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無限想歌  作者: blue birds
120/145

keyA-2,D-2共通:無限想歌4:true end:存在確率0%:因果の、意味1

スイマセンが、約束紡ぐのは次回までまたぎます。





gold gate:二人の姫君-1



 今度こそ、あのひとを困らせてやる!


 この前はあんな風に見つかって連れ戻されたけれど、今度はそうはいかない。

 今度こそ逃げ仰せて、兄さまとあのひととの婚姻を破談に追い込んでやるんだから!



 ・・・・・・さすがに、相手方の姫が二度も両家の会合から逃げ出したとなれば、向こうだって面子があるはず。どう転んでも、兄さまとの婚儀は流れるに決まってる!

 


 だいたい、なんで兄さまをあんなひとに渡さなければならないの!?

 戦を終わらせるため?それは、余所の国の話でしょう?

 そんなこと、知らない!だって、私たちの国は、こんなにも平和なのに!

 それなのに、父様も母様も、私が子供だからって馬鹿にして!




 だいたい、あのひとが、兄さまの何を知ってるって言うの!

 私の方が、あのひとよりずっとずっーーーっっっっっと、兄さまのことを知ってるんだから!



 私は、認めない!

 私の兄さまは、私のなんだから!だから、絶対に認めない!!!



 わたしは、絶対に、あのひとを認めない!


 さあ、行こう!きょうは、どこに隠れようか?でもその前に、婆やの目をどうかいくぐるかなんだけれど・・・・・・






おてんば姫の孤軍奮闘記より抜粋










 

gold gate:二人の姫君-2





 今日も、妹君は城を抜け出されていた。

 私はもう慣れてしまったのだけれど、私の夫となる、あのお方はーーー大変ご立腹でしたね・・・・・・・確かに、これで何度目なのかしら?

 さすがに二度目の「あの時」は、父様も眉を寄せておられた。けれど、それでもなんとか私とあの方の結談はまとまり、今はもう何とも無い様子。




 ーーー妹君は、私の来訪に合わせて城を抜け出される。

 夜が明ければ朝が来るように、私が城に赴けば、妹君が城から姿を隠す。そして、そんな妹君を、私が・・・・・・





 ーーー妹君が城を抜け出される理由は、分かっている。

 そして、それは、私たちが出会った当初のそれとは、異なるものになっているということも、十二分に、分かっている。

 同時に、私が抜け出された妹君を迎えにいく理由も、また同様に。






 だから、迎えに行かなければ。

 元気印で悪戯好きで、そして、寂しがりやで照れ屋さんな、私の愛おしい、私の、妹ーーー




ある姫の決意より抜粋







keyA-2,D-2共通:無限想歌4:true end:存在確率0%:因果の、意味1:伊吹由香&マイク



「じゃあ、誰か小羽ちゃんを迎えに行ってあげてるんでか?

―――違うんでしょう?だれも、そんなことはしてくれていない。あの娘はいま、独りぼっちで、この世界にいるでしょう?」




 ーーーそう、少女は問うた。

 そして、その切実な問に対し俺は、「だったら、なんだ」と答えた。

 それはある意味では、悪意のこもった返答だったのかも知れない。



 ・・・・・・実際、少女が小羽と呼ぶ、あの霊は、俺の兄妹弟子でもあるシロに保護されていた。保護したあいつ自身は何の含みも無く、ただの善意からーーーそして俺は、「悪意に触れた霊を監視するという点」から、そのことを承諾していた。



 だからというか、なんというかーーー当然のことながら、俺はそのことを知ってはいた。しかしそれでも、おれは「だったら何だ」と答えたわけだ。





 「だったら―――迎えにいかなきゃ。誰かが、迎えにいかなきゃいけないんです。

もうじき、日が暮れます。夜が来るんです。それなのに、独りぼっちでいるなんて、ダメなんです。「一人」なら、まだいい。でも、「独り」だけは。それだけは、絶対に・・・・・・」



 世界には、僅かばかりだが善意が存在する。

 それは悪意や敵意、あるいは嫉妬や憎悪の陰に隠れてしまい、瞳の端かすむことすら稀だ。



 しかし、それは確かに存在する。

 そして、その善意を知ってか知らずか、目の前の少女は無理を押し通そうとしていた。




 迎えに行かなければと訴える少女は、善意を否定し。

 同時に、俺が迎えに行く手助けをすことに希望を見出す少女は、善意を肯定し。





 そんな矛盾した存在を眼下に、おれは苦笑いを零した。




 少女は端から見て哀れな等に、愚かだった。

 そしてその愚かさは、どこかの誰かさん達にそっくりだったんだよ。




『いいよ。私が負けたら、この躯をあげる。でも、私が勝ったら家にきなさい。ちょうど、徒弟が欲しかったところなの』ーーーそう笑い、俺に止まり木を差し出してくれた、あの青空のように。





『ねぇ、家にくる?私一人じゃ広すぎるからーーー君一人くらい、なんとかなるよ?』ーーーそう言って、小汚い猫に身を宿した俺を抱きかかえてくれた、今の、ご主人のように。



 そして。



「世界が眠りにつく前に―――か。くだらないな。

宗谷といい、お前といい、ご主人といい―――いや、人のことは、言えんのか」





 そして、

気がつくと俺はーーーそう、口にこぼしていた。






*



keyA-2,D-2共通:無限想歌4:true end:存在確率0%:因果の、意味:伊吹由香&寿小羽








「こないでください・・・・・・・・うあああああああ、、、、、くるなーーーー!!!!!」








夕暮れどきの、川原の土手で。

小さく萎縮した小羽ちゃんはーーー私を拒絶した。

身をよじりながら、「こないでください」と。

「おねがいですから」と。そう、わたしに懇願している。




だから。






「・・・・・・」





私は無言で、一歩を踏み出した。

一歩ずつ一歩ずつ、小羽ちゃんのもとへと歩をすすめる。



そんな私に呼応するかのように、小羽ちゃんから黒煙が溢れ出る。

あの、世界でーーー私たちが終わって始まった、あの世界で私をいたぶり続けた、あの、黒煙が。





「どうして? なんで? いや!!! なんであなたが此処に!?

なんで・・・・・・?どうして?」





崩れそうになる足を必死に動かしながら、小羽ちゃんは後退する。

「どうして」と「なんで」を繰り返しながら、必死にーーー





「わたしが、マイクさんに頼み込んだの。

小羽ちゃんはーーーー覚えてるかな?あの、光りの人だよ。こないだの世界で、「わたしたち」を助けてくれた、あの人を。


今はね、私のボディーガードしてくれてるんだ。というか、ホントは私が無茶しないかの監視役なんだけど・・・・・・・・そのマイクさんに無理やりお願いしたんだよね。

小羽ちゃんを迎えに行かせて欲しいって・・・・・・・そしたら、ここに連れて来られたの」





私は静かに、答えの一つを口にした。

私が知りうる限りの、答えを。でも、それは二つある問の、一つにか答えてないわけで。だから、当然なんだけれど。





「そんなことは、どうでもいい!!!そんなことは、どうでも・・・・・・・・逃げてください!はやく、逃げて!!!!」






小羽ちゃんから漏れ出す黒煙はうねりを上げ、頭を上げた。

いつかの大蛇が、私を見据えている。本来は、誰の目に移ることもない彼方の存在。それでも、私の瞳は、それが映し出されていた。



ーーーあの時の痛みが、私の心臓を締め上げる。

心が、「逃げろ!」と叫びを上げる。




「逃げられないよ。逃げるわけには、いかない。だって、小羽ちゃんを迎えに来たんだもん」




私は、さらに一歩を歩み出す。

ドクンと、世界が胎動するのが感じられた。同時に、小羽ちゃんのーーー






「ああああ、、、、ーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」



 



力が。

大きな力が。とても大きくて、黒い力が。

罪を償えということ共に、振り下ろされた。




それは、小羽ちゃんが呪い続けた時の分だけ。

それは、小羽ちゃんの孤独に寄り添った誰かの苦しみの分だけ。




500年の孤独の分だけ。

500年の憎悪の分だけ。





人一人叩き潰すには、十分すぎるだけの重みを持って、力は振り下ろされた。

私は、それを静かに迎え撃つーーーあの人の、力を借りて。それはとても歪んだ選択なのだと、理解していた。私の選択に、正しさなんてない。

間違いだらけだとーーーーそんな風に叱ってくれた、光の人の力を借りて。




私は、この間違いを選んだ。

外道の、道を。だから。




*



「・・・・・・どうした?その程度じゃ、この躰は砕けねぇぞ?」






目と耳をふさいで、うずくまった私に声がかけられた。

それは、どうしようもないくらいにねぇ様の声。私の殺意を逆撫でする、私の大好きな人の声ーーーを被った、あの・・・・・・





「なにが目的なんですか?徹さんもグルなんですか?まさかシロさんも?」






目の前にいるのは、ねぇ様の皮をかぶった化け物だった。

その化け物はシロさんの兄弟弟子で、当然ながら、シロさんの恋人である徹さんともつながりがる存在で。




ーーーここに私を連れてきたのは徹さんだ。

そして、そうするように指示したのは、シロさん。そしてそして、彼女を・・・・・ねぇさまの生まれ変わりであるあのひとを連れてきたのは、光の化け物で。







「なんで?どうして?なんで、こんなことを!?これも、罰なんですか!?

これも・・・・・・ひどい! ひど、すぎます!!!」





紅の世界で、私は声を枯らした。



目の前には、殺したいほど似にくいひとがいる。でも、殺せない。わたしでは、光の化け物に対抗できないと知っているから。



だから同時に、ホッとしている自分がいる。目の前の化け物がねぇ様の皮を被っている限り、私はねぇさまに危害を加えることができない。

それは、目の前の大切なひとの無事が保証されることを意味するのだから・・・・・・




殺したい人が、大切な人で。

大切な人だから、殺したくなんかないのに。




だから私は、「死」を願ったのに!それをシロさんも徹さんも知ってるはずなのに!なのに!!!





「俺に思惑はねぇよ。まぁ、俺以外の連中はどうかは知らんが、少なくともシロも俺も、あと、シロの腰巾着もーーー悪意はねぇよ。

ただ、望まれたから応えただけだ。人でなし呼ばわりされるのは、筋違いだな」




一歩、化け物は踏み出す。

もはや、私とねぇ様の間には数歩分の猶予も残されていなかった。少し手を伸ばすだけで、互いに触れられる距離いる。



ねぇ様の体は完全に、私の黒煙に包まれていた。

本来なら、ねぇ様は憎悪の熱でその身を焦がしているはず。


でも、私の力はねぇ様には及ばない。青い光がねぇ様を包み込み、守っているんだ。そしてその光からは忌々しい光の人の気配ではなく、ねぇ様の息づかを感じた。





「まぁ、だからといって、この現状にまっとうな筋なんてもんはないがな。あるのは、まんま現状だけだ」





ねぇ様の声で、化け物が語る。

ほんとに、筋の通らない話だと。

そう言ってーーーねぇ様はねぇ様のものではない苦笑を浮かべた




「ただただ、「おねがいします」だってよ。この女は、馬鹿の一つ覚えに「おねがいします」と・・・・・・頭下げるばっかりなんだよ。こっちは「理由」を求めてたんだがな。

「こいつがお前を迎えに行く道理」と「俺たちがそれを手助けする道理」のふたつ。たったその二つに答えるだけなのにな?」





化け物は、笑った。

そして、続ける。






「さっきおまえは、「どうして?」って口にしたな?

この女に、「どうしてこんなところにーーーお前のもとに来たのか」ってよ?

ーーーはは、あの女、はぐらかしてただろ?俺に連れてきてもらったとか、なんとか・・・・・・おぼえとけ。

これが、大人のやり方だ。俗にいう、「すっとぼけ」ってやつだ」






化け物は、「答えなんかなかったんだよ」と、笑った。

ねぇ様が私の元を訪れることが許される道理なんて、これっポチもなかった。

合わせて、シロさんたちがそれを手助けする道理も。




「お前とこいつの会合は、筋を通そうとしても、通らない話だ。だが、どうしてもこいつは諦めきれなかった。だからこいつは、頭を下げるしかなかった。通らない筋を通すには、道理を捨てる必要がある。それは自分だけじゃなく、周りにいる連中も含めてな」






筋が通らないから、道理を捨てた。

叶うことの許されない結末を望んだが故に、ねぇ様は世界ーーー人の世と、この世界の禁を犯した。

いや、犯そうとした。でも、出来なかったから。


それでも、一人じゃそんなことできるはずもないから、ほかの人も巻き込んで筋道を蔑ろにした。



その結果が、自分の中に目の前の化け物をーーーー




「勘違いすんな。今この黒煙を退けてんのは、こいつ自身の力だ。おれは、それを「拝借」してるだけだ。まぁ、この荒技が使えるのは、これっこきりだがな?」






私の考えを見透かすかのように、化け物は言葉を紡いだ。




「俺はな、他人の体を乗っ取れるバケモンなんだよ。数千年の間、そうやっていろんな躰を渡り歩いて来た」




化け物は、いう。

自分は、乗っ取った躰と共に合わせて進化する魂だと。

故に、乗っ取った躰ともに歩む存在だとも。


そして、彼が渡り歩いた数千年の月日の中でも今回は例外中の例がと言って笑った。

まさかーーー乗っ取る躰に、その代価と覚悟を問うことになるなんて、初めてのことだと、笑ったのだ。




「俺たちは乗っ取った体のリミッターを無視して活動できる。無理やり、その躰の100%を引き出すことができるんだ。逆に言えば、乗っ取ってる間は、その躰の100%を超えたことはできない。だから今の俺は、あの世界でお前を握りつぶした力を行使することは出来ないんだよ」






彼は、告げる。

つまりはーーー今、私の黒煙を退けている、この、青の力は・・・・・・













「伝言だ。

こうなったときのために、こいつから言付けを得ている。今は俺の下でスヤスヤとねてる、この、バカからの言の葉だ。よく聞け。そして、選べ」







目の前には、青の光とねぇ様の皮をかぶった化け物が佇んでいる。

ねぇさまでない笑顔で。

けれど、ねぇ様の声で。

ねぇ様の手を。




私に、

ほかでもないこの私に手をさし伸ばしてーーーー












「ぜったいに、どうにかするから。今はダメでも、いつか、かならず。だから、どこにいもいかないで。「私たち」を、「二人」にしないで」とーーーー







もうすぐ夏ですね。

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