は通常の法則を無視してカードに触れ、真ん中左斜め右のカードをペロンとめくった。それを見て、シロは「だいぶ慣れて来たね」と、やさしい笑みをこぼす。対して、小羽自身も、うれしそうに「えへへ」と返す。
「霞さんは、「収束点」だって、兄さまが言ってました。なんでも、霞さんが願ったことは無条件に世界が叶えてくれるって・・・・・・あ、そろった」
一対のカードを手元に寄せると、ほくほく顔で小羽は次のカードへと手を伸ばす。それを恨めしそうに、彼方が半目で見つめていた。
「小羽、透視とかしてないよね? そんなチート仕様、そのなんたらカスミくんだけで十分だから・・・・・・ゲームにならないから止めてね?」
彼方の警告に、ビクリと小羽の手が震える。
その光景を見て、「ふふふ」と、シロが微笑む。
そして再度、霞という少年の話に戻る。
「願望機に、世界のるつぼ。あるいは、終息点。このちらも、プレインズウォーカーのそれと同じように様々な呼び名があるけれど、基本的にこれらは無機質な宝具につけられる総称なの・・・・・・本来は、ね?
でも、霞君は違う。人造の宝具では叶わないほどの奇跡を内蔵した、生ける「法具」。まさに霞君は、世界の秩序の肯定者。つまりは、世界の在り方を定める先導者ってわけ」
彼方の忠告から、いきなり悩みだした小羽をさておき、シロは彼方に視線を移した。大して彼方は、あきれ果てた顔でシロの真っ青な瞳を覗き込む。
「世界最大規模の次元の門を頭の真上に持ち歩いていて、どこの異世界だろうが、好きなときに好きな場所に行ける、なんたらカスミ君。加えて、どの世界に居ても、無条件に世界に好かれるから、どこの世界に居ても、彼の願いはたいてい叶う・・・・・・なんですか、それ? 世の中、不平等すぎません?」
肩肘ついて、彼方が半目で小羽に視線を移す。そして、「はやくしろ〜」っと、ゲームの進行を促していた。
「まあ、不平等なのが、世の中だから。それは、どの世界でも同じ。ある意味では、平等にね。だから、霞君も、例外じゃない。彼は生ける願望機であり、歩く次元の門でもあり、そして、それ以前に、ヒトなの。それも、まだ小学生。彼方さんより、年下なんだよ? けれど、彼を知るものは、だれも彼をヒトとは認めない。」
生ける、法具ーーーつまりは、意志を持つ、宝の道具。
霞という存在は奇跡であれども、ただ、それだけのこと。他の宝具の仕様と違う点があるとすれば、宝具そのものに、「自身の願い」を願わせなければ成らないという点。
しかし、それは裏を返せば、「年端も行かない子供に「願わせる」だけで、自身の願いが叶う」という、他の宝具に類を見ないほどの対費用効果を暗示している。
故にこそ。
「守護者を名乗る存在が、霞君を管理すると称して、独占しているんですよね? 1人が、RP3o1さん。未来から来た、スーパーロボット。もう1人が、始祖さん。最高位の魔法使いにして、最強の吸血鬼・・・・・・う〜ん、わけわかめ。そんなの管理されるくらいなら、わたし、普通のひとでもいいかな〜?」
小羽の横から、すっと手を伸ばした彼方がカードをめくった。
小羽が「あっ」と講義の声を漏らすも、時間切れ〜の一言であっさりと切り捨てる。彼方の手札には、どこで紛れ込んだか分からないジョーカーが、あっかんべ〜をして彼方を見つめていた。
次回は、もう一度だけパジャマパーティー