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無限想歌  作者: blue birds
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夢想歌:占いの館にて1:人の理と、世界の理1:東 利也&寿 小羽

夢想歌:占いの館にて1:人の理と、世界の理:東 利也&寿 小羽



 はっきり言って、頭がついていけてない。

 もう、いったい何が自分をそこまで追い込んだのかもわからない位に、頭の中は疑問符で埋め尽くされていた。




「なぁ東、携帯貸してみ?」

 ーーー隣の電車で栞たちとコソコソと密談を交わしていたキヨは帰ってくるなり、俺にそう言った。

 親友の挙動不振に若干疑念を持ちながらも、俺は、キヨに携帯を渡したーーーー瞬間に、携帯をまっ二つにへし折られるというなぜの苦行……意味が分からない。

 久々ガチの喧嘩に発展しそうになったが、栞に「あなたのためだと、今晩にでも分かるから」と、振り上げた拳と怒りの方もふわりと止められてしまった。




 まだ、驚いたことはある。




「あ、そうだ。今日のプランニングはキヨ君達に任せるつもりだったけど、予定変更です。今日は一日中、私お勧めの場所で遊ぶことになったから、よろしくね、東君、燈火。

 駅を二つ向こう今からいくところは東君にとっては面白くないかもしれないけれど、為にはなるところ。ちなみに燈火は女の子だから絶対に興味あると思うなー」



 フフフと悪戯っぽく笑ちらを見つめる栞の目を見てイラッとしたのは、ここだけの話。

 なんとか風向きを変えようと、「せっかくの旅行なのだからいろいろ行きたいところがあるだろ、皆(主に男性陣)」ーーーと味方してくれそうなメンツを見渡すが、全員が全員、「よし、それで」と、裏で合わせてきたとしか思えないシンクロ率で首を縦に振っていた……で。








 それで、だよ。

 それで、俺たちは今、「占いの館」の前に立っている。






 そこは、俺たちが目指した都心部への駅を二つ前で降り、さらにタクシーで30分ほどひた走ることでたどり着けるほどの、辺境。

 占いの館の周囲には、昭和のにおいがしみこんでいそうな家々が立ち並んでおり、それ以外のもので、特に目に付きそうなものは無い。つまり、俺たちは完璧にただのど田舎のただの住宅街にいた。





「いや、伊藤に紀一、おまけにキヨさんよ。おまえら、占いとか好きだったけか?」



 友人にさりげなく撤退を促してみた。けれどやつらは一言、「おまえらのせいで、人が集まるところいけねぇんだよ」とドスを効かせた声でにらむばかり。



 ・・・・・・・いや、「おめぇら」って、俺と峰岸か?

 俺たちはーーー少なくとも、俺は何も人目を避けなければならないような後ろ暗いことはしていない。ならば、峰岸のほうでなんかあったのことに、俺が巻き込まれたか?




 さりげなく、峰岸を盗み見た。当初こそ、「占い師? そんなの、私は栞だけで十分だし」とぼやいていた彼女だが、今はなんだかんだで目をきらきら輝かせ、古びれたぼろアパート兼占いの館を見上げていた。



 ・・・・・・館じゃなくて、どうみたって、アパートだった。

風にはためく布団には生活臭が漂い、開け放たれた窓からはさわやかなロッククラシックが鳴り響いている。


 



「じゃあ、みんなよく聞いて。占いの館について、説明するから」



 手をパンパンと鳴らし、栞は始めますよと俺たちを集めた。

 そして明かされる、占いの館のシステム。それはーーー





「館には、ドアが12戸あるでしょう?一階に6戸と、二階に6戸。

 各人、好きなところに入ってもらって大丈夫です。各部屋には、個性豊かな占い師の先生がいらっしゃるので、後はご随意に。料金設定は基本的に1時間で5万円と東君には割高なものですが、そこは大丈夫。ここは私、久遠の家とつながりがあるところだから、皆を無料で占ってくれます!だから、お金のことは気にせずに!」





・・・・・・・とういわけで、俺たちは無償で占ってもらえるらしい。

それはそれでいいのだが、俺に占ってほしいことなんてーーー



「いや、あるか。てか、あるよ」



 俺は自分の横の、誰もいないはずの空間に視線を落とす。

 そこには、興味深げにアパートを見つめる幼女の霊が一人。


 


 占いなんて、日ごろはぜんぜん信じない俺だけれども、このアパートのどこかにこいつをどうにかしてくれる占い師がいるかもしれないと思うと、自然と胸が高鳴った。




「なら、俺はあそこの部屋で」



 占いに現を抜かしていると悟られないように、一歩ずつずつ気だるげに前へ。

 数秒後、俺は一階の右端からドアの前に立っていた。そして、そのドアノブに手をかけようとしてーーー



「あ、東君は指定で二階の左から一番目の部屋に入って。そうしないと、料金発生しちゃうから」



・・・・・・もちろん俺は二階に上がり、左端のドアを開けたよ。だって、他の連中はともかく万単位の金なんて、払えないからな。なんで、俺だけ指定されてんだ?

まあ、いいけど。だって、どこに入ればいいとかあるわけでもないし。









ドアを、開いた。

そして、俺は踏み入った。



それは、おんぼろアパートの玄関先のこと。

それは、占い師が集うという館のこと。


そしてそれは、その筋では有名な、異世界の魔法使いが住まうという、伝説の領域の軒先のこと。





「いらっしゃい、お二人さん!異世界の魔術師、シロの部屋にようこそ!

どんな悩みでも、この私がずばり解決して差し上げます!」





 それが最初の一言だった。

 元気いっぱいに笑う異世界の魔術師がーーー俺と幼女の霊に対しくれた言葉は、暖かくてどこか懐かしい、そんな青空にも似た歓迎の言葉だった。

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