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無限想歌  作者: blue birds
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keyA-2,D-2共通:無限想歌2:ture end:翁と、猫

諸事情により、true endだけを先に進めます。

good endは、また後程に。

keyA-2,D-2共通:無限想歌2:ture end:翁と、猫:奏上の翁



 光をまとった旅人は自身の身の程を超えて、翁へと敵意を向けた。

 彼にすれば、それは、ほんの刹那の瞬間だったろう。なれども、精霊となった彼にとって、それは永遠のキザハシにも感じられた。




 西の守護をまとった光の一撃が、翁の顔面を襲う。

 しかし、その一撃は彼自身には露ほども痛みをもたらすことなく、世界に溶けて消え去った。

 ただ、その際に置き土産として、鈍い音と共に淡い光を世界に撒き散らす。



「は!」



 一泊の気合をはさんで、西の守護者は―――いや、幼子の守護者は、時の大精霊から念を引き離した。

 バックステップで飛び退き、昏倒している東と息吹の元に着地する。

 そして、ゆっくりと二人のそばに、「念」を横たわらせた。




 彼は、紛いなりにも神へと楯をついたのだ。

 それは、一線を超える許されざる所業。

 ・・・・・・・ただの一線にて、境界を超える、愚者の選択。

 それは、魂ある者たちが胸に抱き続けた、いつかのおとぎ話と同じものだった。



「・・・・・・シロ! 急げ! 引き上げろ!」




 目と鼻の先で、上空へ展開される異界の門へと、旅人は呼びかける。

 何もかもが不確かな世界にて、それは至極真っ当な判断だった。

 ましてや、さきほどの一撃が翁に無意味だったとなれば、なおさらだ。

 ・・・・・・まさに旅人は、正しい決断を下したのだ。

 そう、「3人」を連れ帰るという選択を、除いては。





「心配せずとも、門は数刻後にそなたらを元の世界へと導く。

それまで、わしの道楽に付き合ってはくださらぬか・・・・・・・・守護者殿」





 翁の声に、旅人は―――マイクは、冷徹な瞳を向ける。

 まあ、今の彼はあくまでも光の輪郭だけで構成された存在であり、正確には彼は瞳を持っていないわけだが。






「そのまま、そこを動くな。でなければ、次は殺す気でいくぞ」







 敵意を殺意に変え、マイクは翁に言い放った。

 不可思議なことに、それがなんの意味もないことを知りつつも、彼はその言葉を紡ぐことを選択したのだ。




「よい、よい、それで。そなたらに、危害は加えぬよ。

なにせワシには「無限」の「時」があるでの。

なにも、「この時」にこだわる必要も無いないのさ・・・・・・・・」






 呵呵と笑う、翁。

 彼はゆっくりとした動作で懐からキセルを取り出すと、一服をつけ出した。

 そして、含んだ煙を吐くついでのように、

 それこそ、何でもないことのように、「その子らを見守ってくださらぬか」と、マイクに問いかけた。



 これに、マイクはぴくりとも反応しない。

 ただし、彼の意識は、常に翁の一動と、上空の門へと注がれている。

 そんな彼の様子を濁った眼で見届け、翁は言葉を続けた。

 もちろん、それが独白になるであろうことを、知った上で。




「ただの一時、彼らに時間を与えてくださるだけで良い。

ソナタの抱える、それら三つの魂は、本来「共に在る」ことを許されぬ身。されども、身の程を超えて、「そう在ること」を望んだ結果が―――この、時なのじゃ。

さきほどのソナタと、同じようにの?

・・・・・・そのことを承知の上で、ソナタはそれらを連れ帰るのであろう?

すくなくとも、得体の知れぬワシから、その「念」を引き離すために」





 そして、「然るべき時には、処理するつもりであろうな」とも、翁は続けた。

 さらには、「それで良い」とも。





「あらゆる選択は優先順位の問題に始まり、結局はそこに帰結する。

そして、それ故に全ての選択は「正解」を得られぬ定めに縛られておる。

ただ、それは転じて、不幸中の幸いと呼べるものじゃ。なにせ、ソナタらは「間違い」を選ぶことができぬのだからの?」





 マイクは、上空のゲートがドクンと波打ったことを確認した。活性化されている証拠だ。その「とき」は、近い。

 彼は、転移に備えて、パスを他の「3人」に伸ばした。

 もちろんその際も、翁から注意を外すようなことはしない。




「此度のソナタの選択は、外道のそれじゃ。その「三人」を共に連れ帰る等―――道理を外れたものが歩む、蛇の道でしかない。

どれほど最もらしい言い訳をしたところで、「今すぐに念を消し去る」以上の正当など、そこに在りはしないのじゃから。

ただ・・・・・・ワシはそのことが嬉しゅうてしょうがないのじゃ。

「このとき」は限りなく間違いに近いものであれど、しかし、間違いではない。ただそれだけのことが、ワシらのようなものには救いなのじゃよ」






 マイクは、三人の魂へと手を伸ばす。

 そして、決して離しはすまいと、彼らの魂の核へと、パスを繋いだ。

 ―――それはマイクのさじ加減一つで、三人の魂が消滅することを意味すると同時に、どのような時空嵐に襲われても、彼らを元の世界へ送り届けることができることを―――意味していた。





「幾重にも編まれた因果の都合で、その子らは大変辛い思いをした。

だからとは言わんが、ほんの少しだけ、待ってやってはくれぬか?あと、ほんの少しだけ。あと、ほんのわずかばかりの時間があれば、その子らは・・・・・・」





 ぐりんと、視界が歪む―――それは翁のものではなく、マイクのそれだ。

 頭の中を掻き回されるような強烈な違和感が、彼ら転移者を襲う。

 そして、キン!という甲高い音が世界に響き渡り、彼らは―――4人は、翁の前から姿を消した。

もうすぐで、最終回です。

あとすこしで、めでたしめでたしーーーです?

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