keyA-2,D-2共通:無限想歌4:true end:存在確率0%:因果の、意味2
意味を求めること。
目の前の全てに、意味を求めること。
それは、因果と向き合うことを意味します。
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keyA-2,D-2共通:無限想歌4:true end:存在確率0%:因果の、意味2
tips~待ち続ける
「迎えにあがりました。さあ、いきましょう?」
差し出される手を前に、私は首を振る。
なぜなら、その手の主は知らない人なのだ。知らない人が、一緒においでと手を伸ばしている。
そして。
「あなたは、死んでしまったのです。此度の戦で、残念ながら・・・・・・そして、取り残されてしまった。
ーーーですから、私が迎えに上がったのです。今なら間に合います。さあ、私と共に、彼岸へ渡りましょう?」
笑顔と共に差し出される手。
その手は太陽の匂いがした。合わせて、風の匂いも。
「さあ、はやく。このままでは、あなたは世界に溶けてしまう。そうなってからでは遅いのです。此度の戦で命を落とした者のほとんどは彼岸へと渡り終えました。もはや、あなただけなのです。さあ。さあ、こちらへ」
掛けられる声の優しさに、涙が溢れそうになった。
だから私は、膝に顔をうずめて必死に食いしばる。
なくもんかと。ぜったいに、泣いたりなんかしないと。
だって。
『姫たりえるもの、涙を流すことは許されませぬ。私たちの涙は、民の涙なのです。私たちが涙を流せば、それだけで、城と城下に暗い影が降りるのです。
ですから、小羽姫。笑顔でありつづけましょう。民のためにも。家臣たちのためにも。どれほど苦しく辛くとも、笑顔でーーー』
「どうされたのです・・・・・・?いけません!
私を見てください!私を見て!意識を内に向けては取り返しがつかないことになります!さあ、この手を!こちらへ!」
だって、私は約束したんだ。
ぜったいに、泣かないって。約束したんだ。
それに、ここで待ってれば、ねぇさまが迎えに来てくれる。
・・・・・・婆やはねぇ様のことを悪く言っていたけど、そんなことない。
ねぇ様が女狐だったなんてこと、絶対に。
そうだ。だって、ねぇさまは素晴らしい人なんだ。それに、すごいんだ!
これまでもねぇさまは、私がどこに隠れたって、見つけ出してしまわれた。
あのときだって、そう。あのときも。それに、あのときも・・・
どこに隠れたって、最後にはねぇさまに。
だから、なにも、急ぐ必要なんかない。
どんなに必死に隠れたって、私は一度だって「」さまから隠れきったことなんてなかった。
だから、私はここにいる。私がいないって気づいたら、ねぇさまは迎えに来てくれるんだ。いつもみたいに。これまでどおりに。
いつもみたいに、「」さまが迎えに来てくれるまで。
それまで、わたしは、ずっと、ここでーーーー
tips~輪廻と、別離
「なぜです!? なぜ、それが許されないのですか!」
私は、死を司る者に掴みかかった。
この、彼岸という死者の世界を統括するものにして、また、迷う魂があればそれをこの世界へと導く偉大なる存在に私は、声を荒げて懇願していた。
「私が行けば、姫は必ずこちらに渡ってくださるはずです!
ですから、今一度私をあの世界へ。姫の元まで、導いてくださいまし!」
私は、命を落としてしまったのだとーーー彼らに、諭された。
そして、新たに生まれ変わるために、この世界で傷を癒していくのだとも。
それこそが、世界の理であり、また、命が遵守すべき道理であると。
だからこそ、「それ」は許されないと、彼らは語る。輪廻の輪には、流れがあると。
それを逆行することは許されぬと。
「けれど、あなたがたは向こう岸へと渡れるのでしょう?それに、私を同行させていただきたいと申し上げているだけなのです!なにも、蘇らせてほしいと申し上げているわけでは!」
彼らは、いう。
「それ」は、許されないと。「あちらのもの」を因として輪を遡行すれば、かならず「次」があると。
未練とは、そういうものだと。何も知らぬ私の家族と家臣、そして、明日も平和が続くと信じて日々を刻む民達。
「あちら」にもどれば、私はーーー彼らに何も告げずに、「ここ」に戻ってこれるのかと、彼らは問ふ。
「そ、れは! それは、ですが!」
声を枯らして、私は懇願する。
彼らは、言ったのだ。「ひとり」取り残されたものがいると。
「手遅れになる前に、手を打たなければ」とも!
それを! そんなことを聞かされて、私は!
私は、黙っていられるはずがーーー!!!
*
tips~まつこと
なにを、してるんだろう?
いまは、いつなんだろう?
くらいな。
さむいな。
くやしいな。
かなしいな。
さみしいよ。
はやく。
ねぇ、はやく。はやく。はや・・・・
*やくそくしたから
私は、なにをしてるんだろう?
ーーーそうだ、彼らになるんだ。彼らになれば、向こう岸に渡れるから。ただの魂がダメでも、彼らになったのなら、良いとーーー彼らが。
でも、あれ?
今は、いつなんだろう?
はやくしないとしないといけないのにーーー?
はやくしないと?
はやく、「なに」を?
・・・・・・・でも、はやく。はやくしないと。いっこくでもはやく。いっこくでも!
*まってるのに
さみしいよ。
さみしいよ。
さみしいよ。
さみしいよ。
さみしい。
さみしい。
さみしいさみしいさみしいさみしいさみしいさみしいさみしいさみしいさみしい
*きずあと
もうすぐ、わたしはしぬ。
しんで、むこうに、わたる。
もう、こんなにまっしろだから。
もう、こんなにもーーー?
これは、なに?いたみ?
なんで?なんで、いたいの?
こんなにも、まっしろなのに?
なんで?これは、なに?この、いたみは、いったいーーー?
*流れた、とき
とても長い時間が流れた。
とてもとても、長い時間だ。
その時間は彼女らをそれぞれの「始まり」からずいぶんと遠ざけてしまった。
一人の少女は度重なる漂白の果てにその傷をすり切らしてしまって。
一人の少女は孤独の果てに自身の境界を世界に明け渡してしまって。
それでも、繰り返す命は時を刻み続けた。
そして、その刻まれる時を孤独と共に、一人の少女は待ち続けた。いつしかそれは憎悪にという感情にすり替わってしまっていたけれど、その隣には確かに、交わしたことのない約束が寄り添っていた。
そして、もう一人の傷を抱えた少女は、
交わしたことのない約束を必死に胸に抱き続けた。それは忘却の定めに逆らうもので、「それ」は結局のところ、「誓い」と呼ばれるものだった。
約束なんてなかった。
あったのは切望だけ。
その切望は結局、人の身の程を超えていて、だからこそ、綺麗なままでは居られなくて。
もとの、綺麗なままの願いではいられずに、最後には、ゆがんでしまって。
歪にゆがんで泥にまみれた、罪の化身のような、その約束の時を。
いろんな者たちがいろんな思惑でもって、「願った」
だから、私も私の思惑でもって、「このとき」を見守ろうと思う。
そう、わたしは。
私は、彼女らにーーー
今が、約束の時なのだと。
もはや、ごめんなさい。
つぎこそは、約束の時です。