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無限想歌  作者: blue birds
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32番目の物語:前世からの因縁、不確かな絆(いま)、そして、遥かなる未来:無限に連なる、想いの歌:東利也&伊吹由香

とりあえず、終わりです。

おつき合いくださった方、ありがとうございました。

また別の作品も読んでもらえたら嬉しいです!

32番目の物語:前世からの因縁、不確かないま、そして、遥かなる未来:無限に連なる、想いの歌:東利也&伊吹由香



「それでは、伊吹先輩。私たちはこれで失礼します。東君も、また明日」



 俺への別れの挨拶は、あくまでも由香のおまけとばかりに・・・・・・いや、もういいか。今更そんなの気にしても、しゃあないし。栞らしいといえば、栞らしい、別れの言葉だ。


「それじゃあ、先輩、また明日!」


 そう、峰岸に比べたら、かわいいもんだ。あいつは俺の存在を、清々しいまでに無視してきびすを返しやがった。もはや、奴の言葉尻からは俺の存在の片鱗すら感じ取ることが出来ない。

 ・・・・・・最近富みに俺への扱いが、酷くなっている気がする。



「じゃあね、栞さん、またね、燈火!」



 夕日を背に、お辞儀をする二人。そんな彼女らに元気よく、手を振り替えす恋人——なぜにこいつは、俺のフォローをしてくれないのか。

 恋人がこんなぞんざいな扱いを受けていながら、なぜにそんなに笑って手を振ることが出来るのか?



「さ、帰ろ、利也。ひさびさに、下校が一緒だね〜」


 いつもお互いにバイトや部活動がわずかにすれ違うため、なかなか一緒に返ることが出来ない。そんな俺たちにとって、確かに今日という日は、たなからぼたもち的な有り難い日でもある。



「んだな。じゃあ、帰るか。つっても、並木道までだけどな・・・・・・」



 にししと笑う由香より先に、一歩を踏み出す。

 夕日に背を向けて、家へと歩みを進める。


 一歩一歩、家へと。俺の、今の居場所へと————俺たちは。







「にしても、ロマンチックな話だよね? 私たち、前世からの絆で結ばれてたんだよ? なんか、信じられないな〜」



 俺の先を歩く由香が、夕闇の空を見上げながら、呟いた。

 そんな彼女の表情には、憂いと切なさ片鱗が、透けて感じられた。

 そう、そこに、喜びや幸せは、ほんの僅かにしか感じられない。


「ロマンチックもなにも、その前世じゃ結ばれて無いだろ、俺ら。しかも、二人とも最後は殺されてるし。

 あと、後ろ向きで歩くの止めろって、前から言ってるだろ・・・・・・」



 俺は、口にする。由香の憂いと切なさの、根源を。

 由香の中に潜む、静かな不安の幻影を。俺は、直視し、それを言葉にする。



「って、きびし〜な〜、利也は・・・・・・もうちょっと、乙女の心を労るとか無いの? もう、いいムードが台無しだよ!」




 困り顔で目を細める、俺の愛しい人。

 その人のそれは、困った子を優しい目で見つめる、頼もしい姉のそれで。

 そして同時に、背中を預けることを許した相方への、後ろ向きな感情で。



「はいはい、俺が悪かったって! あと、空気が読めない男で悪かったな! でも、そんな「数百年も前の話」を掘り返されたら、誰だってそうなるって。それに、それだって人から伝え聞いたもんだろ? そんなの——————」


 そんなもの。いや、そんなもの、だからこそ。

 だからこそ、現在いまの俺たちには関係ないと。

 いま、このときを生きる俺たちには、それは過去の話でしかないと。


 俺は、暗に返す。言葉にせず、言葉にしたものを。

 言葉にならない想いとともに、それを言葉でない何かで、大切な人に伝える。



「・・・・・・はあ。もう、いい。もう、いいよ。利也の、ば〜か」



 ば〜かの、一言。それを合図に、由香はくるっと反転し、前を向いて歩き出した。そんな彼女の表情は、当たり前だが見て取ることは出来ない。ただ、彼女の一歩がさっきよりも幾分しっかりと台地を踏みしめている。そのことだけで、俺は今の彼女の表情を、心に思い描くことが出来た。


 そしてそれが正しければ、今の由香は、無敵の由香だ。

 太陽の、化身。数多の財閥が集う学園にあり、なお輝く「もたざるもの」。

 そんな、彼女になら。



「魔法とか超能力って、アホみたいな話だよな?」



「うん」



「此処じゃない世界ってのも、あるらしいぞ?」




「うん」

 


「俺たち、タイムトラベルしたんだっけ?」



「うん」 



「そんでもうすぐ、世界も滅ぶらしいし。」




「うん」



「それでさ、由香」






————————八つ裂きばやに、俺は言葉にする。

俺の不安を。俺の、恐怖を。

それは、つまり——————









「俺たち」、止められるかな?






世界の滅亡なんて、馬鹿げたものを。

世界の危機なんて、突拍子も無いものを。

魔法使いでも超能力者でもない、只の人間が。

過去も現在も、ましてや数刻先の未来さえ見透かせない、ただの人が。


かつて大切なものを、守れなかったくせに。

ただの数百万石の国させ、守れきれなかったくせに、今度は世界丸ごとなんて。



守るべきものを、奪われたくせに。

奪われ、そしてそのことすら、忘却の彼方に押し流されたくせに。

そのくせに、今度は、奪うこと無く、そして、奪わせることすら許さず。

世界に存在する、一切の大切を蔑ろにすることなく。そして、それらを踏みにじらせること無く。そんな、矛盾を。そんな、ありもしない理想を。



そんな、あるべくもない幻想を———————————





「できるよ。『私たち』なら、出来る。二人じゃ無理だけど、『私たち』なら、不可能じゃない。だから、大丈夫。だからきっと、いつの日か」




 いつの間にか、俺たちは分かれ道にたどり着いていた。

 右に行けば、俺の家へ。左に行けば、由香の家へ。





「そうか、『俺たち』なら・・・・・・『俺たち』なら、そうだよな。

できるよな・・・・・・いや、それも違う。やってやらなきゃな、ならないんだ。今度こそ。今度こそ、『俺たち』は。そして、「俺たちは」、今度こそ、あいつを」





 その日、その言葉を最後に、俺たちはそれそれの帰路についた。

 互いに交わした、最後の言葉は。

 それは、あまりも未成熟で、俺たち本人からさえ見るに耐えないものだったけれど。

 

 けれど、そこへは確かに「二人」で歩んで行けると。

 そしてそして、きっとその道中で、その「二人」はきっと、無数の矛盾を超えて。


 必ず、「三人」に、なれるのだと。そのときの俺は、思っていた。

 アホらしくも、「三人」になれると。そう、未熟であるが故に視野が狭く、だからこそ。


 そのときの俺たちは、本当に本末転倒ながら、完全に「家族」のことを失念していたんだ。






32番目の物語:前世からの因縁、不確かないま、そして、遥かなる未来:無限に連なる、想いの歌:巡る想い、紡ぐ未来:東利也&



 夕飯の支度をしていると、いつの間にかお星様が空であくびをしていた。

 ふと時計を振り返ると、午後六時を回ったくらい。


 今日がカレンダー通りなら、もうすぐ玄関が勝手に・・・・・・



「ただいまー」



 そう、玄関のとが勝手に開いて、声が聞こえる。

 声が聞こえて、私が駆けて行くと、おっきな背中が見えてくるんだ。


 その背中はまるまってて、どうかすると小さくも見える。

 でも、それは靴ひもをといてるせい。

 そして、、それは数刻もすれば。



「今日の飯なに?」



 数刻もすれば、大好きな人の顔が、私を迎えてくれる。

 そして、私はその人に今晩のおかずを伝えるんだ。


 毎日一品一品、些細なことを。まるで、さも大切な何かのように。


 そしてこりもせず、言葉にする。本当に、些細なことを。

 空気みたいな、透明なことを。あって当たり前を、口にする。



 そう、それは

 その、大切な、言の葉は。




「お帰りなさい、にいさま!」——————と。















今度は、何を仕上げるべきか。

all or noneを、第一案に考えてます。

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