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無限想歌  作者: blue birds
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keyA-2,D-2共通:無限想歌4:true end:そんざい確率%:雨と傘:寿小羽&蒼の魔法使い

 相克する因果を超えた先にまっていたのは?

keyA-2,D-2共通:無限想歌4:true end:降り注ぐ雨と、差し出された傘:寿小羽&蒼の魔法使い




 気づいたら私は、見知らぬ場所に放り出されていた。

 雨が降り続く、人気のない空き地に私はーーー独り




「・・・・・・」




 

 空から降り注ぐ雨は私を無視して、地面をこ気味よく叩いている。

 吹き付ける荒っぽい風は私をすり抜け、草木を揺らす。

 ・・・・・・世界が、私という存在を無視していた。





「そうだよね。っそう、だよね・・・・・・」






 私は、外様の存在だった。

 この世界にとって私は、外側の存在。なんの手違いからそうなったのか、私にはわからないけれど。

 でも、私は此処にいる。

 ここにいて、そして、ここにいてはいけない存在。

 ーーー私はこの世界に身を寄せてはいるけれど、でも、そんなことは、この世界には関係ない。

 この世界の全てに関係のない人間が、ここにいる。

 この世界の全てにとって無縁の人間が、ただ独り、そこにいる。




「なんで、わたしは・・・・・・・にぃさまーーーねぇ、さま・・・・・・・」





 私は、いったい何なんだろう?

 何のために、ここに居るのだろうか?そんな行き場のない問が私のなかで荒れ狂い、そして、それに、冷静な自分が冷めた目で答える。




「これは、罰なのかな?」




 私は時を超えて、世界を改竄しようとした。

 改ざんして、ねぇ様の存在を否定しようとした。

 それは結局、成就することは無かったのだけれど、でも、結果として。




「わたしが、殺した。

民を。

家臣を。

家族を。みんなを、私が殺して、ころさせた・・・・・・」



 でも、それは、私のせいなの?とも、想う。

 だって、私がこんな風になったのは、「あの時」があったからだ。「あの時のこと」の理不尽さが受け入れられなくて、私は、こんなふうになった。それなのに、こんなふうになった私の行き着く先が、「あの時」だなんて・・・・・・





「それでも、関係ないよね。

だって、私は、自ら選んで、今もこうして此処にいる。

あのとき消し去られるはずだった罪を、わざわざ抱え込んで、こうして、また、ひとりぼっちに!!!!」






 私は、憎んだ。

 私は500年という時を、ひたすらに憎むことに費やした。

 憎んで憎んで憎んで、そして、時を越えて、世界を壊そうとして。




 その果てに、私の根源が結局のところお門違いでしかなかったと知った。

 それは、因果応報だった。当然の、報いだった。

 それでも、辛かった。苦しかった。受け入れられなかった。




 だから、「なかったことにしよう」と、

 わたしの、この、「間違った気持ち」を、無かったことにしようと、そう、言ってもらえたときは、涙が出るほど嬉しかったのに!





 それでも、私は!





「選んだんだ!

この想いを・・・・・・この、ねぇさまを憎む想いを、私の中に、残すことを!!!」





 大好きだったから、憎んだ。

 裏切られたからじゃない。大好きだったから、憎んだ。

 憎しみを捨てることが罪を捨て去ることにつながるって、感じていた。あのとき、この想いを捨て去ることが出来ていたなら、わたしはきっと、今、ここにこんな風に一人ぼっちでは居なかった。

 でも、この想いを捨てることは、きっと同じように、ねぇさまを大好きだという気持ちをも捨てることに繋がると、そう、想ったから!



 

 ・・・・・・あの、病室で。

 「あの時」から帰還した、あの、生還の時に。私に向けられたのは敵意と、殺意。

 ・・・・・・自分がしでかした事の大きさを考えれば、当然の報いだと思う。




 あの場にいた皆が、私の死を願っていた。

 唯一、魔法使いさんだけが私のことを庇ってくれていたけれど、でも、私は「それが間違い」だってわかってる。




「なんでよ!!!わかってるはずなのに!!!ねぇさまは悪くないって!

悪いのは私だって、わかってるはずなのに!!!」







 頭では、理解していた。

 「あの時」のことは、誰のせいでもないと。ひょっとすると、私のせいなのかもしれないとも。

 受け入れがたいことだけれど、「あの時」の根源は、私なのかもしれないとも。でも、少なくとも、ねぇ様のせいじゃないとは、はっきりと、理解していた。



 それなのに、にくい。

 憎い。憎い。憎い。こんなにも、憎い!!!!なのに!!!!




「こんなに憎いのに、大好きだなんて。

わたし、壊れてる・・・・・・・だから、これで正解なんだ」





 ねぇ様が大好きな私”だけ”だったら、こんなことにはならなかった。

 でも、現実はこんなふうで、それを選んだのは自分だ。



 ・・・・・・私は、あの二人のそばにはいられない。

 未だに私の中には、ねぇさまへの憎悪が渦巻いている。そして、この力を、私は抑えるすべを知らない。



 だからーーーー





「大丈夫だって、信じてる。あなたたちなら、大丈夫だって」















 ・・・・・・ふと、声が空から降ってきた。気がつくと、私の下に広がる地面を打っていた雨も止んでいる。

 でも、雨音は消えていない。シトシトしとと、降り続いている。






「え?」








 視線を上げて、私は絶句した。

 だって、そこには一人の女性が、私に傘をさし出していたのだから。


 私が濡れないように、真っ赤で綺麗な傘を、私の方に・・・・・?



 あれ?この人は?わたしのーーーことが、見えてるの?







「もう一度言うね。あなたたちなら、絶対に大丈夫。だって、わたしはそんな世界があることを、知っているんだもの」







 ニコリと、女性は微笑んでいた。

 真っ黒な長髪を風になびかせ、真っ赤な傘を、私に差し出しながら。



 自分が濡れることも構わず、その、女性はーーー






「この世界は、存在が許されない世界。厳密なる理が歪曲されなければ生み出されない、そんな、歪な世界なの。だから、この世界の存在確率は0%。でも、それは存在できないってことじゃない。存在はするけれども、認められない世界群ってこと。

 そして、それこそがこの世界で、そしてそして、あなたたちが行き着いた、物語の結末なの」







 そう語った女性はくるりとその場で一回転すると、傘を空に投げ上げた。

 放たれた傘はくるくると回りながら地面に落下し、あわや衝突というところで、忽然と掻き消える。






「シロも言ってたでしょう?正しい選択ではなく、後悔しない選択をしなさいって。あなたは、後悔するの?あなたの、「あの時」の選択を?」







 手をぽんぽんと二回たたき、女性は私に手のひらを向けた。

 そこには、シロさんがいつか見せてくれた奇跡の石が、握られている。


 あの、空間を渡るために必要という、賢者の石が女性の手には握られており、そして。






「もう少しだけ、まって上げて。あと、すこしだけ。500年もまったんだもの。あと数日くらい、一瞬のはずだから。ね?」









 そして、賢者の石の輝きが最高潮に達した時、女性は私の前から消え失せていた。






「・・・・・・」





 わたしは、言葉もなく呆然とその場を見つめることしかできない。

 ただただ彼女が消えた場所を見つめ、そしてーーーー











 ・・・・・・気がつくと、雨が止んでいることに気づくまで私は、その場に立ち尽くしていた。

早めにアップしますね。次の話。

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