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無限想歌  作者: blue birds
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keyA-2,D-2共通:無限想歌4:true end:存在確率0%:脚本と、結末

物語の脚本は、筋道を違えて。

(世界観の回収です)


keyA-2,D-2共通:無限想歌4:true end:存在確率0%:脚本と、結末


 世界には理が存在している。それらはあらゆる事象の枢軸であり、ある意味では、物語そのものとも言えるものだ。



 だからこそ、物語始まったと同時に終わっている。

 水素と酸素を燃やせば水ができるように、とある念と少年少女をめぐる物語は、しかるべくして、「破綻」で結ばれる。



 しかし、その「破綻」の形には無数にあった。

 それは「念と少女、どちらかの脱落」に始まる明らかな破綻から、「絆が紡ぎなおす再縁」というような、ホンの少しの誤りを秘めた、限りなく正しい「破綻」まで。



 ―――いずれにせよ、彼ら三人の物語は「破綻」するしかなかったのだ。

 だからこそ彼は―――この物語の脚本を描いた学園の長である成功者は、「限りなく正しい破綻」を望んだのだ。

 もちろん、彼がそう望んだのは、ただの善意によるもので―――ということは、ない。




 彼には彼で、この物語の結末の先に、欲するものがあったのだ。




 成功者である彼が望んだもの。

 それは、情報戦略上の「新たなツール」であった。

 それは、「あらゆる物理制限を無視し、しかるべき情報を集めるツール」であり、同時に、それに類する者への防御手段。




 端的に言ってしまえば、情報のある場所へと何の制限もなく侵入できる存在と、それらを防ぎきる存在。

 それはつまり、「霊という属性を持った諜報員」と「霊を抹消できる存在」。



 ・・・・・・仮に、だ。


 仮に、この世界のトザマにいる霊を、自由にスパイとして送り込めるとしよう。

 逆に、地震がそんなものを送り込まれると仮定すれば?





 「それ」は、「武器」となる。

 ミサイルを、核を、そして、異世界の魔法という奇跡ですらも凌駕する、抑止の力。

 撃たせずに、また、使うことを望むことすら許さない現状という名の「縁」を組み上げることを可能にする、最強の武器となる。







 ―――そう、彼が思い描いた脚本では。

 この物語においては、その武器へと「寿小羽」は至るはずだった。

 そのために彼は少年と少女を学園へと招き、修学旅行を通して、「念へと成り果てた少女」へと導いたのだ。

 



 もちろん彼が望んだ武器は、他者の憎悪という不確定要素を無制限に取り込んだ「寿小羽」ではない。絆の奇跡でもって、あるいは、彼岸の法則である「忘却の御手」によって、憎悪より切り離された、「絆による括りをもつ少女」。

 そう、通常の「主従」の関係で括られた霊ではなく、「兄弟」あるいは「姉妹」といった、あまりにも幼く馬鹿げた縁で括られた霊を―――手中に収める。




 それは、唯一の存在だ。

 世界に数多の霊はあれども、それらはすべて例外なく、「主従」の縁で括られている。故に、それらは全て同一の性質を示し、転じて、それらに対する対策を寝ることは造作もない。

 だからこそ、霊はその自由度にそぐわない役回りしか与えられない。彼らは、使い魔として使役されることはあっても、スパイとして敵陣に送り込まれることはないのだ。 もし、スパイとした贈った先で霊の形を解かれ念に遡行された場合、「霊視」により自身の陣営の情報を漏洩させることにもつながる。

 

 しかし、もしそこに、「例外」が存在するとすれば?

 例えば、どの世界においても前例のない、「兄弟」などという、そんな唯一無二の縁を前にして、果たして対応できる存在が、どれほどあろうか?しかも、基本的には霊に干渉することの出来ない、この、姉妹世界αで。





 ・・・・・・・とはいえ、それはもう叶わない絵空事だ。

 どこでどう食い違ったのか、「兄弟の絆」も、「忘却の御手」も、成功者の手元にはない。この結末は、既存の世界の法則に従っていれば、「ありえない結末」だった。



 そう、この物語の結末に残されたもの。

 それは、「傷だらけの魂」のみ。




 憎悪をにまみれた霊に、彼岸の力を覚醒し損ねた少女。そして、年不相応にも、ヒーローを目指しだした、無力な少年。

 そんなもの、手元に置いておいたところで、何の役にも立たない。彼らにかかる維持費とて、タダではないのだ。もちろん、成功者である彼にとって、それほどの負担でもないのは事実ではあるが。






「・・・・・・」





 しかし、成功者が望むなら、彼は此度の物語を再び紡ぎなおすことができる。

 そう、物語は、まだ終わりではないのだ。

 例えば、「寿小羽」に、もう一度「別の兄」をぶつけてやればいいだけの話。

 なにも、「兄」の転生体は「東俊也」だけではない。




 当たり前の話だが、輪廻による魂の循環が絶対であるならば、両世界での人類の数は一定値となる。そう、輪廻が1タイ1の関係で起こる現象ならば。



しかし、実際にαの人口は年々増え続けている。もちろん、それに伴ってβへ転移する魂の数も同様だ。これには、「αの優位性」という法則が見出されており、αにおける「魂の受け入れ可能な肉体」の数を基準として、その数に応じて、「還る魂」は分裂、あるいは融合による縮小を果たす。




 ―――これは、ある意味では魂の尊厳を地へと叩き落とすことを肯定する法則であり、故に、多くの知識人には受け入れられていない、外法の論理である。そして、同時に、事実なのだ。




 故に、東俊也意外にも、「兄」は存在する。同時に、伊吹由香ではない、「姉」も。

 それらをうまく使えば、「できそこないの霊」を完成させることは可能だ。ただ、幾分か条件は劣化することになるがーーーしかし、やり直しが効く事実に変わりはない。







「・・・・・・」








 そう、この物語のやり直しが効くという事実。

 その事実があり、そして、それとあわせて存在する、「やりなおし以外の結末」という、代案ともいえる選択肢。成功者は、さきほどまで、「代案」でもって東を懐柔しようと心に決めていた。その代案では、寿小羽を今のまま安定化させる「人形ヒトガタ」の技術を提供する代わりに、彼の下で、当初の予定に即した形で、働くというものでーーーー。


 とはいえ、その代案は感傷が過ぎていると、彼自身が感じるところでもある。

 しかし、彼とて、鬼ではなないのだ。

 今回の結末は彼にとって望ましいものではなかったが、同時に、彼以外の幾らかの人間にとっては尊いものであると、理解していた。故に、この結末はこれとして、受け入れた上で―――これまでと、そして、これからの彼らに投資への見返りを、描き直していたのだ。










 しかし、彼は数刻前にそれも手放した。

 それを彼に決断させたのは少年の下らない決意の言葉ーーーーヒーローに、なる。




 少年は、口にしたのだ。ヒーローに、なりたいと。

 今すぐにでも、なりたいと。そして、彼がそう成ることをを望む、歴史を背負う者が現れた。それは書面上で交わされる薄っぺらい契約ではない。彼らは、自身の意志でもって、新たな縁を紡いだのだ。





 であれば、それは十分すぎいる対価だった。

 ヒーローとなることを決意した彼は、因果をねじ曲げて「この、あるべくもない結末」を呼び込んだ者の一人だ。

 そんな少年が、自身が何ももち得ていないことを承知の上で、ヒーローの座へ至ることを望んだ。

 自身の未来を対価に少年は、これまでの世界を作り上げてきた歴史へと手を伸ばしたのだ。そう、未来と過去が、成功者の前で、手を取り合った。そんな奇跡のような瞬間に、彼は居合わせたのだ。




 だからこそ、十分だろうと、成功者は微笑んだのだ。

 彼の思い描いた脚本は破棄され、彼の手元には何も残らなかった。

 代わりに、彼の脚本の上で踊るしかなかった、そんな道化ともいえる物語の演じ手たちが、好き勝手に夢を語り始めた。


 かれらの、夢を。

 脚本に描かれなかった、脚本家すら思い描けない、そんな、夢のような夢の話を、道化たちが、思い描き始めたのだ。




















 だからこそ、彼は信じた。

 おそらく、この物語の結末は、きっとーーーーー


 

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